色彩
■ 21.いつも通り

「とりあえず、お二人が帰ってくるのを待ちませんこと?二人の様子を見てから判断してもいいと思いますわ。」
梨花はそう言って皆の顔を見まわす。


「確かにそうだな。」
「ここで話していても埒があきませんものね。」
「そうね。それから青藍様に直接聞けばいいのよ。」
「そうそう。青藍様が話さなかったら、深冬様に聞けばいいのよ。それで口を割らなかったら深冬様を見ればいいんだわ。」
実花は企むように言う。


「そうか。その手があったな。風呂に一緒に入ればいいのだ。」
「なるほど。確かにそうですわ。」
「ふふ。楽しみね。」


「・・・そなたら、こそこそと、一体何の話をしておるのだ?」
突然そんな声が聞こえてきて、一同は振り向く。
そこには安曇の姿があった。


「あ、安曇。帰ったのではなかったのか?」
咲夜は気まずげに聞く。
「漣家に顔を出してきただけだ。起きたら深冬は青藍と出かけたというからな。」
安曇は詰まらなさそうに言う。


「あら、仕方ありませんわ。深冬は昨日から兄様の妻になったのですから。」
「この私がせっかくこちらに居るというのに。・・・白哉はまだ起きてこないのか?」
「たぶん、拗ねているのだろう。私が白哉の二度寝に巻き込まれそうになったところを逃げ出してきたから。」
「白哉も相変わらずだな。」
安曇は苦笑する。


「・・・私、昨日から疑問に思っていたのですが。」
「えぇ。私も。」
安曇を見ていた梨花と実花が口を開く。


「私か?」
そんな二人に安曇は首を傾げる。
「「えぇ。」」


「私が、どうしたのだ?」
「「安曇様は、一体何者なのです?」」
二人に問われて、安曇は苦笑する。


「雪乃。青藍はこの二人には話していないのか?」
「えぇ。何も話しておりませんの。まぁ、仕方ありませんけど。」
「そうか。では、一つだけ教えよう。・・・私は、深冬の父親だ。」
安曇はそう言って微笑む。


「それは、血の繋がった・・・?」
「そうだ。」
安曇が頷くと梨花は目を丸くする。
その隣で、実花は納得したように頷いた。


「・・・そうでしたか。だから、昨日、深冬様の隣を歩いていらっしゃったのですね。」
「あぁ。本来ならば、私は深冬の隣を歩くことは許されぬのだが、青藍が無理を通してくれたのだ。咲夜、青藍には助けられてばかりだな・・・。」


「ふふ。お互い様だ。安曇は青藍の相談役だからな。青藍も安曇には助けられている。その上、君の大切な娘を貰うのだ。そのくらい、当然のことだ。」
咲夜はそう言って微笑む。


「本当に、そなたらは良い子だな。咲夜も白哉も青藍も橙晴も茶羅もルキアも。それから雪乃に、浮竹に京楽に烈も。皆、良い子だ。」
安曇は微笑む咲夜の頭を撫でながら言う。
「安曇に褒められるとは、嬉しいな。皆、私の自慢なのだ。」


「・・・ねぇ、雪乃様。」
それを見た梨花は小さく言う。
「何かしら?」
「安曇様は、おいくつなの?」
「咲夜様だけでなく、浮竹様や京楽様、卯ノ花様まで良い子だなどと・・・。」
梨花と実花は不思議そうに言う。


実際、容姿だけで言えば、安曇は白哉とそう変わらないくらいなのだ。
当然、浮竹や京楽などよりも若く見える。
首を傾げる二人に、雪乃は苦笑する。


「それは、その内。青藍が貴方たちに話す時が来たら、その疑問は解決するわ。それまで待つことね。」
「ふぅん?雪乃様はご存じなのね?」
「そうよ。きっと驚くわ。」


『・・・あれ?皆さんお揃いで何をしているのです?』
「梨花様と実花様まで・・・。」
そんな話をしていると、青藍と深冬が帰ってきたらしい。
女性陣はすぐに二人を観察する。


手を繋いでいるのはいつものこと。
距離感が近いのはいつものこと。
周りに花が咲いたような雰囲気なのもいつものこと。
一見したところ、いつもと変わらない。


『な、なんですか・・・?』
じいっと見つめられて、青藍は気圧されたように言う。
「・・・いや、なんでもない。」
「青藍兄様って、何処までも青藍兄様よね。」
「ほんと、隠し事が上手すぎるのよ。」
「これでは全くわからないわ。」


『一体、何の話です?』
彼女たちの様子に青藍は首を傾げる。


「いつも通り仲がよろしいようで。」
「そうそう。いつも通り深冬が大好きなのよね。」
「そうだな。青藍は深冬が大好きなんだよな。」
「そうですわ。呆れるほどに深冬様一筋なんだから。」
「見ているこっちが恥ずかしいわよ。」
言いながら彼女たちは詰まらなさそうで、呆れた様子である。


『えっと・・・なんか僕、責められている・・・?』
そんな様子に青藍はただ首を傾げるばかりだ。
その隣で深冬も首を傾げている。

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