色彩
■ 13.賑やかな宴

「はいはい!二人の馴初めは!?」
乱菊が楽しげに手を上げて質問する。


『馴初めですか?初めて会ったのは、深冬が六回生の時です。それから、僕は次期当主になったので、貴族の会合などで深冬と顔を合わせるようになりましたねぇ。・・・そうか。橙晴に当主になれと言われた日に、僕と深冬は初めて会ったんだ。』
青藍は今気づいたというように言った。


「告白はどちらから?」
今度は七緒である。
『一応、僕から・・・だよね?』
「そうだな。」


「ぶっちゃけ、青藍っていつから深冬のこと好きだったわけ?」
『あはは。それ聞いちゃいますか・・・。』
乱菊の質問に青藍は苦笑する。
事実を知る面々もまた苦笑した。


『今思えば、僕の一目惚れですね。自覚したのはもう少し後ですが。』
「無自覚に色々とやり過ぎなんだよ、お前は。」
「そうそう。深冬御嬢さんは、婚約する前から朽木家に住んでいたからな。」
睦月と師走は呆れたように言う。


『あはは。僕も自覚してから気付いたよ。本当は、深冬をわざわざ朽木家で預かる必要はなかったんだよね。漣家に任せれば、それで済んだのに。』
「あら、天音様はそのつもりだったのよ?」
「そうそう。深冬について僕らに聞いてきたものね。」
玲奈と蓮は思い出すように言う。


『無自覚って怖いよね。・・・まぁ、深冬を頼むと言ってきたのは加賀美君だからね。加賀美君が、この僕にお願いをするなんて、貴重だったなぁ。』
「五月蝿いぞ。余計なことは言うな。」
豪紀は青藍を睨む。


『事実じゃないか。君は最初、僕のことすごく警戒していたのにねぇ。』
「あはは。確かにそうかも。」
「そうか。あれは警戒していたのか。」
「言われてみれば、そうかもね。」
キリト、侑李、京が、青藍の言葉に頷く。


「それが今じゃ、仲良しだものね。人生何が起こるか解らないのね。一体、貴方たち二人の間に、どれほどの秘密があるのかしら。」
雪乃はそういって二人を見つめる。


「別に秘密なんかないぞ。」
『ふふ。そうだねぇ。ちょっと、互いに格好悪いところを知っているだけさ。』
「お前、本当はものすごく格好悪いもんな。」
『五月蝿いなぁ。加賀美君だってそれなりに格好悪いくせに。知ってる、実花姫?加賀美君って、実は怖がりなんだよ?』


「あら、そうなの?」
「誰が怖がりだ。それはお前の方だろう。特に深冬に関することになると酷い。酷すぎて俺はお前が怖いわ。」
『うわ、酷い。加賀美君、最近僕に対して容赦ないよね。』
「容赦するだけ無駄だからな。」


「あはは。本当に仲良しだよねぇ。はい、次は僕から質問!」
京楽が楽しげに手を上げる。
『はい、どうぞ。』


「深冬ちゃんの青藍の第一印象は?」
「第一印象・・・。青藍は、最初から、変な奴でした。私は必要ないと言ったのに、勝手に家まで送ると言い出して、私を引きずって行きましたから。」


「「「「「あはは!!」」」」」
多くの者は声を上げて笑ったが、青藍の女性不信を知る者は意外そうな顔をした。
「貴方、最初から人攫いじゃないの。」
雪乃はあきれ顔だ。
『そんなことないよ!ちゃんと、家に送り届けたもの。』


「でも、青藍は、最初から青藍でした。貴族らしく飾ることもなく、無理に笑うこともなく、真っ直ぐに前を見つめていました。握られた手が温かくて、嬉しかったのを、覚えています。」
深冬はそう言って微笑む。


『その割には、深冬、僕から全力で逃げようとしたよね。』
「それは、初対面の相手に家まで送ってもらうのは、おかしいからだ。それに、突然朽木青藍が加賀美家に来たら皆が驚いてしまうだろう。その上、豪紀兄様と青藍は仲が悪かったのだろう?」


『それは・・・そうだったっけ?』
青藍はそう言って豪紀を見る。
「俺はずっとお前が嫌いだと言っている。」
『もうそれ、僕に対する挨拶に等しいよね。全く、素直じゃないなぁ。』
「その言葉、そっくりそのままお前に返す。」


「ふふ。では、私からも質問致しましょう。」
青藍と豪紀の言い合いに笑って、卯ノ花は静かに言った。
『何ですか、烈先生?』


「婚約を申し込むとき、何といったのですか?」
卯ノ花は楽しげに言う。
「あ、それ、アタシも聞きたい。」
「私もです。」
「あたしもー!ランラン、なんて言ったの?」
女性陣は興味津々といった様子で青藍を見た。


『色々話した上で、普通に、結婚してくださいと、言いましたけど・・・。』
「色々とは?」
卯ノ花はにっこりという。


『そ、れは・・・ですね・・・。色々だよね、深冬。』
「・・・そうだな。色々だ。」
二人は気まずげにそう言う。
確かあの時、余計なことまで言った気がする。
二人は内心でそう呟く。


「だからぁ、その色々の中身!」
『あれですよ、僕の妻になるということがどういうことか、説明したうえで、婚約を申し込んだということです。』

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