色彩
■ 12.絵に描いたような

別室に着いて、青藍は深冬と共に中に入ると、ほっと、一息を吐く。
『・・・これでようやく君を抱きしめられる。』
「わ!?」
白無垢姿の深冬を青藍は遠慮なく抱きしめた。
それに驚きつつも、深冬はその背に手を回す。


『綺麗だよ。』
「ありがとう、青藍。」
『ふふ。深冬。』
青藍は腕を緩めて深冬の顔を見る。
そしてその頬に手を添え、その唇に口付けを落とす。
深冬はそれを静かに受け入れた。


『・・・紅が薄くなってしまった。』
そう言って笑う青藍の唇が色づいている。
それに気が付いて、深冬はなんとなく恥ずかしくなった。


『まぁ、これからお色直しだからね。紅の色が変わってもいいだろう。』
青藍はそう言うと、再び深冬に口付ける。
今度は深く口づけて、ゆっくりとその口内を味わった。
深冬もそれに応えるように青藍にしがみつく。


「ん・・・せい、らん。」
深冬が苦しげに名を呼ぶと、青藍は漸く唇を離した。
『・・・このくらいにしておくよ。続きは後で。ちゃんと紅を塗り直してもらってね。僕も着替えてくる。着替え終わるまでに、その赤い顔、治しておくんだよ?』
青藍は悪戯にそう言って、深冬の頬を突くと、楽しげに部屋から出ていく。


「ばか・・・。青藍のせいではないか・・・。」
深冬はその背に拗ねたように言葉を漏らして、着替えるために女中を呼んだのだった。


それから暫くして。
朽木家の座敷は既に宴会場のようになっている。
女性死神協会をはじめ、多くの死神たちがお祝いに駆け付けた、というより、なだれ込んできたのである。
白哉と咲夜は苦笑しながらも、彼らを座敷に上げたのだった。


一気に賑やかになって、まるで年末年始の死神たちの宴会の様である。
加賀美家の面々は驚きつつも、彼らを快く受け入れた。
それから、一仕事終えた睦月と師走も顔を出す。


皆が面白半分なのか、様々な祝いの品を持ってきていた。
中には媚薬などの類もあるが、これは完全に遊びだろう。
一番多いのは酒類で、彼らは勝手に持ち込んで勝手に呑んでいる。
そこへ、漸く青藍と深冬が姿を現したのだった。


入ってきた二人を見て、あちらこちらからため息が聞こえてくる。
青藍は相変わらず羽織袴を着ているが、先ほどまで着ていた紋付き袴ではなく、羽織の色が青になっていた。
袴の色も羽織の色に合わせて羽織よりも薄い水色となっている。


そして、深冬は色打掛。
こちらもベースは青。
鮮やかな青地に色取り取りの刺繍が施され、様々な花が咲き誇っているのだった。
結い上げた髪には青系でまとめられた豪華な簪が差してある。
二人とも耳飾りは付けたまま。


青藍は深冬の手を引いて席へと向かい、一礼してから席に着く。
寄り添う二人の姿は、絵にかいたような美しさで。
その美しさに、皆が見惚れたのだった。


『ふふ。何やら死神の皆さんが増えておりますが、賑やかでいいですねぇ。お集まりいただきまして、ありがとうございます。・・・皆さん、聞こえています?深冬に見惚れるのは解りますが、彼女は僕の妻ですからね?あげませんよ?』
青藍は悪戯っぽく言う。
そんな青藍に、一同は漸くそれぞれに祝いの言葉をかけ始める。
青藍と深冬はそれに応えて、幸せそうに微笑んだ。


『今日、この良き日を迎えられたこと、皆様に感謝いたします。・・・ここに来るまで、色々なことがありました。皆様にはご心配もご迷惑もおかけいたしましたね。重ねて、お礼申し上げます。』
「大変感謝いたします。」
二人はそう言って深々と頭を下げた。


『しかし、僕らの道はまだ始まったばかりです。夫婦ともども、今後とも、よろしくお願いいたします。・・・と、まぁ、堅苦しい挨拶はこの辺にいたしまして、皆様、どうぞお楽しみくださいませ。』
青藍がそう言うと、待っていたとばかりに、女性死神協会を筆頭に死神の面々は騒ぎ始める。
それを見て、青藍と深冬は顔を合わせて笑った。

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