色彩
■ 11.お色直し

『・・・ふ、ふふ。あはは!』
行列が邸に入って、人目がなくなった頃。
青藍は楽しげに笑いだした。
それにつられて、皆がくすくすと笑い出す。


『ふふ・・・はぁ、楽しかった。皆様、ご協力ありがとうございました。とりあえず、これで今日のお仕事は終了です。何事もなく終了できたこと、感謝いたします。烈先生に、十四郎殿、春水殿は突然巻き込んで申し訳ありませんでした。』


「ふふ。楽しませてもらいましたよ。」
「そうそう。吃驚したけどね。」
「そうだな。こっちまで幸せになった。」
三人はそう言って微笑む。


「雪乃も逃げきれなかったしね。」
「だって、お父様が私を捕まえておくんだもの。」
楽しげな橙晴に雪乃は唇を尖らせる。


『あはは。・・・十五夜様に安曇様も楽しんでいただけましたか?』
「もちろん。青藍、本当におめでとう。」
「あぁ。深冬の隣を歩くことが出来るなど、夢の様であった。」
二人はため息を吐くように言った。


『それはようございました。この耳飾り、本当にありがとうございます。大切に使わせて頂きます。この世に二つとない、お二人からの貴重な贈り物ですからね。』
「へぇ。その耳飾り、お二人からの贈り物だったの。」
「二人ともよく似合う。」


「大したものではない。青藍と深冬が覚悟を示したように、我らも覚悟を示したまで。これからも、よろしく頼む。」
「遊びに来るから、遊んでね。白哉は遊んでくれないんだ。」
「十五夜は来るな。」
「何故僕だけ!?」
「鬱陶しいからに決まっておろう。」


『ふふ。まぁまぁ、父上、あまり十五夜様を苛めないでください。僕でよろしければ、話し相手になりましょう。』
「やったぁ!」
青藍の言葉に十五夜は子どもの様に言う。


「あまりこれを甘やかすなよ、青藍。」
『解っておりますよ、父上。大丈夫です。ちゃんと下心ある親切ですから。』
「あはは。流石青藍。大叔父様すら使う気か。」
『当然です。』
「青藍兄様って、何処までも青藍兄様よね・・・。」
「まぁ、兄様だから仕方ないよ。」
「そうね。この人、かなりアレだもの。」


「それで、青藍。深冬ちゃんがお嫁さんになった感想は?」
京楽が楽しげに聞く。
『そんなの、嬉しいに決まっているじゃないですか。見てくださいよ、この姿。何処から見ても綺麗でかわいい!』


「ははは。それは良かったな。ここに来るまで、俺たちはずっとやきもきしていたから。」
「そうだな。全く、無自覚をくっつけるのは大変だ。」
「あはは。咲ちゃん、楽しんでいたけどね。」


「私だけではないぞ。白哉もルキアも橙晴も茶羅も。睦月や師走、雪乃だって楽しんでいた。」
「ふふ。そうですね。悩む青藍を見るのは中々楽しかったです。」
『ルキア姉さま・・・。』
そう言ったルキアに青藍は苦笑する。


「まぁ、鬱陶しかったのも事実だけれど。」
「そうね。青藍様、深冬様を捕まえたくせに、そこからうだうだしているんだもの。」
「長かったわぁ。青藍様は本当に男なのか疑ったくらいよ。」
「青藍兄様はへたれだから仕方ないのよ。まぁ、深冬限定だけど。」
雪乃、梨花、実花、茶羅が口々に言う。


「それは誰に似たのだろうな。白哉などあっという間だったのに。」
「え、咲ちゃん、自覚ないの?」
「そのようだな。」
「ははは。漣だから仕方ないだろう。そうか。青藍はそんなところまで漣に似たのか。」


「なに!?私か!?私がへたれだというのか!?」
「その通りだ。そなたは私が生まれてからずっと私を想っているのだろうが。一体、そなたはそれを認めるまでに何百年かけたのだ。」
「な!?それ、は・・・そう、だった、な・・・。」
「あら、そのお話し、大変面白そうにございますね、咲夜様。」
「八重・・・。」


『ふふ。積もるお話は腰を落ち着けてからにいたしましょう。皆様の席のご用意がございます。もちろん、烈先生方の分も。お時間があるようでしたら、どうぞ、ごゆるりとお楽しみください。』


「では、遠慮なく。」
「僕も。もちろんお酒もあるんでしょ?」
『えぇ。お酒も肴もありますよ。』
青藍は悪戯に言う。
「ははは。じゃあ、俺も遠慮なく。」


『さぁ、橙晴に茶羅。皆様を案内して差し上げなさい。僕と深冬は少し着替えてきます。僕はともかく、深冬は頭が重くて大変でしょうから。少々勿体ないですが、お色直しと行きましょう。皆様、お楽しみに。』
青藍は楽しげにそう言うと深冬の手を引いて別室へと向かっていく。
それを見て、橙晴と茶羅は皆を座敷へ案内したのだった。

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