色彩
■ 4.残念・・・?

「・・・・・・青藍?」
寝た、のか・・・?
深冬はそう思って、何とか体をずらして青藍の下から這い出る。
そして青藍の顔を除くと、そこには顔を赤くしながらもすやすやと安心したように眠っている。


熱が上がって限界が来たらしい。
しかし、その寝顔は穏やかだ。
もう、何なのだ・・・。
深冬は内心で呟く。


その顔は子どもの様で、先ほどの妖艶な表情とはかけ離れている。
あれだけ好き勝手しておいて、ここで寝るのか・・・。
青藍に布団を掛け直しながら、深冬はため息を吐く。
安心したような、残念なような・・・。


・・・ん?
残念?
いや、青藍に触れたいと思う気持ちはずっとある。
青藍の手は温かいし、腕の中も心地いい。
それ以上を望んだことはこれまでなかったけれども。
だが、残念ってなんだ、私・・・。


「・・・・・・!!!!」
その理由に気が付いて、深冬は顔を真っ赤にする。
それ以上を望んでいるのは、青藍だけではなかったのだ・・・。
内心でそう呟いて、深冬は青藍の布団を跳ね上げてその中に潜り込む。
誰にみられているわけでもないが、恥ずかしくて仕方がない。
眠っている青藍の鎖骨あたりに額を当てて、深冬は羞恥心に小さく震える。


「ふわ!?」
そうして落ち着かせようとしていると、青藍の腕が、深冬の背中に回された。
起きているのかと、深冬は青藍の呼吸に耳を澄ませる。


しかし、それは相変わらずゆっくりとしていて、すぐ近くから聞こえてくる心音もいつものようにゆったりとしていた。
それに気が付くと、深冬は安心して、力を抜く。
それから何とか布団を青藍と自分にかけなおして、深呼吸をした。


・・・青藍の匂いだ。
青藍に抱きしめられているうえに、青藍の布団の中に居るのだから当然だが、深冬はそれが何となく嬉しくて、無意識に微笑む。
そして、彼女は微睡みの中に引きずり込まれていったのだった。


一刻ほど後。
ふと、青藍は目を覚ました。
体はまだ怠く熱っぽいが、一応頭痛はなくなっている。
なんだか温かい。
『深冬が居る・・・。』
腕の中に深冬が居ることに気が付いて、彼女の頭に顔を埋める。
そうしていると、色々と思い出してきた。


・・・あれは、駄目だろう、僕。
当然、深冬を襲いかけたことも思い出し、青藍は内心で呟く。
深冬の首筋と鎖骨に噛みついたことも思い出して、思わず跡が残っていないか、確認する。
・・・良かった。
残っていない。


・・・僕も睦月のこと、言えないや。
跡をつけなかっただけ、まだ、理性が残っていたのだろう。
熱が上がって止まることが出来て良かった。
でも、深冬も深冬だよ・・・。
あんな、とろんとした表情で、自分から口づけて来るとか、反則でしょ・・・。


それに嫌がってはいなかった。
待てとか、止まれとか言っていたけれど、嫌だとは一回も言わなかった。
その上、今、僕の腕の中で安心したように眠っている・・・。
あんな僕を見ても君は傍に居てくれるのか。
青藍は小さく笑う。
あと、少しで、この子が、本当に僕のものになるのだ・・・。


「青藍。・・・まだ寝てんのか?入るぞ。」
そんなことを言いながら、睦月が部屋へと入ってくる。
「あ?起きたのか。それなら返事ぐらいしろよ。」
青藍の顔を覗き込んで、睦月はいう。


『睦月・・・。』
「少し顔色が良くなったようだな。まぁ、熱は下がっていないが。目が覚めたなら粥を食え。すぐに持ってくるから。食欲がなくてもちゃんと食べろよ。」
青藍の額に手を当てて、睦月は一通り青藍を診察する。
『ん。』


「それから、薬。まったく、疲れがたまって、眠れていない上に飯も碌に食わないとかお前本当に馬鹿。忙しくてもちゃんと休め。いいな?」
『うん。』
「よし。じゃ、俺は粥を貰ってくる。」
大人しく頷いた青藍の頭を満足そうに一撫でして、睦月は部屋を出ていく。


「ん・・・。ん?」
睦月が出ていってすぐに、深冬が目を覚ます。
『起きた?』
それに気付いた青藍はそう言って深冬を見る。
深冬はそんな青藍をぼうっと見つめて、それから何かに気が付いたように、顔を赤くした。
そしてそのまま動きを止める。


『深冬?』
そんな深冬に青藍は首を傾げる。
「な、なんでもない。」
深冬は言いながら首を横に振った。
『顔が、赤い、よ?』
「そ、それは、青藍だ。」
深冬はどぎまぎとしながら言う。
そして青藍の頬に手を伸ばした。


「・・・まだ、熱がある。」
『うん。深冬の手、きもちいい。』
青藍はその手にすり寄った。
可愛い。
可愛いが、さっきみたいに・・・。
先ほどの青藍を思い出しそうになって、深冬は慌ててそれを頭から追い出す。
そして、逃げるように起き上がった。


「わ、私は、起きる。青藍は、まだ、寝ていろ。」
『ここに居る?』
「あ、あぁ。そばに居る。」
『うん。ありがと。』
青藍はそう言って嬉しそうに微笑んだ。

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