色彩
■ 3.熱を帯びる

『は・・・。』
青藍は熱い息を吐きながら、漸く唇を離す。
深冬は息を乱しながら、恨めしげに青藍を見た。
「!!!」
そしてその表情を見て、息を呑む。


色が深くなり、熱っぽく、甘い瞳がそこにある。
その唇は唾液で艶々としていて、薄く空いた唇から時折チラリと舌が見えた。
ぞくり、と背中を何かが這い上がる。


さっきまで、子どもの様だったのに、なんて顔をしているのだ・・・。
自分の目の前にあるのは、二人きりの時だけにしか見せない、欲望を滲ませた顔である。
この顔を見ると、何も考えられなくなる・・・。
その顔に吸い寄せられるように、今度は深冬から口付けていた。


互いに食むように唇を合わせる。
時折舌を絡ませながら、何度も何度も口付ける。
何時しか青藍は起き上がり、深冬の背中に腕を回していた。


「ん・・・。も、だめ・・・。」
力が抜けた深冬は唇が離れるとそう零す。
『だめ。もっと。』
しかし、青藍はそう言って再び口付ける。


「んん・・・。」
悩ましい声を上げながらも、深冬はただ翻弄されるしかなかった。
そして、気が付くと、青藍の顔が上にある。
いつの間にか、青藍に押し倒されている状態になっていた。


『深冬・・・。』
愛しげに、甘い声で名を呼ばれると、体が痺れたようになる。
「せい、らん・・・。」
名前を呼ぶと、青藍は微笑み、今度は唇以外にも口付け始める。


額。
瞼。
頬。
そして唇。
徐々に顔が降りてきて、首筋に口づけられる。
そして、ちろりと、その場所を舐められた。


ぞくり、と、深冬の体が震える。
それに構わず、青藍の唇はさらに下に降りていく。
袂を軽く開かれ、鎖骨にキスを落とされる。
青藍はそれから鎖骨を甘噛みした。


「ひゃ!?」
深冬がそんな声を上げると今度はそこに舌を這わせる。
その舌がさらに下へと向かって行こうとしているのを感じて、深冬は漸く己の身の危機を理解した。


こ、このまま、食べられるのか・・・?
そう思って深冬は少し冷静になる。
「ちょっ、青藍。ん・・・待って、くれ。それ以上は・・・。」
深冬はそう言って青藍の口を手で塞ぐ。


この先にあることを深冬は知っている。
知識として知っているだけで、経験がある訳ではないが。
そして、妻になる以上、青藍とそうなることも解っている。
そうなる覚悟だって、してある。
本当は、いつ、そうなっても、深冬は受け入れるつもりであった。
どんなに遅くとも、一か月後には、そうなるのだ。


だが、今、この青藍は、正気じゃない。
何せ熱があるのだ。
いや、熱がなくてもこんな一面を見せるが、それでも、たぶん、今の青藍は、普通じゃない。
睦月の言っていた箍が外れるとは、こういう箍なのか・・・?
そうこう考えているうちに、掌に違和感がある。


べろり。
「!!!!」
待たされた青藍は、それが不満だったのか、その掌を舐める。
「や、やめ、やめろ、青藍。」
深冬は思わずその腕を引き、それに伴って青藍の口が解放される。


『やだ。』
青藍はそう言って離れた深冬の手を掴み、飴でも舐めるように舌を這わせる。
手を舐められたことも衝撃的だが、視覚的にも色々と刺激が強い。
ちらちらと見える舌が艶めかしいのだ。


「ちょ、青藍。やめ、ろ。くすぐった、いぞ。」
それを見ないように深冬は青藍から目をそらすのだが、見ないなら見ないで感覚が鋭くなって、舌の動きがそのまま伝わってくる。
『甘い・・・。もっと・・・。ちょうだい・・・。』
「あま!?うわ、離せ。噛むな。こら、青藍!」


舐めるだけでは飽き足らず、青藍は指を甘噛みし始める。
それがくすぐったくて、恥ずかしくて、深冬は真っ赤になりながら、どうにか逃げだそうとする。
しかし、生憎もう片方の手は青藍の手と指を絡ませてがっちりと握られている。
ついでに体重をかけられているために、動かすことすらできないのだ。


『逃げないで、深冬・・・。』
青藍はそう言って再び深冬の首元に唇を寄せる。
「ひゃ。と、止まれ。青藍!!!」
唇を落とされて、深冬の体がびくりと撥ねる。
青藍はそのまま体重をかけてきた。


「うわ、ん、まって、青藍。」
それを押し返そうと何とかもがくのだが、青藍は深冬の首筋に唇を当てながら、ぴったりとくっついた。
『深冬・・・。』
そう呼ぶ青藍の体は熱く、その熱が深冬にまで伝わってくるようだった。


もう、私は駄目かもしれない・・・。
深冬が覚悟を決めようとした時、青藍は崩れるように布団の上に沈み込む。
当然、深冬は青藍の下敷きになった。


「な!?重い、青藍。」
『・・・。』
深冬が苦しげに言うも、青藍からの返事はない。
代わりに耳元から、ゆっくりとした呼吸が聞こえてきた。

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