色彩
■ 51.誤解

『さて、では、何処から話しますかね・・・。まずは八重殿の誤解を解かなければね。確か、前に少しお話したと思いますが、僕は深冬の生まれを知っています。そして、深冬は前加賀美家当主が他の女性との間に作った子どもなどではありません。それは確かです。』
言いながら、青藍は霊妃に呼び掛ける。


(なんじゃ?)
すぐに応えがあった。
本当に繋がるらしい。
安曇様は今、体が空いているでしょうか?


(ふむ・・・。今、空いた。)
僕の所に安曇様を送っていただくことは?
(すぐに送ってやろう。)
ありがとうございます。


『まぁ、それは、見て頂いた方がいいでしょう。』
青藍が言うとほぼ同時に、青藍の隣に空間が開いた。
その中から安曇が出てくる。
青藍以外の面々はそれに目を丸くしているが、安曇はそれ以上に目を丸くしていた。


『安曇様。急にお呼び立てして申し訳ありません。・・・何やら派手な格好をしておいでですねぇ。』
「いや、今さっき、儀式が終わったのだ・・・。何故私はここに居る?私は部屋に戻ろうと、廊下を歩いていたはずだが・・・。」


『少々お力をお借りしました。こんなにすぐに使うことになるとは思いませんでしたが、本当に呼べるのですね。僕も驚いています。』
「・・・なるほど。」
『儀式の後でお疲れでしょうが、少しお話を。』


「まぁ、それは、よいが。・・・おや、加賀美の倅が居る。」
「お久しぶりにございます。」
豪紀はそう言って一礼する。
「うむ。・・・雪乃も居るのか。先日は挨拶も出来ずに済まなかったな。」


「いえ。こちらこそ、バタバタとしてご挨拶も出来ずに申し訳ありませんでした。お久しぶりです、安曇様。・・・そう言う格好をしていると、性別が解りませんわね。その綺麗なお顔ですから仕方ありませんけれど。」


「五月蝿いぞ。・・・それで、深冬は何故泣きそうになって居るのだ?青藍に苛められたのか?それなら私が青藍を苛めてやるが。」
雪乃に拗ねたように言って、安曇は深冬を見た。


「それは違うから青藍を苛めることはしなくていい。」
「そうか?それならばよい。で、倅の隣に居るのは?」
『加賀美八重殿にございます。深冬の養親ですよ。』
言われて安曇は八重を見た。


「そうか。・・・お初にお目にかかる。安曇という。」
「加賀美八重と申します・・・。」
「まぁ、とりあえず、これでその涙を拭くがよい。」
涙が零れるままに安曇を見つめている八重に、安曇は手拭いを差し出す。


「これは、申し訳ありません。お見苦しい姿を・・・。」
八重はそれを遠慮なく受け取って涙を拭った。
「構わぬ。涙を流すことも時には必要なのだから。」


『八重殿、この安曇様が、深冬の本当の父親にございます。』
「父親?では・・・。」
『えぇ。深冬は、決してあなたの夫の子どもなどではありません。』
「・・・では、あれは・・・男性、だったのですね。」
八重は安曇を見て力なく言う。


『八重殿は、安曇様を見たことがおありで?』
それを聞いて青藍は首を傾げる。
「えぇ・・・。あの人が深冬を連れてきた日・・・。私は、街中で遠目にこの方をお見かけしました。ちょうど、このような格好をされていて・・・私は、てっきり、女性だと・・・。それで、邸に戻ると、あの人が深冬を連れていて・・・深冬は私が見かけた方と同じ色彩をしていて・・・。だから、私は・・・。」


『・・・なるほど。そう言うことでしたか。まずそこから誤解があったのですね。』
青藍は苦笑する。
「・・・私は、そんなに女に見えるか?いや、確かにこの衣装は女物ではあるのだが。」
安曇は落ち込んだように言う。


「話さなければ、間違える方もいることでしょうね。髪も結い上げられておりますし。安曇様は身長も目立つほど高くはありませんものね。人並みではありますけれど。」
雪乃もまた苦笑する。


「私が低いのではない。青藍や白哉が高いのだ。浮竹も京楽も十五夜の爺もな。最近橙晴にも抜かれた・・・。」
『あはは。まぁ、人並みよりは大きいですねぇ。』
拗ねたように言う安曇に青藍は笑う。


「これでも咲夜よりは高いのに・・・。それにしても・・・そうか。あの日、私は確かにこのような衣装を着ていた。美央が虚に襲われたと聞いて、儀式後すぐに流魂街に降りたのだ。それから、そのまま深冬を預かってくれる者を探していた・・・。」
思い出すように安曇は言った。


『では、八重殿が見たのは安曇様でしょうね。これだけ目立つのですから、見間違えることなどないでしょう。』
「そうね。それに、この髪だもの。こんなに髪が長いのだから女性と間違われてもおかしくはないわよね。」


「髪が長いのは儀式のためだ。私だって好きで伸ばしているわけではない。儀式というのは見た目が大事なのだ・・・。」
安曇はそう言って唇を尖らす。
『ふふ。僕はその髪好きですけどね。太陽の光をそのまま形にしたような、美しい髪です。』


「そなたに褒められてもなぁ・・・。」
安曇は複雑そうな顔をする。
『もちろん、深冬の髪も好きですよ。』
「それは私も同意する。」
安曇はそう言って深冬の頭を撫でる。
「私も、父様の髪は綺麗だと思う。」
「ふふ。そうか。美央もこの髪はお気に入りだったのだぞ。」

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