色彩
■ 48.アレな奴

「白哉様が近くに来ると、飛んで行って白哉様の羽織を掴んでくっついて回っていたから、試しに羽織を脱いで姿を消したら「父上が羽織になっちゃった!!どうやったら元に戻るの?」と泣きながらルキアさんに報告に来たとか。その後咲夜様が教えた適当な呪文を信じて白哉様が戻るまで羽織の前でずっと唱えていたらしいな。あとは・・・。」


『いや、深冬、もういいです。解りました。だからもう話すのは止めて・・・。』
「そうか?」
『うん・・・。君が僕の話を相当聞かされていることがよく解った。』


「聞けば聞くほど青藍は阿呆だということしか見えてこない。」
「そうみたいね。」
深冬と雪乃は呆れたように言う。
『別にいいよ。どうせ僕は阿呆です。』
青藍はそう言って唇を尖らせた。


「・・・ふ、ふふ。あはは!!!」
するとそこまでポカンと青藍たちの様子を見ていた八重が突然笑い出した。
一同はそれに目を丸くする。
『八重殿・・・?』


「・・・ふふふ。はぁ、おかしい。」
涙目になりながら八重は笑う。
「ふふ。青藍様ったら、それが本当のお姿なのですね。この間とは別人ですわ。雪乃も深冬も、それから豪紀も。青藍様の前では色々な表情を見せてくれる・・・。豪紀などそのような姿を見るのは何年ぶりやら・・・。」
目もとの涙を指先で拭いながら、八重は穏やかに言った。


「・・・母様、余計なことは言わないでください。」
「あら、本当のことじゃないの。貴方はいつも肩に力が入っているのに、今は、こんなに力を抜いている。雪乃だって、私の前であんな姿を見せたことはなくてよ。」


「八重様・・・。大変お見苦しい姿をお見せいたしました・・・。」
八重に笑われて雪乃は恥ずかしそうに言う。
「ふふ。いいのよ。・・・そう。雪乃は、そう言う子だったのね・・・。気が強いのは解っていたけれど、まさか、青藍様にげんこつを落とすとは・・・。」
八重は再びおかしそうに体を震わせる。


「それは・・・青藍のせいで八重様に笑われたじゃない。」
雪乃は拗ねたように言う。
『えぇ?僕のせいじゃないよ、雪乃が僕にげんこつするからだよ。』
「そうされる原因を作ったのは青藍だわ。大体、何度口で言っても理解しないのが悪いのよ。」


『だからって殴らなくてもいいじゃないか。・・・そういうことすると、僕は橙晴にゴーサインを出しちゃうんだから。』
「な!?」
青藍の言葉に雪乃は固まる。


『僕が待てを解けば、すぐにでも食べられちゃうわけだけれど。あーあ。雪乃、可哀そうに。』
「い、いや、それは、その・・・。」


『僕はやられっぱなしで居るような性分じゃないんだよ。あとで、橙晴をけしかけておこうっと。』
青藍は楽しげに言う。


「青藍様、やっぱり意地が悪いのよね。」
「一筋縄ではいかないのよね。」
「深冬、本当に彼奴でいいのか?」
「・・・たまに考え直したくなりますが。」
「お前、凄い奴だな・・・。」


「・・・なによ。深冬相手にはへたれの癖に。」
『いいんだよ、僕は。別に橙晴のように飢えてないもん。』
「嘘おっしゃい。貴方が何を思っているか、深冬に話してあげてもいいのよ?」


『それは、駄目だけど。そんなことをしたら、本当に橙晴けしかけるから。ていうか、僕が勝手に君たちを婚約させちゃうよ?』
「そんなことをすれば、深冬に話すわよ?」
二人はそう言ってにらみ合う。


「・・・お前ら、不毛な争いは止めろ。どっちもどっちだ。」
「そうみたいですわ。どうやら雪乃様も阿呆なようね。」
「あら、阿呆でなければ青藍様の友人何てやっていられませんわ。」


「・・・確かにそうだな。雪乃様も早く諦めればいいのに。」
「深冬様、悟っているわよねぇ。」
「青藍だけじゃなくて、橙晴もアレな奴なのだ・・・。」
深冬は苦笑する。

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