色彩
■ 47.諦めの悪い男

「あら、事実じゃないと言えまして?」
「青藍様ったら、深冬様のためなら何でもするもの。」
「俺なんか脅されたからな。家を潰してでも深冬を攫うと。」
「あらまぁ、えげつない。」


『そんなことも言ったかもしれないけれど、本気でそうするつもりはないよ?』
「嘘を吐くな。深冬、気をつけろよ。この男、危ないから。」
「はい。解っています。青藍は取扱注意の危険物ですから。」
「流石深冬様。青藍様のことをよく解っているわ。」


『実花姫は人のこと言えないでしょう。慶一殿と茶羅と共謀して僕を騙すとか信じられない。』
「いいじゃない。お蔭で蓮様が周防家の当主になるなどと言ったふざけたことにならなかたのだから。」


『いや、そんなことをしなくても僕がそれを止めたよ。・・・加賀美君、本当に実花姫でいいの?』
青藍はそう言って豪紀を見る。
「俺に選択肢があるとは思えない。」


『可哀そうに。いや、僕にも被害が来るのか。義理の兄の妻になるのだから。え・・・。じゃあ、実花姫は僕の義理の姉になるの・・・?えぇ・・・。』
「失礼ね。別に深冬様を取り上げたりしないわよ。ま、青藍様の働きしだいですけど。」
『うわぁ・・・。僕、それ本気で加賀美家を潰さなきゃならないかも・・・。』


「やめろ、馬鹿。」
「そうだぞ、青藍。そんなことをすれば私は家出する。」
深冬はしれっという。
『えぇ!?それは駄目だ。じゃあ、他の手を考えよう。』
そう言って青藍は考える。


『・・あ!解った!実花姫を十五夜様に攫ってもらおう。』
「嫌よ。あの方、見た目はいいけど糞爺なんだから。」
『糞爺でも、とっても偉いんだよ?僕が呼んだらすぐ来るよ?今すぐ呼ぼうか?』
「偉いのは認めるけど、面倒くさいから遠慮するわ。」


『えぇ・・・。じゃあ、他の手か・・・。』
「お前、本当に馬鹿だろ・・・。」
「青藍、諦めが悪いぞ。」
「青藍様って、実は阿呆よね・・・。」


『否定はしない!』
「いや、威張るなよ。」
『いいよもう、否定してもみんなが馬鹿とか阿呆とか言うんだ。雪乃なんか僕にげんこつするんだよ!?すっごく痛いんだからね!?』


「「「それは青藍(様)のせい。」」」
深冬、梨花、実花にそう言われて、青藍は落ち込む。
「朝比奈も大概だよな・・・。」
『別にいいし。雪乃ってばすぐに手を上げるんだから・・・。』
「お前、そんなことを言っていると、朝比奈が出てくるぞ。」


『え、来ているの?』
「秋良殿とさっき来ていた。」
『だ!?それは駄目かもしれない・・・。』


「・・・こんなところまで来て私の陰口かしら、青藍?」
『!?・・・やぁ、雪乃姫。ご機嫌いかが?』
「そうね。悪くはないわ。これから貴方を殴ることが出来るのだから。」
雪乃は言いながら一直線に青藍の元へ向かう。


『な!?いや、待って、雪乃、ちょっと、落ち着こうよ。・・・いや、何で皆して僕のことを押さえているのかな?』
逃げようと後ろに下がる青藍を、深冬、梨花、実花の三人が取り押さえる。
豪紀は同情するように青藍を見つめるだけだ。


『雪乃、もう少し、平和的な解決方法はないのかな・・・。』
「ある訳ないじゃない。何度言っても解らないのだから。」
雪乃はそう言って拳を振り上げる。
そして躊躇いなく振り下ろした。


ごつん。
そんな重い音がして、青藍は頭を押さえる。
『・・・痛い。雪乃、これ、たんこぶ出来ちゃうよ。』
涙目になりながら、青藍は雪乃を見上げる。
「そのくらい自分で治せない貴方じゃないでしょ。治せないなら治せないで睦月さんに泣きつけばいいじゃない。・・・昔のように。」


『・・・ん?』
付け加えられた言葉に、青藍は首を傾げる。
そして、何かに気付いたように、雪乃を見た。


『雪乃、一体いつから聞いていたの!?』
「さぁて。深冬に叱られているあたりからかしら。とっても面白いことを聞かせてもらったわ。ねぇ、加賀美君?」
「そうだな。さっきの深冬の様子からすると、まだまだ色々とあるらしい。」


『だ、駄目だよ!!誰かにいったりしたら、僕、立ち直れない。』
「へぇ。その話、興味があるわ。」
「梨花姉さま、なにやら面白そうね。」
梨花と実花がそう言って悪い笑みを浮かべる。


『深冬!あれ以上言ったら駄目だから!っていうか、ルキア姉さまも何を教えているんだ・・・。深冬に余計なことを吹き込んでいるのは母上だけじゃなかったなんて・・・。』
青藍は頭を抱える。


「浮竹隊長からも、青藍の幼少期の話は幾らでも聞くことが出来るぞ。よく雨乾堂の周りの池に落っこちていたらしいな。」
『にゃ!?』
「それから朽木家の池にもよく落ちたとか。・・・水難の相でも出ているのではないか?」
「あら、昔から馬鹿だったのね。」

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