色彩
■ 上司 前編

「玲奈さーん。お昼にしませんか?」
そんな声と共にひょこりと窓から顔を出すのは、三番隊第三席の南雲蓮。
呼ばれた玲奈は、その言葉に時計を見上げた。


「・・・もうお昼だったのね。」
「うん。吉良副隊長が稲荷寿司をくれてね。玲奈さんもどうかなと思って来てみたんだ。今日は隊舎に居るって聞いていたから。今日はお弁当?」
蓮に問われて、玲奈はあることに気付く。


「あ・・・。ごめんなさい、私、今日、蓮の所に行ってないわ・・・。朝行こうと思っていたのに・・・。お弁当はあるのよ?」
「あはは。いいよ。いつも玲奈さんが来てくれているから、たまには僕が行こうかなとは思っていたんだ。」


「明日はちゃんと持っていくわ。」
「僕が取りに来てもいいんだよ?」
「駄目。私が行くことに意味があるの。・・・さ、行きましょ。」
玲奈はそう言ってひらりと窓の外に降りる。
「うん・・・。」
蓮は玲奈の言葉に首を傾げながらも、彼女に付いて行った。


「・・・・・・あいつら、一体どういう関係やねん。」
書類に目を通しながら昼食を摂っていた豪紀は、その声に恐る恐る目の前の書類を退けた。
執務室を出て行った二人を真子は怪しげな目をしながら見送っている。
豪紀の机の前にしゃがみこんで、詰まらなさそうに頬杖をつきながら。


・・・いつのまに。
豪紀は内心で驚きながらも、自らの隊長の視線を辿って、その言葉が蓮と玲奈に向けられたものであることを察した。


「朽木青藍曰く、あの二人は結婚すると思うよ、だそうですが。」
「は・・・?結婚・・・?」
ゆらりと見開かれた目には、驚きが映っている。
この人の瞳に感情が映るなんて、珍しい。
内心で呟きながら、頷きを返した。


「えぇ。まぁでも、六席ならば、結婚しても死神を続けてくれるのでは?」
「せやな・・・って、そんな心配してんとちゃうわ!確かに彼奴に抜けられたら困るけど!なんやねん、結婚て!何でいい女は皆嫁に行くねん!こんなことやったら、サクに手ぇ出しとくんやった・・・。」
悔しげに窓の外を睨みつける真子に、豪紀は呆れた視線を向ける。


「・・・そんなことをしたら、朽木家に抹殺されると思いますが。」
「朽木家が何ぼのもんや!愛は何者も邪魔できへんやろ!」
「互いに想い合っていればの話ですよね?」
「・・・なんや。俺がサクに愛されてへんいうんか。」
じとりとした目で睨まれて、豪紀は視線を逸らす。


「見合い話が次から次へとあるからて調子に乗っとるやろ。ええなぁ、余裕のある男、ってやつかいな。」
「いや、その、そんなことは・・・。」
・・・何故俺が隊長に絡まれなければならないんだ。
豪紀は内心でため息を吐いた。


「・・・あーあ、ええなぁ・・・。雪乃ちゃんは橙晴やし、いい感じに育ってきた深冬ちゃんは最初から青藍のもんや。茶羅ちゃんもなんや想い人が居るねんて。あないはっきりと相手はオレやない、なんて言うことないやんけ・・・。」
落ち込んだ様子の真子に、豪紀は気の毒そうな視線を向ける。


「茶羅姫に直接言われたんですか、それ。」
「せや・・・。はっきり、きっぱりと、私の相手は真子さんじゃありませんわ、て。酷いと思わんか・・・。オレかて、お菓子あげたり、着物あげたり、簪あげたりしてんねんで?満面の笑みでそれを受け取って、真子さん大好き、いうたんは、どの口やねん・・・。」
はぁ、と深い溜め息が一つ。


「せやのに、何で、他の男の所に行くねん・・・。相手の男が解ったら、いびり倒したるわ・・・。」
目の前で呪詛を呟く隊長の目は本気だ。
隊長格のほとんどは朽木三兄弟の保護者だから大変だよな・・・。
豪紀は茶羅の相手が隊長格に苛められるであろうことに同情する。



2016.10.24
後編に続きます


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