色彩
■ 43.加賀美家訪問

さらに翌日。
青藍は深冬と共に午後半日非番を取って加賀美家を訪れた。
豪紀が当主となったお祝いに改めて来たのである。
ついでに儀式の日の件について説明に来たのだった。


「お待たせして申し訳ありません・・・って、お前らか。」
四半刻ほど待たされて、豪紀が姿を見せる。
『あはは。忙しいみたいだね。』
「誰のせいだ・・・。行く先々であの二人と深冬の関係を聞かれて困ってんだぞ・・・。」
豪紀はため息を吐く。


『まぁ、とりあえず・・・新しき加賀美家当主の誕生をお祝い申し上げる。』
青藍はそう言って深冬と共に一礼する。
「お忙しい中ご足労頂きまして、感謝いたします。」
それに応えるように豪紀も一礼した。


『さて、堅苦しいのはなしにしよう。面倒くさいし。あの件について手短に説明するよ。あ、祝いの品はその辺に届けてあるから後で見てね。』
そう言って青藍は笑う。
「そりゃどうも。で?あの二人は何だったんだ?」


『結論から言うと、僕と深冬を利用して安曇様を蹴落とそうとした。見てわかるとおり、安曇様の一族の方だ。』
「つまり、一族内での争いに巻き込まれたのか。」


『そうだね。本来ならば、一族の者以外と婚姻を結ぶことが出来ない。だから、深冬の存在は一族からは認められない。それを利用して、安曇様を蹴落とし、僕を使って、霊妃様が彼らを長に選んだ、とでも言うつもりだったらしい。よくある話さ。』
青藍は軽く言う。


「よくあっても困るんだよ・・・。わざわざ俺の当主引き継ぎの儀を選びやがって・・・。」
『あはは。まぁ、護廷隊や朽木家から僕らを連れ出すよりも、簡単だと思ったのだろう。僕らの周りには、基本的に隊長格が居るし。巻き込んで悪いね。』
「・・・はぁ。それで、あの二人の処分は?」


『うん。あの後すぐに安曇様と十五夜様がいらっしゃってね。そりゃあもう、お怒りでしたよ。あの二人、本当に長生きしているんだねぇ。ほぼ八つ当たりだったけれども。そして可哀そうなことにあの二人は今後百年、安曇様と十五夜様の雑用係に任命されました。と、いうわけで、まぁ、暫くは一族内で安曇様を引き摺り下ろそうなどと考える人はいないと思うよ。』
青藍は楽しげに言う。


「・・・それは、気の毒なことだな。」
『まぁ、そうだね。ある意味見せしめだ。それも私情たっぷりの。ね、深冬?』
「そうだな・・・。父様の怒鳴り声が朽木家に響き渡っていたからな・・・。内容は、あれだったが・・・。」
深冬はそう言って遠い目をする。


『ふふ。まぁ、僕も深冬も愛されているということだよね。』
「そうだな。」
青藍の言葉に深冬は嬉しげに微笑む。
「・・・そうか。それは良かったな。」
その微笑を見て、豪紀は表情を和らげる。
「はい、豪紀様。」


『うわ、仏頂面と顰めっ面以外の加賀美君、初めて見た。まぁ、深冬、可愛いもんね。・・・あげないよ?』
青藍はからかうように言う。
「何で妹を貰わなきゃならないんだ。俺だってそろそろ婚約するっての。」


『えぇ!?誰?何処の姫さ?』
青藍は興味津々と言った様子である。
深冬も気になるらしい。
「それがな・・・。」
豪紀は言い難そうにする。
『うん?』
「・・・周防家の実花姫だ。」
呟くように豪紀は言う。


『「・・・。」』
思わぬ名前が出てきて、二人は目を瞬かせた。
「頼むから黙るなよ・・・。」
そんな二人から目を逸らしつつ、豪紀は呟く。


『「・・・えぇ!?」』
豪紀の言葉を理解したのか、青藍と深冬は驚きの声を上げる。
『え・・・。だって、え?周防家の、実花姫って・・・。あの実花姫?』
「あの実花姫の他に周防家の実花姫が居るか?」


『いや、居ないけど・・・。』
「実花さまが見合いをするという話は聞きましたが・・・。まさか豪紀様だったとは。」
深冬は信じられないというように言った。

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