色彩
■ 40.酔っ払い睦月

「・・・兄様、父上で遊ぶのは止めてください。」
『あ、ばれた?』
「信じられませんわ・・・。兄様、怖いもの知らずもほどほどになさいませ。」
茶羅はそう言って蟀谷に手を当てる。
「青藍、先ほどから伝令神機をいじっていたのは、このためか・・・。」
深冬は呆れたように青藍を見る。


『うん。十四郎殿から明日、母上を非番にしてもいいと返事があったから。それがなければあんなことは言いません。母上を味方に付ければ父上だって怖くないよね。』
「青藍・・・君って人は、相変わらずなんだね・・・。」
「そうだな・・・。出来れば俺たちまで巻き込むのは止めてくれ・・・。」
薫と千景は疲れたように言う。
『あはは。すみません。』


「・・・ふぅ。ここに長居すると、何だか危ないから、帰ろうか、千景。」
「そうだな。」
二人はそう言って苦笑する。
『ふふ。またいつでも、お越しください。』
「あはは。今度はもう少し、普通の日に来るよ。」
「あぁ。何事もなく一日が終わった時にまた来る。」
二人はそう言い残して、出ていったのだった。


『おやおや、皆さん呑んでいるようですねぇ。ルキア姉さまも、雪乃もお帰りなさい。』
千景と薫を見送って、安曇を彼の部屋に運び込んだ青藍たちは浮竹たちの元へ顔を出す。
京楽、睦月、師走は呑み比べに入っているらしく、三人でひたすら酒を呑んでいる。


「ただいま。青藍、今日も大変だったようだな・・・。」
「本当よ。いつもいつも馬鹿みたいに捕まって。」
『あはは・・・。僕だって好きで捕まったわけではないのだけれどね。』
「ははは。まぁ、座れ。深冬も無事で何よりだ。」
二人の姿を見て浮竹が安心したように笑う。


「浮竹隊長。いつもご心配をおかけして申し訳ありません。」
そんな浮竹に深冬は申し訳なさそうに一礼した。
「無事ならそれでいい。」
浮竹はそう言って深冬に頭を上げさせる。


「しかし、兄様。何故、あの拘束具を外すことが出来たのです?霊圧制御装置まで組み込まれていたようですが。」
橙晴は首を傾げる。


『あはは。昔から睦月は十二番隊に出入りしていたからね。僕もそれなりに十二番隊には通っていたんだ。で、阿近さんに色々と教わったりもしたのさ。阿近さんは面倒そうにしながらも丁寧に教えてくれた。お蔭で僕はおおよその仕組みを理解している。』


「なるほど。それをあの短時間で解除したという訳ですか。」
「兄様、どんどん犯罪者に近付いておりますわよ?」
橙晴と茶羅は呆れたように言う。


『ふふ。ま、お蔭で今日を無事に乗り切ることが出来たのだから、いいじゃないか。』
「ははは。青藍は昔から好奇心旺盛だったが、それが役に立ってよかったな。」
「そうだな。まさか、あの阿近を味方につけていたとは。阿近は技術開発局の中でも手強いだろうに。」


『ふふ。今でも阿近さんには何かとお世話になっています。阿近さんって、なんだかんだ言いつつも面倒見がいいんですよねぇ。』
「はは。確かにそうだ。まぁ、あの十二番隊の三席だからな。マユリさんもネムさんも隊の仕事は基本的に阿近に丸投げだし。」


「あはは・・・。涅隊長と涅副隊長は研究が始まると中々捕まりませんからね・・・。私も連絡は基本的に阿近三席を通しています。」
ルキアはそう言って苦笑する。
「阿近さん、四番隊にもよくいらっしゃるわ。新薬を届けに。涅隊長が卯ノ花隊長に挑戦を挑んでいるからそれもついでに持ってきているけれど。」


「涅隊長の作った毒を解毒するっていうやつでしょ?」
「そうそう。今のところ、卯ノ花隊長の全勝よ。」
「ふふ。流石烈先生ですわ。」


「・・・あら?睦月君?何処へ行くのかなー?」
そこへ京楽のそんな声が聞こえてくる。
青藍たちがそちらに目を向けると、睦月がふらふらとこちらに寄ってきているようだった。
珍しく顔を赤くしている。
それに一同は目を丸くした。


『睦月?』
「んー?青藍?」
青藍が声を掛けると睦月は今気が付いたというように青藍を見た。
『・・・酔っているの?』
「酔ってなんか、居ませんよー。」
言いながら睦月は青藍に向かって倒れそうになる。


『うわ、睦月!?』
青藍は慌てて睦月を支えた。
「師走も春水さんも、一体どれだけ呑ませたんですか・・・。」
「まぁ、その辺の樽が空になっているんじゃないかしら。」


「それにしても睦月が酔うなんて珍しくないか?」
「そうだな。俺は初めて見る気がするぞ。」
「私も初めて見ます。」
酔った睦月に皆が注目する。


「んー。」
それに気付いているのかいないのか、睦月は青藍に体重をかける。
『睦月、重い。重いよ!?僕今座っているからこのままだと支えられないんだけど!?・・・うわぁ!?』
睦月を支えきれなくなった青藍が倒れて強かに頭を打った。

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