色彩
■ 37.事情説明@

「それで、青藍?出来ることなら、僕らにも説明してほしいのだけれど。」
「そうだな。取り押さえたの、俺たちだしな。それに、その安曇様と深冬さん、それから襲撃者二人の関係も気になる。さっき、我が一族とおっしゃっていたが。」


『あはは。説明するために安曇様にはここにお越しいただきました。まぁ、説明するのは僕ですが。安曇様は、何か、補足があれば口を出してください。』
「うむ。」
もぐもぐと口を動かしながら安曇は頷く。


『まぁ、基本的に秘密の話ですので、この話を聞いても口外しないと約束してください。』
「もちろん。」
「あぁ。」


『では、安曇様が何者であるか、ということからお話ししましょう。・・・先ほどからあのようにして居りますが、あの安曇様は、実は霊王宮にお勤めされている方でして。』
「「は?」」
青藍の言葉に二人は動きを止める。
そして一瞬の後、安曇を見た。


「む?」
それに気付いた安曇は口いっぱいに菓子を頬張ったまま首を傾げる。
「・・・父様、あまり口に入れると喉に詰まらせると思う。」
その様子に深冬が呆れたように言った。
「そうですわ。安曇様はお年寄りなのですから、もう少し、気を使った方がよろしくてよ。年を取ると呑み込みが悪くなるのですから。」


「・・・んむ。そう年寄り扱いしてくれるな、茶羅。体はまだ若いぞ。」
「実際お年寄りじゃないですか。この方、これでも山本の爺と同じくらい生きているのですよ。」
「「え?」」
「霊王宮って化け物ばかりね。十五夜様も相当だけど。」
『まぁ、霊王宮だから仕方ないよね。・・・大丈夫ですか、先輩方?』
頭が付いて行かないのか、千景と薫は目を丸くしたまま止まっている。


「・・・あ、あぁ。そうか。霊王宮の方なのか。」
「では、一族というのは霊王宮の?」
『まぁ、そうなりますね。あの襲撃者二人はこの安曇様の配下・・・というべきでしょうか?』
「一応な。さっき、ただの下僕となったがな。これから百年苛めとおしてやる。」


『あはは。この安曇様、これでも一族の長でして、その上、祭儀長官というお立場。霊王宮の中でも偉いのです。あの二人と話をつけるために、今日はここへ来られたのですが。』
「話をつける、というよりは、脅しに来た、が正しいですよね?安曇様、深冬のことになると容赦ないですし。」


「そうか?ちゃんと話し合いだったぞ。なぁ、青藍?」
そう言って安曇は青藍を見る。
『えぇ。まぁ、一応。あの二人、一言も発しておりませんので、一方的な話し合いではありましたが。ほぼ安曇様と十五夜様の八つ当たりでしたし。』


「兄様、それは話し合いとは言いません。」
『あはは。まぁ、安曇様が話し合いといったら、話し合いになるんだよ、橙晴。いやぁ、山本の爺よりも迫力があった。流石に年季が違いますね。』
青藍は楽しげに言う。


「年寄り扱いしおって。青藍と深冬に手を出して、命があるだけましだろう。」
言いながら次の菓子を口の中に放り込む。
「お二人の声が、こちらにまで聞こえてきましたわ。ねぇ、深冬?」
「そうだったな・・・。」
深冬は困ったようにいう。


『ふふ。僕も深冬も愛されているよねぇ。まぁ、何やら物騒なお話も聞いた気がしますが、とりあえず、あの二人の身柄は安曇様方が引き受けることになりました。それで、深冬のことなのですが・・・。』


「あぁ。あの二人が何か言っていたが・・・。」
「それに、深冬さんがこちらに居るのは何故なんだい?安曇様が霊王宮の方ならば、霊王宮に居るべきでは?」


『それは、安曇様の一族の掟の中に、婚姻は一族の中で行う、というものがあるからです。つまり、一族以外の者との間にできた子どもは一族には認められない。』
「深冬さんのお母上は一族の者以外ということだね?」


『えぇ。ですが、安曇様は霊王宮のお方。こちらの貴族がそれを知れば、深冬を利用するでしょう。なので、安曇様が何者であるかは時が来るまで絶対に口外しないで頂きたい。この話が漏れれば、今回のようなことが再び起こります。それでなくても僕の周りは物騒なので、それは勘弁願いたい。今日みたいなことが起こると、僕、皆に怒られるんですよ・・・。』
青藍は疲れたように言う。


「なるほど。口外しないと約束するよ。」
「俺もだ。本当に青藍の周りはいつも騒がしいな。」
千景は苦笑する。
「兄様の周りが騒がしいと、私たちまで騒がしくなるんですから。」
「そうそう。大変だよねぇ。」

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