色彩
■ 35.寛大な処置

「あの、皆さん、盛り上がっているところ悪いんですが、この二人、どうするんです?」
静かに話を聞いていた睦月が、八雲と出雲を指さしながら問う。
「あぁ、そうだったな。忘れておったわ。」
安曇は面倒そうに二人を見る。


「長である私に手を出そうとしたのだから、本来ならば一族から追放されるが・・・。」
「僕、それよりももっといい使い道があると思うよ。」
「私もそう思う。」
安曇と十五夜はそう言って何かを企むような顔をする。


「爺二人の悪だくみに巻き込まれるとは、そなたらも憐れよのう。我が愛し子に手を出したのだから当然じゃが。まぁ、青藍に何かあれば、即座に妾がそなたらの首を落とした。その首、繋がっておって良かったのう。」
霊妃が楽しげに言った言葉に二人は震えあがる。
その間、十五夜と安曇はひそひそと何やら話し合っている。


「・・・やはり、それがいいな。」
「そうだね。僕もそう思うよ。」
二人の間で何やら決まったらしい。
「・・・あの二人、意外と息が合うんですよねぇ。」

『あれ!?霊妃様は?』
響鬼の声が聞こえてきて、青藍は目を丸くする。
「あの二人を脅して満足したのか、先ほど帰られました。」
『・・・相変わらず自由だなぁ。』


「咲夜様、たまには漣家まで舞を見せに来いとのことです。」
「あはは。そのうち行こう。」
「なんというか、どこまでも、お前らの周りはアレな奴ばかりだよな・・・。」
睦月は苦笑する。


「さてさて、処罰の発表と行こうじゃないか。」
「そうだな。馬鹿二人にはこの位が丁度良かろう。」
十五夜と安曇は楽しげに言う。
そんな二人に、碌なことが起きないと響鬼はため息を吐いた。
そして八雲と出雲に憐みの視線を送る。


「馬鹿二人は・・・。」
「今後百年・・・。」
「「我らの雑用係に命じる。」」
「働きによっては、今回の件、不問に処す。」
「何かまた問題を起こせば次こそ追放するからね。」
「もちろん、流魂街に落とすというだけで済ますと思うなよ。」
「そうそう。断崖の中にでも置き去りにするから、覚悟しておきなさい。」


『あはは。寛大ですねぇ。』
「え、そうか・・・?百年あの二人の雑用って、たぶん、かなり、しんどいと思うぞ?」
楽しげに言った青藍に、睦月は怖いものを見るような視線を向ける。


『あの二人、普段はあんなだけれど、相当アレなことをやっているからね。まぁ、偉いから尸魂界の闇を知るのは仕方のないことだけれど。一人二人抹殺するぐらい、あのお二方にかかれば簡単なことだよ。それが、霊王宮の者だとしても。』
青藍はひそひそと睦月に説明する。


「そうだな。昔、大叔父様が青藍を誘拐しようとした男を引っ捕まえたときは止めるのが大変だった。いや、止めたが、その後その男の所在が分からなくなっているから、実際はどうしたのやら・・・。」
咲夜はそう言って遠い目をする。


『あはは・・・。僕、それ、聞かなかったことにします。』
「はは。賢明だ。私も怖くて聞けないのだ。」
「やだもう、俺、ここに居るの怖い。」
睦月はそう言って頭を抱える。
「まぁ、私たちは大丈夫だろう。霊妃の加護があるからな。愛し子もここに居るし。」
咲夜は楽しげに言う。


『ふふ。そうですね。あの二人よりも霊妃様の方がお強いですから。』
「霊妃様は睦月様のこともお気に入りの様子です。その髪と瞳が綺麗だとおっしゃっておりました。」
響鬼は淡々という。
「そんな見た目で判断して大丈夫なのか・・・?」


「霊妃様の目には容姿以外にも色々なものが見えておりますので。貴方が「草薙」の「睦月」であることも一瞬で見抜かれたはずです。」
「そう言えばそうだった・・・。お蔭で秘術の話を知られてしまったんだった・・・。」


『大丈夫だよ、睦月。もうそれ、僕も知っているから。霊妃様がこっそり教えてくれた。』
項垂れる睦月を元気づけるように、青藍は軽く言った。
「それ、慰めになっていないぞ、青藍。」


「あの人、おしゃべりなんですか?」
「まぁ、愛し子相手にはついつい口が滑ってしまうのでしょう。」
「本当に大丈夫か、それ。青藍がどんどん余計なことを知っていく気がするぞ・・・。そして青藍が何かに巻き込まれれば、俺たちだって巻き込まれるんだぞ・・・。」
「それはそれで、楽しめばいいと思います。頑張ってください、睦月様。」


「他人事だよな・・・。」
「他人事ですから。・・・さて、安曇様はともかく、十五夜様はまだまだお仕事があります。霊王宮に帰りますよ。ついでに、そこで捕まっているお二人も。」
響鬼はそう言って立ち上がる。


「何故安曇は良くて僕は仕事に行かなきゃならないんだ!」
「まだまだお仕事があると申し上げました。ほら、そこの二人を担いでください。」
「え、この二人、僕が運ぶの?」
「当たり前じゃないですか。僕に持てると思うなら、僕は貴方が呆けたのだと認識します。そして漣十五夜は呆けましたと、霊王様へご報告申し上げるまで。」


「それは嫌だ!」
「では、それらを連れてきてください。・・・皆さん、お邪魔しました。」
響鬼はそう言うと空間を開いて、二人を担いだ十五夜を引っ張っていったのだった。

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