色彩
■ 34.良いことを聞きました

「のう、安曇や。そなたらが妾を異端と呼ぶのは何故じゃ?」
霊妃は安曇に問う。
「そなたの父親がわが一族の者でないからであろう。それ故、そなたは霊王宮に立ち入ることが出来ぬ。霊王と離れていなければならぬという理由もあるにはあるが。」
「そうじゃ。まぁ、それも霊王が居る間だけのことじゃがの。そして、妾が霊妃たるゆえんは、異端だからであろ?」


「そうだ。何故だかは知らんが、そなたは強大な力を持って生まれた。故に霊王がそなたを妃に選んだのだ。対の力として。霊王が選んだからには、我ら一族からそなたを追放することなど出来ぬ。霊王が我ら一族の者でないとしても婚姻を断ることも出来ぬ。よって、そなたの処遇は霊王宮に踏み入れられないだけに止めた。」


「つまり、妾はそなたらの一族の者として認められて居るのじゃな?」
「まぁ、そういうことだろう。全く、厄介なことだ。」
安曇は疲れたように言う。


「安曇は霊王宮に居るのだからいいじゃないか。漣家など、どれほど苦心して霊妃様を隠してきたか・・・。霊妃様は気分で降りてくるのだぞ・・・。」
十五夜はそう言って遠い目をする。


「ほほ。苦労を掛けるのう。じゃが、漣家の血筋の者でなければ、妾は降りられぬのじゃ。何故かは知らんがの。まぁ、妾が持たぬ色彩を持っておることに、妾が興味を持ったことは事実じゃが。」
「なるほど。この髪と瞳の色がお気に入りだと?」


「そうじゃな。十五夜は特に美しい。咲夜と青藍には負けるがの。あぁ、茶羅も美しいの。」
「なんだ。霊妃の好みで選んでおるのか。十五夜はいらんが、いい趣味をしておる。」
「安曇のことも中々気に入っておるぞ?」


「・・・私は別にいい。早く解任して、流魂街にでも落としてくれ。そうしたら朽木家当主である青藍に拾ってもらって悠々自適に隠居生活を楽しむのに。深冬とだって毎日会うことが出来るのに。青藍ばかり狡いぞ!」
安曇は悔しげに青藍を見る。


『あはは・・・。僕も毎日会えているわけではないのですが・・・。まぁ、安曇様が一族から捨てられたら、僕が拾ってあげますよ。何せ、義父になるお方ですからね。』
「何!?安曇、それは狡いぞ!!!」
「黙れ爺。私の可愛い娘が青藍の妻となるのだ。当然のことだろう。」
安曇は勝ち誇ったように言う。
十五夜はそれを恨めしげに睨んだ。


『まぁまぁ。十五夜様もいつでもお出でになってください。』
「青藍!やっぱり君は可愛いなぁ!」
青藍の言葉に十五夜は瞳を輝かせる。


『ふふ。・・・それで、霊妃様。質問があるのですが。』
「何じゃ?」
『先ほど、漣家の血筋にしか降りられないとおっしゃって居りましたね?』
「そうじゃの。」


『ということは、僕たち兄弟に降りることも可能で?』
「ふむ・・・。」
青藍に問われて、霊妃はまじまじと青藍を見る。


「・・・降りることは出来ぬ。じゃが、そなたと茶羅ならば、すぐにそばに寄ることが出来よう。橙晴は朽木の血が濃いゆえ、ちと難しいが、妾が呼ばれたことに気付けばこちらから寄って行くことぐらいはできるだろう。」


『それは、どういう?』
「妾との間に、物理的な距離があっても、呼ばれれば妾とそなたらで意思の疎通ぐらいは出来るということじゃ。」


『・・・じゃあ、漣家を通さなくても、霊王宮と直接連絡が取れると?』
「そうじゃの。安曇はともかく、十五夜はすぐに呼べるぞ。これは妾が呼べば飛んでくるからの。安曇は儀式がある故、体が空いていなければ呼べぬが。」
『なるほど。それは便利ですね。いいことを聞きました。』


青藍はにっこりと微笑む。
その微笑を見て安曇と十五夜はぎくりとした。
・・・完全にこき使う気だ。
と、二人は内心で呟く。


『そういうことなら、いくらでもお二人を呼ぶことが出来ますね。それは安心しました。何かあると漣家に行かなければならなくて、その辺を探ってくる人もいるので、気を使うんですよねぇ。母上に降りて頂くのも、中々大変ですし。』
「そうだな。私も中々大変だ。白哉が文句を言うしな。」
『あはは。そうですね。』

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