色彩
■ 33.霊妃の言葉

「こんな騒ぎを起こすことだけでも愚かだというのに・・・。」
「「僕(私)の青藍(深冬)に手を出すとは何事か!!!」」
あぁ、やっぱりそう言う怒りなのですね・・・。
僕も深冬も愛されているなぁ。


「青藍は霊妃の愛し子なんだぞ!手を出したらどうなるか、赤子でもわかるだろう!その上咲夜の子だぞ?可愛すぎるほど可愛いのだぞ!!!見てみろ、あの綺麗な顔!!!青藍が女だったら攫って僕のお嫁さんにするのに!!」
・・・十五夜様、本音が出ていらっしゃいます。


「深冬が禁忌の子だと?私がいつ、深冬を一族に入れようとした?そもそも、私は美央と契は結んだが、夫婦とはなって居らぬ。一族の掟など、犯しておらぬわ!!!」
・・・安曇様、それは、屁理屈というのでは?
内心でそう思いながらも、青藍は沈黙する。


「大体、貴様らの父である先代だって、貴様らのほかに子が居ったわ!!誰がそれを守っていたと思うのだ!!お蔭で私は、流魂街に詳しくなって仕方がないのだぞ!!!」
安曇は叫ぶ。


うわぁ・・・。
何だか、八つ当たりが始まった・・・。


「そうだぞ!だからこの安曇の阿呆が流魂街の女に孕ませるようなことになったのだ!事の発端は君たちの父親のせいではないか!!!」
「喧しいぞ、十五夜!!!余計なことは言わんでいい!!この馬鹿!!!」


「事実だろう!!この阿呆!!!一族の取りまとめぐらい真面目にやれ!!!何で僕が後始末に来なければならないんだ!!」
「霊王の命だろうが!!大人しく聞け!!それでも一応筆頭家臣であろう!!」
二人はそんな言い合いをして睨み合う。


「あぁ、また始まった・・・。」
そんなげんなりした声が隣から聞こえてきて、青藍は驚いたようにそちらを向く。
そこにはなぜか茶を啜っている響鬼の姿があった。
青藍と咲夜は目を丸くする。


『響鬼。いつの間に・・・。』
「あ、先ほどお邪魔させていただきました。霊妃様からの命がありまして。」
『それはどんな?』
「えぇ。言葉を伝えよ、と。」


『言葉とは?』
「まぁ、それは、あの二人にも聞かせねばなりませんから、とりあえずあの爺どもを黙らせましょうか。」
響鬼は面倒そうに立ち上がる。
そして、あっという間に二人に飛び蹴りをかました。


「「痛い!!!」」
蹴られた背中を押さえて、二人は響鬼の方を向く。
「喧しいですよ、お二方。霊妃様からのお言葉があります。」
そう言って響鬼は一度目を閉じる。


再び目を開けるとその瞳が紅に染まっていた。
それを見て、二人は大人しくなる。
そして、捕えられている二人はその身を震わせた。


「・・・苦労しておるようじゃの、安曇。」
響鬼の口から霊妃の声が聞こえてくる。
「そなたの末裔だろうが。何故わが一族はこうも面倒な者ばかりなのだ。」
「ほほ。そなたがそれを言うか。爺が恋をするから面倒なことになるのじゃ。」


「喧しい。それに、そなたに爺などと言われたくないわ。私が爺ならそなたは婆ではないか。それも、私よりずっと婆だ。」
安曇様、霊妃様相手でもそんな口をきくのですね。
いや、まぁ、父上も割とそうですが。


「相変わらず、口が悪いのう。まぁ、よい。・・・その愚か者たちの名は何といったか。」
「何度言っても覚えないとは、呆けているのではないか?・・・痛い!」
そんなことを言った安曇に蹴りが入れられる。


「・・・八雲に出雲だ。」
安曇は蹴られたところを擦りながら不満そうに言った。
「そんな名であったの。・・・八雲に出雲。そなたら、深冬を禁忌の子だなどと言ったようじゃの?それは妾を禁忌の子ということと同じこと。それを知らぬそなたらではないと思うたが。」


・・・ん?
何だそれは。
青藍と咲夜は首を傾げる。
何やら新事実が発覚するらしい。
「「・・・。」」
霊妃の言葉に八雲と出雲は沈黙する。

[ prev / next ]
top
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -