色彩
■ 29.銀と紅

「何を笑っている。」
笑い続ける青藍に、男は語気を強める。
『ふふ・・・。申し訳ありません。嘘はいけませんよ。目的が達せられれば、今度は私どもが邪魔になる。貴方方が私どもを利用したことを私どもは知っているのですから。私どもの存在は貴方方の弱みとなる・・・つまり、私どもは排除される。』
「・・・。」


『それが分からないほど、私は愚かではありません。見縊られては困ります。』
その言葉と共に青藍の雰囲気が一変する。
冷たく、厳しい雰囲気に、会場内が凍りつく。
男もまた小さく震えたようだった。


『私の役目が何であるか、貴方はご存じのはず。知っているからこそ、今私に刃を向けている。私どもを利用しようとしている。』
青藍は冷たく言い放つ。
「・・・。」


『それがどういうことか、解らない貴方ではないはずです。私どもを利用することはそれだけでも大きな罪となる。その上私どもを排除するというのですから、自分たちがどうなるか想像できると思いますが。私どもと貴方方、あの方がどちらを選ばれるかは明白なのでは?貴方の言う通り、私は愛し子なのですよ?そして、あの娘はその私の庇護のもとにある。あの方の加護があると言ってもいい。』


冷たい微笑みを浮かべながら青藍は言う。
・・・外れた。
言いながら青藍は拘束具を解除した。
それがばれない様に霊圧を極限まで抑える。


『仮に、その後も私どもを利用するために手元に置いたとしても、私どもはそう簡単には従いません。それに、やはり、あの方々が大層お怒りになることでしょう。あの方々の怒りを鎮めることが出来るのは私の知る限りではただ一人。』
そこまで言って青藍は口角を上げる。


『我が母、咲夜だけにございましょう。』
「・・・。」
『しかし、我が母はあの方々を止めることはしないでしょう。寧ろ、あの方々と共に貴方方を潰しにやってくる。当然、朽木家、漣家もそれに加わることでしょうね。あの十五夜様が貴方の敵に回ることは確実です。』
十五夜、と聞いた男が息を呑むのが解る。


『ですが、そんなことになれば、この尸魂界に甚大な被害が及びます。尸魂界の均衡が崩れれば、現世、虚圏もまた、その余波を食らうことでしょう。世界が敵になって、貴方方に襲い掛かりますよ。・・・と言っても、そうならないようにするのが、私の務めなのですが。』


「・・・そうか。では、我らの誘いには乗らないということだな?」
『ふふ。・・・お断りいたします。』
「それは残念だ。その綺麗な顔が二度と拝めなくなるとは。」
男はそう言って青藍の首に突きつけた刃を引いた。
それに気付いた周りの者たちは声にならない悲鳴を上げる。
しかし、その刃はただ空を斬っただけだった。


「な!?」
男が慌ててあたりを見回すと、青藍は深冬を拘束していた者を気絶させている。
そして、深冬の拘束具を解除していたのだった。
それと同時に豪紀は動く。
それを見た千景と薫も動いた。
あっという間に男は三人に拘束される。


『全く、危ないですねぇ。・・・さて、まずはその頭巾を取って頂きましょうか。まぁ、顔を見なくとも貴方方が何者か解っておりますが。』
深冬を抱き寄せながら青藍が言うと、薫がその頭巾に手を伸ばす。
そして躊躇いなくそれを外した。


さらり、と長い髪が零れ落ちる。
色は銀。
そして、その瞳は紅。
その姿に事情を知らぬ一同は唖然とする。
青藍は気絶している方の頭巾を剥ぎ取った。


『・・・おや、こちらもでしたか。』
こちらも同じ色彩を持つものだ。
『やはり、そう言うことなのですね・・・。これでは、貴方方の長にご報告申し上げねばなりません。』
青藍は残念そうに言う。

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