色彩
■ 21.挨拶回り

翌日。
青藍を始めとして、朽木家全員で、護廷隊を練り歩いていた。
もちろん、婚約者である深冬も一緒である。
ちなみに雪乃も巻き込もうと橙晴が画策したが、それを察知した雪乃は早々に仕事に行ってしまったのだった。


朽木家は死神との関わりが深いため、各隊の隊長副隊長に挨拶をしているのである。
全員が揃っている上に、死覇装でなく貴族の正装をしているという珍しい状況のため、否が応でも隊士たちの注目を集めている。


その中で最も注目を集めているのはやはり青藍であった。
普段の青藍を知る者は、その雰囲気に目を丸くする。
いつも気安く声を掛けてくる隊長格でさえ、貴族然とした青藍の前ではどことなく緊張感を漂わせるのだ。


一番隊から順に挨拶をし、漸く十三番隊に辿り着いた。
途中、八番隊に京楽が居なかったり、十一、十二番隊で隊長同士の喧嘩が始まったりしそうだったが、何とかそれを止め、平和な十三番隊に辿り着いたのである。
その他にも色々とあり、何人かが刑軍に捕縛されたりもしたのだが。


まぁ、それはそれとして。
雨乾堂に入ると、長いため息を吐いて、彼らは脱力した。
それを見て、浮竹は苦笑する。


『十三番隊隊長、浮竹十四郎殿に、ご挨拶を申し上げます。昨日、私、朽木青藍が第二十九代朽木家当主となりました。まだまだ未熟者にございますが、今後とも、よろしくお願いいたします。』
既に疲れ切っている青藍は何とかそう挨拶をして一礼する。
「新しき当主の誕生をお祝い申し上げる。」
浮竹もまた一礼を返した。


『・・・・・・終わったぁ!!』
青藍はそう言うと、ごろりと畳の上に転がった。
白哉とルキア以外の面々は既に畳の上で力尽きている。
かくいう二人も疲れ切って座り込んでいるのだが。


ちなみに深冬は咲夜と茶羅に巻き込まれる形で畳の上に転がった。
自隊の隊長の前であるが、そこから起き上がる気力もないらしい。
そんな彼らの姿に浮竹は苦笑するしかない。


「ははは。お前ら、自由だなぁ。まぁ、茶でも飲んでいくといい。清音、茶を頼む。」
「はい、隊長。」
浮竹がそういうと何処からともなく返事が聞こえてきた。


「浮竹、居るかい?咲ちゃんたちの挨拶、もう終わっちゃったみたいなんだけど・・・。」
そんな声と共に京楽が姿を現す。
そして脱力している朽木家の面々を見て、苦笑した。


「疲れ切っているねぇ。」
言いながら京楽も座り込む。
『あ、春水殿。挨拶は七緒さんにしておきました。よろしくお願いします。』
転がったまま青藍は顔だけ京楽に向けて言う。


「あはは。解ったよ。お疲れ様。」
「えぇ。もう、とっても疲れました・・・。」
「そうね・・・。何よ、あの途中の襲撃者は。兄様、本当に狙われているのね。」
『あはは・・・。一直線に僕の所に来たね・・・。』
「睦月と師走が大活躍だったな・・・。最終的には白哉まで護衛のようだった・・・。」


「お前ら・・・一体どんな道を歩いてきたんだ・・・。」
疲れ切った様子に、浮竹は心配そうな顔を向ける。
「一番大きな通りを歩いてきたのですが・・・。」
思い出しているのか、ルキアは顔を青くした。


「兄様、本当に何もしていないんですよね・・・?」
橙晴は青藍に疑いの目を向ける。
「一体何をしたらああなるんだ・・・?」
咲夜も疲れ切ったように言った。


『さぁ?普段から割とあんな感じなので・・・。精神的にやられそうですよね・・・。』
青藍は遠い目をする。
「青藍・・・。そなたは一体普段どんな生活をしておるのだ・・・。あれは報告以上だろう・・・。」
白哉はそう言って額に手を当ててため息を吐いた。


『まぁ、今日のように攫われそうになったり、襲われそうになったり、怪しげな薬を投げられたり、贈り物の中に毒やら媚薬やら爆発物やらが入っていたり、盗聴器や隠しカメラが仕込まれていたり・・・。挙げれば切りがありませんけど。』
青藍は疲れたように言う。
「咲夜よりひどいぞ・・・。」


『あはは・・・。何故でしょうね・・・。僕は日々あれらと戦っているわけです。貴族の席でも媚薬やら睡眠薬やら盛られていますしね・・・。』
「青藍、それは、大丈夫なのか・・・?」
深冬が心配そうに言う。


『まぁ、それなりに慣れるよね。深冬も気を付けてね。ちゃんと睦月の薬を飲むんだよ。』
「あぁ。青藍の傍に居る時は特に気を付ける。」
『いや、僕の傍に居る時は僕が助けるよ・・・。』


「青藍の傍に居る時の方が危ないということがよく解った。」
『結構酷いことを言っているよね・・・。まぁいいけどさ・・・。』
「あはは。なるほどねぇ。それは大変だ。」
京楽はそう言って笑う。


「笑い事じゃありませんよ。兄様、その内死にますよ?今日だって怪しげな薬を投げられてそれを避けたら、塀に当たった瓶が割れて・・・。その後技術開発局が完全防備で現れました。どれだけ危険なものだったのやら・・・。というか、僕の見間違いでなければ、あの塀、溶けていましたよね・・・?」


『あはは。ま、普段はこんなに堂々とゆっくり歩いたりしないから今日ほどじゃないよ。鬼道で姿を見えなくしたりしているし、屋根の上や隊舎の空き部屋を通って動いている。』
「だからあれ程隊舎に詳しいのだな・・・。」
ルキアはそう言って苦笑する。


『えぇ。十三番隊だけでなく他の隊舎も隅々まで探検済みです。定期的に変化がないか確認もしていますし、最近は地下道の地図を製作中です。』
「そうだな、青藍。それは大切だ。これからも怠るなよ。私も、色々と教えてやるから。」
『はい、母上。』

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