色彩
■ 17.余裕はない

「・・・なるほど。俺が思っている以上に信頼されているらしい。どうやら睦月共々長い付き合いになりそうですねぇ、白哉さん?」
師走は楽しげに言う。
「そうだな。青藍、この二人、好きなだけ使ってやれ。」
『あはは。もちろん、そのつもりですよ。睦月も師走もよろしくね。』


「いやぁ、それはちょっと勘弁してほしい・・・。」
「まぁ、付き合ってやる。俺も師走もここに居るのが面白いからな。」
『ふふ。それはいいね。僕が君たちの人生を面白くしてあげるよ。』


「いや、それは、お前のそばに居るだけで、お前が何もしなくても面白いから、わざわざ面白くするな。俺たちの寿命が縮む。」
『えぇ?それじゃあ、僕が詰まらないじゃないか。』
大真面目に言った睦月に青藍は唇を尖らせる。


そんな様子に、深冬は自然と微笑んでいた。
これが、青藍の育った場所なのだ。
大きな責任があっても、こうやって皆で集まって笑いあう。
時には涙して、それでまた笑って、何度だって立ち上がる。
これが、青藍の、朽木家の強さの秘訣なのだろう。


私は既にその中に入っているのだ。
一員として迎えられているのだ。
それがくすぐったくて、温かくて、幸せで。
今ここに居られることを感謝した。
そして、これからもここに居ることが出来るように、強くなりたい。
どんな時でも、最後は笑っていられるように。


「・・・へぇ。深冬御嬢さんはそうやって笑えるようになったんですねぇ。」
微笑む深冬に気付いた師走は珍しそうに深冬を見る。
「最近、青藍の前以外でもよく笑うんだよな。」
睦月は青藍をチラリと見やりながら言う。


「そうだろうか?」
「あぁ。お蔭で青藍は大変だ。」
「大変?」
深冬は首を傾げる。


「そうそう。青藍兄様は、深冬が笑うと気が気じゃないんだから。」
「そうね。兄様ったら、意外と余裕がないのよね。」
「余裕に見せているだけなのよね、青藍?」
『当たり前じゃないか。だって、深冬、可愛いもん・・・。』
楽しげな皆に、青藍は拗ねたように言う。


「知っています?兄様、深冬が呼び出されていると聞くと、落ち着きがなくなるんですよ?」
『だ!?な、そんな、事は・・・ない、よ?』
「「「「嘘。」」」」
言われて青藍は盃を乾す。


「兄様、深冬の前ではそれを隠しているけど、深冬が居なくなると、いつも机に突っ伏しているんだから。深冬、知っていた?」
「それ、は・・・知らなかった。」
『だいせい!余計なこと言わない!!!』


「事実じゃないですか。もう、いい加減六番隊の席官たちは兄様の余裕のなさに気付いていますよ。言葉にしないのは優しさです。生暖かく見守っているのです。」
「あはは!青藍、可愛がられているなぁ。」


『・・・別にいいですよ。六番隊の皆は僕のことをよく理解してくれていますからね。大体、その辺の余裕のなさは橙晴だって同じでしょ?雪乃が告白されたと聞くとイライラしているくせに。機嫌が悪くて隊士たちが可愛そうなんだから。』
青藍は反撃とばかりにそう言い放つ。


「五月蝿いですね。仕方ないでしょう。僕は雪乃と婚約しているわけではないのですから。兄様のように正々堂々と攫うことすらできないんですよ!」
『いや、僕だって告白の現場から攫ったのは一回だけだもん・・・。ねぇ、深冬?』
「あれは・・・攫ったのか・・・?」
『正確に言えば相手にお引き取り頂いた。』


「何だ、そんな面白いことしてたのか、お前。」
睦月がニヤニヤと問う。
『仕方ないでしょ。十三番隊に書類を届けたついでに深冬の顔を見ようと探していたら、深冬、告白されているんだもの。父上だってそういう場面に出くわしたらそうしません?』


「そんな場面に出くわしたことなどない。」
『えぇ!?何故ですか?』
「咲夜に想いを告げることすら、私は許していないからだ。」
白哉は堂々と言い放つ。


「咲夜へそういう呼び出しがあれば、代わりの者を行かせて断らせている。」
「何!?私にそんな呼び出しがあったことすら知らないぞ!?」
「知らせる必要があるか?そなたは私を選んでいるというのに。」
言いながら白哉は咲夜に視線を送る。
「そ、れは、そうだが・・・。」
「では構わぬだろう。」


『あはは。父上は何処までも父上ですよね。』
「そのようだわ。」
「父上にそこまでさせる母上も母上ですけどね。」
三人の言葉に皆が頷く。

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