色彩
■ 11.今日も平和

「いいじゃない。皆やっていることなんだから。それに、やり方を知らないわけでもないんでしょ。」
乱菊はあっさりと言い放つ。
『そ、れは、そうですけど・・・。もう、放って置いてくださいよ。なんで昼間から素面な上にこんなところでそんな話をしなくちゃならないんですか。』


「だって青藍、そういう話し全く聞かないし、自分から話さないじゃない。あんたに告白した女性隊士に聞いても断られたとしか聞かないし。」
乱菊は詰まらなさそうに言う。


『明るく話せる内容じゃないからですよ!僕がどんな目に遭って来たか知っているでしょう・・・。それに、告白されたからって、手を出すような男に見えますか?大体、間違って手を出して子供でも出来たら大変なんですよ。お家騒動に発展します。』
青藍は真面目にそう答える。
「へぇ。貴族も大変なのねぇ。」


『大変なんですよ。僕が普段、どれだけ媚薬を盛られているか・・・。』
「あはは!!そんな面白いことされてんの、あんた。」
溜め息を吐きつつ言った青藍に乱菊は笑う。


『酒の席に行けば必ず盛られていますよ。睦月の薬があるから媚薬の効果は打ち消されますが。媚薬でなくても、一服盛って眠らされて、どこぞの姫と一夜を過ごしたことにでもされたら大変なんです。僕が日々どれだけ気を張っているか・・・。』


「あはは!!!!」
『笑い事じゃありません!!!あわよくば朽木家次期当主である僕の妻になろうという人が沢山いるんですから。深冬と婚約してからだって毎日のようにお見合い話が持ち掛けられる・・・。もう嫌だ・・・。僕はこう見えて女性不信なんですからね・・・。』
青藍は頭を抱える。


「・・・おい、松本。遊んでんじゃねぇ。」
話し始めた二人に、冬獅郎は青筋を立てる。
「あ、隊長。お茶です。そば饅頭もありますよ?」
乱菊はそれを気にすることなく持っていた湯呑を冬獅郎の机に置く。
ついでにそば饅頭も隣に置いた。


「あぁ、悪い・・・じゃなくて、仕事しろ。」
「えぇ・・・。何で青藍にはそう言わないんですかぁ?」
「そいつはお昼寝の時間だからだろ。」
「あ、もしかして、隊長、自分が昼寝するから青藍に注意できないんですね?」
「うるせぇな。お前と違って青藍は仕事を終わらせてんだよ。」


『あはは。今日の分の書類はもう終わっていますねぇ。』
「ずるーい。あたしの分、やらない?暇なんでしょ?」
乱菊はそう言って書類の束を青藍の前に置く。
『それは駄目です。乱菊さんを甘やかすなと冬獅郎さんから厳命を受けていますので。』
青藍はにっこりと微笑んでいう。


「隊長の言うことは聞く癖に、あたしの言うことは聞けないっていうのね?青藍ってば生意気。」
『だって冬獅郎さんの方が偉いですもん。冬獅郎さんは隊長様です。』
「そうだ。俺は隊長。お前は副隊長。よって、お前は俺の言うことを聞け。仕事しろ。」
冬獅郎はそう言って書類を差し出す。
乱菊はそれを渋々受け取った。


『あはは。大変ですねぇ。乱菊さん。その椅子の下に隠してある書類もちゃんと処理してくださいね。』
「あ?何だよそれは・・・。」


青藍の言葉に冬獅郎は眉間にしわを寄せる。
何かに感付いたらしく、徐に立ち上がると青藍が指さした椅子の下を覗き込んだ。
それを見て乱菊は顔を青褪めさせる。
青藍はこの後起こることを予想して、早々に窓から外へと飛び出した。


「まーつーもーとー!!!!!」
背後からそんな怒声が聞こえてくる。
それを聞いて青藍は楽しげに笑った。
今日も平和だなぁ、と。

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