色彩
■ 7.嫌い

『・・・君たちは本当にお姫様なんだね。茶羅の友人だから悪く言いたくはないけれど、僕、そういうのは嫌いだよ。』
「「・・・。」」
そう言った青藍に二人は不満げに沈黙する。


『僕が君たちに力を貸してほしいというのなら、僕からその話をするよ。その話をしたうえで、君たちの覚悟を聞く。それをしないのは、何故だと思う?』
「「・・・。」」
『・・・僕が君たちに力を貸してほしいとは思っていない、と、考えられないかい?』


「何よ、それ。覚悟を決めろと言いながら、私たちには話さないというの?」
「それではどうしたって覚悟なんか決められないじゃない。」
二人は冷ややかに言った。


『・・・それは君たち自身の問題だ。君たちに力がないからだと、思わないのか。君たちが信頼するに足る行動をしていないからだと、何故解らない。』
静かに怒りを滲ませて、青藍は言い放つ。


『それが分からないのなら、当主になるなど言語道断。もし、僕が慶一殿の立場ならば、君たちのどちらも選ばない。当主というものは、その程度では背負えない。周防家は笛の音が財産だと言ったね。でも、それだけでは当主になることが出来ない。なぜ、慶一殿が当主になったのか、考えなさい。慶一殿が長男だからという理由もあっただろうけど、笛の音だけで選ぶのならば、他に適任者がいたことを君たちは知っているだろう。』
青藍に冷たく言われて二人は黙り込む。


『それすらわからない者たちに力を貸すほど僕は暇じゃない。君たちのような者に貸す邸の部屋もない。すぐに朽木家から君たちの荷物が運び出されるだろう。』
「何よそれ。横暴よ。」
「雪乃様は良く朽木家にいらっしゃっているのに。」
その言葉に青藍の雰囲気がさらに冷ややかなものになる。


『朽木家には雪乃の部屋がある。それがどういうことか、解らない?雪乃は、それだけ朽木家から信頼されているということだよ。そして、それを決めたのは朽木家当主たる僕の父上だ。父上は、そう簡単に部屋を与えたりしない。朽木家の部屋がどれほど余っていようと、自由に出入りしていいなどと許可を出すことはない。それをするに足る信頼がなければ。・・・君たちにそれだけの力があるのかい?今の君たちに出来るのは笛を吹くことぐらいだ。でも今、それは役に立つのかい?君たちよりも笛の上手な者が居るのに。』


そんな青藍の言葉に、二人は腹を立てたようだった。
ガタリと音を立てて立ち上がると、実花は青藍に詰め寄った。


「・・・貴方に、何が分かるっていうのよ。朽木家に生まれて、死神の才がある貴方に何が分かるのよ。私も梨花姉さまも、死ぬほど笛を吹いているの。それでも、才能には限界がある。弥彦様のように霊王のお心を掴むことなど、到底できないわよ。それでも、それでも毎日、ずっと笛の稽古をしてきたの。」


『それが何だ。そんなこと、誰だってやっている。僕だって、ただ朽木家に生まれてのうのうと次期当主になったわけじゃない。死神としての力だって、簡単に手に入れたわけじゃない。才能があるだけでは三席など務まらない。少なくとも、六番隊の隊士たちは、僕が朽木家の者だからという理由だけで、僕を三席と認めたりはしない。』

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