色彩
■ 6.我慢の限界

『・・・君たち、いい加減にしてくれないかな。』
青藍がそんなことを言い放ったのは、それからさらに三日後。
青藍が十三番隊に行った折のことである。
梨花と実花は相変わらず深冬にべったりで青藍との時間を奪っている。


その上、本来の目的である当主をどちらにするか、という慶一からの挑戦に、彼女らが何か行動しているようには見えないのだ。
さらに、どうやら深冬が仕事をしている間もずっと十三番隊に入り浸っているらしい。


これでは深冬だけでなくその他の隊士たちにも迷惑である。
しかし、本人たちはそれに構わず、青藍の力を借りようと深冬に張り付くばかり。
その様子に、いい加減青藍も我慢の限界に達したのだった。


「あら、青藍様ったらやっと折れる気になったの?」
『まさか。君たちに付き合いきれないという話だよ。』
言って青藍はため息を吐く。
「本当に?深冬様を私たちに取られて随分悔しそうだったけれど。」


『それはまた別の問題だ。君たちは今、どちらが次期当主になるか、決められているのだろう?本当に当主になる気があるのなら、もう少し違う方法で僕を動かしなさい。』
青藍は珍しく無表情で言い放つ。
それを見た十三番隊の隊士たちは我関せずと、青藍たちから目を逸らした。
深冬もまた、何やらお怒りの様子の青藍に、触らぬ神に祟りなし、と、傍観を決め込んだ。


『深冬を使って僕を動かすことが出来ると思ったら大間違いだ。そもそも僕は周防家の次期当主が誰になろうとどうでもいい。誰が当主になっても僕がやるべきことは変わらないのだから。』
「では、蓮様が次期当主にされてもいいと?」
梨花は無表情の青藍に臆することなくそう投げかける。


『それはないね。君たちだって知っているはずだよ。蓮の両親がどうやって結ばれたのか。蓮はあのお二人の子どもだ。大切なものを守るためならば、何だってするだろう。蓮は君たちが思う以上に手強い。それに・・・。』
「それに?」
『蓮にそんなことをさせれば、僕は周防家の敵になるよ。蓮を周防家から守るために力を貸す。』


「では、私たちにも手を貸してくださってもいいのでは?それなのに、青藍様は何一つ動いてくださらないわ。」
実花は不満げに言う。
『それは覚悟の差だよ。君たちは僕の傍にいるということがどういうことか全くわかっていない。僕は、朽木家次期当主というだけではないんだ。』


「そんなこと、解っているわよ。咲夜様は漣家の巫女ですもの。漣家がどういう家か、周防家に生まれた私たちがそれを知らないはずはないわ。」
「そして青藍様はその血を受け継ぐ者。そして咲夜様を守るべき立場にある。・・・漣家のためにも。青藍様は嫌でも漣家を守らなくてはならない。」
梨花も実花もそれぞれに言う。


『それも理由の一つではあるが、僕の言う覚悟とは、僕の傍に居る覚悟だ。僕には大きな責任がある。その責任を一緒に背負うことが出来るのか、という覚悟だよ。君たちはただ僕を利用しようとしているだけで、その覚悟がない。そんな相手に僕が力を貸すはずがない。』
青藍は静かに言う。


『蓮にはその覚悟がある。僕の背負うものがどういうものなのか、それがどれほど大きく、責任があるのか、蓮は全て知っている。全てを知った上で、僕に力を貸してくれると言った。僕の重荷を軽くするために僕の傍に居ると決めてくれた。だから僕は、蓮に力を貸すんだよ。』


「じゃあ、私もそれを背負って見せるわ。だから、私にも全て教えてくれるかしら。」
実花は高飛車に言う。
「そうね。私も聞きたいわ。」
その態度を見て、青藍は冷ややかな視線を向ける。

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