■ 瞳
「長い一日だったな・・・。」
「そうだな・・・。」
月明かりに照らされた縁側に寄り添うように座り込んで、二人は一息吐いた。
客人の対応だけでもてんてこ舞いな上に、深冬の警護やら何やらで一日ずっと気を張り詰めていたのだった。
特に何事もなく終えた安堵感が二人の間に漂う。
暫く沈黙してから、ふ、と咲夜が笑った気配がして、白哉はそちらを見た。
それに気付いた咲夜はちらりと白哉を見て、空を見上げる。
「どうした?」
「・・・白哉と青藍は、親子だなぁ、と思って。」
「何を今さら当たり前のことを・・・。」
呆れたように言われて、咲夜は笑う。
「そうなんだけどな。青藍は私に似ているだろう?だから、白哉に似ているなぁ、と思うことは少ない。でも、今日の青藍を見たとき、一瞬、白哉かと思った。」
「どういうことだ?」
「白哉と青藍が重なって見えたのだ。それで、何故そう思ったのか、考えていた。」
そこまで言って、咲夜は白哉を見つめる。
視線が交わって、その瞳が緩む。
「その瞳だ。」
「瞳?」
「あぁ。青藍が深冬を見つめ、深冬について語る時の瞳が、白哉が私に向けるその瞳と同じなんだ。その瞳が、白哉と重なった。」
そう言って見つめてくる咲夜の瞳を、白哉は見つめ返す。
その瞳は、愛しげで、柔らかくて、優しくて、嬉しげで。
咲夜と青藍の顔が重なって見えて、こういうことか、と納得する。
同じなのだ。
私も、咲夜も、青藍も。
白哉は内心で呟く。
「・・・そなたも、同じ瞳をしている。」
「ふは。当たり前だ。私は、ずっと君に恋をしているのだから。」
当然のように言って微笑む咲夜は、見惚れるほどに美しい。
「・・・あまり、可愛いことを言うな。」
見惚れたことを隠すように目を逸らせば、楽しげな笑い声が返ってきた。
「白哉も同じ瞳をしているのだからいいじゃないか。」
「・・・何か悪いか。」
「いや?君がどんな瞳をしていても、私の一番は白哉だからな。」
「・・・もし私が、そなたに冷たい瞳を向けてもか?」
「あはは。その仮定に意味はないな。」
だって、そんな瞳を私に向けることなど出来ないだろう?
楽しげな瞳が、そう問うている。
敵わぬ、と内心で苦笑した。
「確かにそうだ。」
「まぁでも、もし、そんな瞳を向けられても、私の一番は変わらないと思う。想像するのも嫌なくらい、悲しくて、苦しくて、涙が出てくるだろうけれど。」
「そうか。」
「うん。」
凭れ掛かってきた咲夜に腕を回して、抱き寄せる。
伝わる温もりが、心地よい。
見上げた空は満点の星空で、一つ一つの光が美しい。
世界とは美しいものだな、と素直にそう思った。
だが、そう思うことが出来るのは、隣に彼女が居るからで。
共にいる年月が長くても、子が出来ても、愛しさは変わらず。
ずっと、恋をしている。
・・・これでは、子どもたちに呆れられるのも仕方がないな。
そう思って、でもそれは幸せなことで、思わず笑ってしまうのだった。
2016.09.18
お茶会後の二人のいちゃいちゃが見たいとのリクエストがあったので。
咲夜さんに見惚れてしまう白哉さん。
あまりいちゃいちゃ感はありませんかね・・・?
期待に添えなかったらすみません。
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