色彩
■ 47.二人の幸せ

『あれだけやられても懲りないとか、春水殿も大概だよね。』
「あはは。まぁ、それを楽しんでいる節もあるよね。晴も遊ばれているようで腹立たしいっていつも言っているよ・・・。」
青藍と蓮はそう言って苦笑する。


『まぁ、深冬。こっちにおいでよ。』
「青藍、起きていていいのか?」
『うん。もう随分いいよ。』
青藍はそう言って微笑む。
「そうか。」
それを見て安心したように深冬も微笑んだ。


「・・・どうやら僕はお邪魔虫のようだから、外に居るよ。」
そんな二人を見て、蓮は部屋から出ていく。
それを見て苦笑すると、青藍は深冬に向かって腕を広げる。


『おいで、深冬。』
青藍が言うと、深冬はその腕の中にすっぽりと収まった。
深冬もまた青藍の背中に腕を回す。
『本当は、目が覚めてから、ずっとこうしたかったんだ。』
言いながら青藍は深冬にすり寄る。


『心配かけて、ごめんね。』
「・・・それは、もういい。今、こうしていられるだけで、いいのだ。」
『そっか。ありがとう。・・・大好き。』
「・・・私もだ。青藍が、大好きだ。・・・死ななくて、良かった。それから、また、助けられた。ありがとう。」
深冬もまた青藍にすり寄った。


『うん。・・・でも、この先も、きっとこういうことがある。それで君に心配をかけるだろう。僕だって、君を心配するだろう。僕も君も死神だから。』
「あぁ。」


『あの時、君が見えて、考える前に体が動いたんだ。多分、この先、ああいうことがあれば、何度でも、僕は同じことをするだろう。君が強いとか弱いとか関係なく、僕は君を助けるためにこの体を使うだろう。君を失うのは、怖いから。』
青藍は小さく呟く。


「私も、怖かった・・・。」
『うん。でも、僕が傷つくのが嫌だからといって、僕から離れたりしないでね。それだけは、約束してね。僕は、君が離れるのも嫌だ。』
青藍は子どもの様に言う。


「約束する。私は、青藍のそばに居ると決めたのだ。青藍と共に歩むと決めたのは、私だ。苦しい道だと知った上で、そばに居ると決めた。だから、離れたりしない。」
『うん。』


「それに、私が青藍にそばに居て欲しいのだ。青藍こそ、私を離すな。苦しむ私を見て、苦しくなっても、自分から離したりしないでくれ。そんなの、私は嫌だ。」
縋るように、深冬は青藍を抱きしめる。
『うん。約束する。僕は、君のそばに居る。』


「じゃあ、それだけで、私は、幸せだ・・・。」
『深冬・・・。』
深冬の言葉に、青藍は目を丸くする。
「私は、それだけでいい。それだけで、青藍を引き受ける。」


『うん。僕もそれだけでいい。それだけで僕は幸せになる。辛くても苦しくても、その幸せがあれば何だって出来る。』
青藍は深冬をきつく抱きしめる。


「だから、青藍は私を守ってくれていい。それで、青藍が傷つくのなら、また私が看病すればいい。この数日で、そう思った。それが、私の役目だ。戦いの中では、私は弱いが、それでも、そうやって、青藍を守ることが出来る。私がそばに居るだけで、青藍が強くなれるのならば、ずっと、そばに居る。青藍を信じて。それが、私の青藍の守り方だ。」


『・・・ふふ。ありがとう。それはとっても心強い。・・・深冬。』
青藍はそう名を呼んで腕を緩めると、深冬の頬に手を添える。
深冬はそんな青藍を見つめた。
『僕は、一生をかけて、君を愛するよ。』
「うん。私も。」
二人はそう言って微笑みあう。


『約束?』
「約束だ。」
『ふふ。深冬、大好き。愛してる。』
「私もだ。私も・・・愛している・・・。」
言いながら深冬の顔が赤くなる。


『真っ赤。』
青藍は楽しげにその頬を突いた。
「うるさいぞ・・・。」
そう言ってそっぽを向いた深冬の頬に、青藍は唇を落とす。


「な!?」
それに驚いたように、深冬は青藍を見た。
『ふふ。こっちみた。・・・もーらった。』
青藍は悪戯にそういうと今度は深冬の唇に自分のそれを落とした。
「む!?」


『・・・ふは。あーもう、可愛い。可愛いけど、このままは危ないから、僕はお昼寝することにする。』
真っ赤な深冬を楽しげに見つめて、青藍はそんなことを言い出す。
『もちろん、深冬も一緒にね。・・・いいでしょ?』
「・・・あぁ。」
小首を傾げた青藍に深冬は恥ずかしそうに頷く。


「うわ!?」
青藍はそんな深冬をベッドの上に引き上げて抱きしめると、その額に唇を落とした。
そんな青藍に深冬は恨めしげな視線を向ける。
「狡いぞ。」
拗ねたようにそう言った深冬に、青藍はくすくすと笑う。


『ふふ。じゃあ、深冬からしてもいいよ?』
「・・・。」
楽しげにそういう青藍に深冬は不満げな視線を向ける。
そして、青藍の頬に手を添えると、自分からその唇に口付けた。
それに青藍は目を丸くする。
唇を離した深冬は、青藍の表情に満足げに微笑む。
しかし次第に恥ずかしくなったのか、青藍の胸に額を寄せて、顔を隠す。


『だ、駄目だよ、そんな可愛いことしちゃ・・・。』
そんなことを言いつつも、青藍は深冬を抱きしめてそのまま横になると、布団を被った。
「・・・青藍、心臓が早い。」
青藍の胸元からくぐもった声が聞こえてくる。
『当たり前でしょ。君と居るんだから。深冬だって、そうじゃないか・・・。』


「・・・ふふふ。一緒だ。」
そんな楽しげな笑い声が聞こえてくる。
『ふふ。そうだね。じゃあ、仕方ないか。』
それを聞いて、青藍もくすくすと笑う。
そうして二人は、次第にとろりとした微睡みに引き込まれていったのだった。



2016.10.02 告白編 完
〜当主編に続く〜
想いを通じ合わせた青藍と深冬。
朽木家当主になる者として、その妻になる者として、それぞれに心を決めています。
次の当主編では、青藍だけでなく、その他のオリキャラたちにも変化があります。
原作キャラの出番は少なくなるかも知れませんが、お付き合い頂ければ幸いです。


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