色彩
■ 46.若者の成長

『十四郎殿・・・。さらっと爆弾を落とすのは止めてください・・・。』
「あ、すまん。そういうつもりじゃなかったんだが。」
浮竹は言いながら苦笑する。
『まぁ、別にいいですけどね・・・。』


「いやいや、何それ、青藍。もっと詳しく!なんでそんなに面白いこと僕に黙っているの!」
「そうだよ、青藍。僕ら、ずっともやもやしていたのに。いつくっつくのか賭けていたのに!!!あぁ、もうくっついちゃったのか・・・。僕、賭けに負けちゃったじゃない。」


「ははは。お前ら、本音が出ているぞ。」
『二人とも酷いなぁ。まぁ、あれです。名実ともに深冬は僕の婚約者となりました。』
「そうか。おめでとう。」
浮竹は嬉しそうに微笑む。


『ありがとうございます。それで、もう一つ、ご報告が。』
「何だ?」
『・・・来春、僕は朽木家を引き継ぎます。』
「「「・・・・・・。」」」


『え、無反応ですか?』
沈黙した三人に青藍は目を瞬かせる。
「・・・いや、吃驚しただけだ。」
「うん・・・。決めたんだね・・・。」
「そっか・・・。」


『はい。ずっと、父上をお待たせしていましたから。父上も母上も僕が逃げてもいいように、ずっと、待っていてくれました。でも、僕は、逃げません。』
真っ直ぐにそう言った青藍に、浮竹と京楽は思わず泣きそうになる。
蓮もまた複雑な表情をした。


「そうか・・・。そうかぁ・・・。」
大きく息を吐きながら、浮竹はいう。
『はい。きっと、皆は、僕を思って、逃げて欲しいと思っているのでしょう。でも、そういう皆が居るから、僕は、こういう決断が出来るのです。これからも、頼りにしていますよ、十四郎殿、春水殿、蓮。』
青藍はそう言って微笑む。
「・・・うん。僕、大したことは出来ないけど、青藍の力になるからね。」
『うん。ありがとう、蓮。』


「浮竹、僕、泣きそう。」
「俺もだ。」
二人は泣きそうに言う。
「・・・はぁ。これだから、若者は恐ろしい。」
「そうだなぁ。さっきは子どもかと思えば、今はこんなに大人だ。」


「これが、咲ちゃんの子かぁ。」
京楽はしみじみといった。
「あぁ。俺は何だか幸せだよ、京楽。」
「僕も。」
「こんなに大きくなったんだなぁ。」
「何だか僕ら、置き去りにされた気分だねぇ。」
「はは。確かにそうだ。」


『ふふ。お二人とも、何を言っているのですか。僕はこれからもお二人を頼りにしていると言ったはずです。ちゃんとついて来てもらわないと困ります。』
青藍はそう言って笑う。
『引きずってでも連れて行きますからね。』
「ははは。年寄りには辛いな。」
「そうだねぇ。」


『それに、母上を救ってくれた人たちです。置き去りになんかしませんよ。あの父上だってお二人には感謝しているのです。もちろん、僕も橙晴も茶羅も。ルキア姉さまだって。母上何てお二人が居なければ、早々に世界を壊していたでしょうし。』
「ははは。そうか。じゃあ、俺たちもその信頼に応えないとな。」
「そうだね。僕らで良ければいくらでも力になるよ。」
『はい。よろしくお願いします。』


「青ら・・・ん?」
そんな話をしていると、深冬がひょっこりと顔を出した。
『深冬。』
呼ばれて深冬は病室に入ってくる。
「浮竹隊長?先ほどルキアさんがお探しになっていました。隊長の署名が必要な書類があるそうです。」


「あぁ、そうか。じゃあ、俺は戻ろう。」
浮竹はそう言うと立ち上がる。
「またな、青藍。」
『えぇ。お見舞い、ありがとうございました。』
そう言った青藍に微笑んで浮竹は部屋を出ていく。


「それから、伊勢副隊長が京楽隊長を探しに来られました。」
浮竹を見送って深冬は京楽に向き直る。
「え、ほんと?じゃ、僕もそろそろお暇しようかな・・・。」
京楽がそう言って立ちあがろうとした時、何処からか分厚い本が飛んでくる。
「いだ!?」
それは見事に京楽の頭に的中した。


『うーん・・・。この本は・・・。』
それを見て青藍は苦笑する。
「伊勢副隊長の本だな・・・?」
まじまじと落ちた本を見て、深冬は青藍に問う。
『あはは。そうだね。』


「・・・京楽隊長。」
そうこうしているうちに、そんな冷ややかな声が室内に響く。
「あ、あは、七緒ちゃん・・・。」
その声の主に京楽は顔を引き攣らせる。


「隊長、今すぐに執務にお戻りください。昨日の仕事がまだ残っています。昨日の!!」
七緒はそう言いながらあっという間に京楽をグルグル巻きにする。
「あはは・・・。」
『春水殿も相変わらずですねぇ。』


「青藍君。騒がせてごめんなさいね。お大事に。」
『いえ。お仕事お疲れ様です、七緒さん。』
「では、私はこれで。・・・ほら、行きますよ、隊長。」
そう言って七緒は本を拾い上げると、京楽を引きずって行ったのだった。

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