色彩
■ 45.見舞いの品

「・・・はい。みなさん、出来ましたよ。」
『「「おぉ!!」」』
剥かれたりんごを見て、三人は感嘆の声を上げる。
お皿の上にウサギが数匹。
ついでにペンギンも数匹。


『なにこれ!ペンギンも居る!!蓮ってば天才!』
それを見て青藍は瞳を輝かせた。
「はいはい。どうぞ召し上がれ。」
『やった!いただきまーす。』
青藍は嬉しそうにりんごを食べ始める。


「青藍、本当に子どもみたいだな・・・。」
「あはは。いいんじゃない?まだまだ子供ってことで。」
「ふふ。そうですねぇ。こんな青藍を知っている人は少ないのでしょうね。」
「そうだろうなぁ。」
「なんだか、昔に戻ったみたいだねぇ。」
三人はそれを微笑ましく見つめる。


『・・・ん?皆食べないんですか?』
それに気が付いて青藍は首を傾げる。
「ははは。じゃあ、俺も貰おう。」
「僕も。」
「では、僕も頂きます。」
笑いながらりんごに手を伸ばす。


『そう言えば、お二人ともよくここまで入ってこられましたね。僕、今、面会謝絶中のはずですが。』
「あはは。雪乃ちゃんが入れてくれたのさ。」
「そうそう。暇しているだろうから相手をしてやってくれってさ。」
「どうせ、この面会謝絶は人避けなんでしょ?」
京楽は楽しげに言う。


『まぁ、そうですね。』
「しかし、それでもこの量か・・・。大変だな・・・。」
浮竹は病室を見回して、苦笑する。
「流石青藍だよねぇ・・・って、痛い!」
京楽の頭に投げ入れられた箱が直撃する。


「なにこれ・・・。」
「青藍へのお見舞いの品ですね。」
「・・・なるほど。ここにあるものはこうやって増えていくのか。」
浮竹は京楽を気の毒そうに見ながら呟く。
『あはは・・・。そういうことです。』


「・・・青藍、これ、明らかに女物の簪だけど、これを入れた人は青藍をどうしたいの?」
勝手に箱を開けた京楽は中身を見て苦笑する。
『うーん・・・。どうやら僕は、男性にも狙われているようなんですよねぇ・・・。』
青藍はげんなりした表情で言う。


「「「・・・え?」」」
それを聞いて三人は唖然とした。
『あはは・・・。どうやら、昔から僕を攫おうとする人が多いのは、この容姿のせいでもあるようで。まぁ、僕がわざと緩く見せているというのもあるのでしょうが。』
青藍は苦笑する。


「それは、つまり・・・。」
「男色?」
『・・・まぁ、そういう方もいらっしゃるようです。母上に似ているので仕方ないのかもしれませんけど。そうだとしても、僕、何処からどう見ても男ですしねぇ・・・。』


「青藍、大変なんだね・・・。」
蓮が気の毒そうに青藍の肩を叩く。
『攫われたら、僕、売られてしまうのかな・・・。』
「・・・まぁ、そうだね。朽木家の次期当主として利用価値があるというのもあるけど、そういう趣味がある人から見れば、青藍はお宝だろうね。」
「ははは・・・。そうだな・・・。」


『だから僕、その辺でお昼寝するのをやめたんです。』
「なるほど。それは危ないな。」
「うん。それは気を付けた方がいいね。」
「とりあえず僕、青藍の警護真面目にやるよ。」
青藍に可哀そうな視線を向けつつ彼らはそんなことを言う。


『あはは・・・。ありがと、蓮。』
「早く退院できるといいな。」
「そうだね。朽木家に居た方が安全だ。」
『えぇ。烈先生の許可が下りれば明日にでも邸に帰ります。これでは四番隊の皆さんにもご迷惑をお掛けしてしまうので。主に雪乃に、ですが。』


「そうなの?」
『僕へのお見舞いが全て雪乃に渡されているそうです。四番隊の物置が一杯になってしまったそうなので家の者に邸へ運んでもらいました。』
「なるほど。あの手この手で青藍にお近づきになりたいわけだ。」


『そのようですねぇ。僕には深冬という婚約者がいるのに・・・。』
青藍はそう言ってため息を吐く。
「深冬も今日は皆に質問攻めにあって大変そうだったなぁ。」
『そうですか・・・。』


「まぁ、ずっとお前に付き添っていたからな。取り乱すことなく、冷静だったぞ。」
「そうだねぇ。あの子、泣くこともしなかった。」
『それは・・・父上が何か言ったようです。お蔭で父上と深冬が仲良くなって大変です。父上ったらちゃっかり深冬を可愛がっているんですよ・・・。』
青藍は面白くなさそうに言う。


「あはは。青藍も橙晴も最大のライバルは朽木隊長かぁ。」
『笑い事じゃありませんよ・・・。』
「ははは。まぁ、いいじゃないか。深冬と何か進展があったんだろう?」
「「えぇ!?」」
浮竹の言葉に京楽と蓮は目を丸くする。

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