色彩
■ 44.巻き添え

「・・・青藍。邪魔するぞ。」
そんな声とともに、阿近が病室に入ってくる。
『阿近さん?どうしたんですか?』
「あー、ちょっとな・・・。お前に謝罪。」
気まずそうに阿近は言う。


『へ?謝罪?』
「・・・あぁ。この間の虚の大量の流入はどうやらうちのせいらしい。」
『・・・え。』
「お前も知っているだろうが、虚圏に、うちの研究所が出来ただろ?」
『えぇ。まぁ、そうですね。』


「その研究所に超高濃度の霊子を作り出す装置がある。その装置が暴走した結果、どうやら、それを嫌がって、虚どもが尸魂界に流れ込んだらしい。で、お前が怪我をしたっていうから、その報告と謝罪に来た。」


『・・・え?じゃあ、僕は、技術開発局の実験の巻き添えを食らった・・・?』
淡々と説明した阿近に、青藍は呆けたように呟く。
蓮もまた、その説明を聞いて唖然としたようだった。
「・・・まぁ、そうなるな。」


『・・・あぁ、そうですか。だから僕のとこに来たんですね。』
「・・・。」
何かに気が付いたように言った青藍に、阿近は黙り込む。
『・・・はぁ。父上にも母上にも言いませんよ。というか、誰にも言いません。そんなことをすれば、瀞霊廷が消し飛びます。』


「悪いな。南雲も黙っていてくれると助かる。」
「あはは・・・。はい。咲夜さんを筆頭に隊長格たちが十二番隊に攻め入ってしまいますからね。言いませんよ。」
「悪いな。その代り、俺がお前の治療をしに来たんだが。」
言って阿近はまじまじと青藍を見る。


「・・・お前、本当に病人か?確か臓器やられたんだよな?出血多量で死にかけじゃないのか?ここへ来る前にお前のカルテ見てきたけど。」
青藍の顔色は一日で随分良くなっている。
まだ本調子ではないが、それでも阿近よりは顔色が良かった。


『あはは。僕には睦月と師走という強い味方が居りまして。』
「・・・なるほど。じゃ、俺は必要なかったな。」
阿近は苦笑する。
『ふふ。ということで、貸し一つ、ですね。』
青藍は楽しげに言う。


「抜け目ないな、お前。・・・解ったよ。」
阿近は諦めたように頷いた。
『流石阿近さん。話が早くて助かります。』
「・・・青藍、それは、どうなの?」
蓮は呆れたように言う。


『ふふ。この件を僕が黙っている代わりに、阿近さんが僕のお願いをひとつ聞く。対等な条件でしょ?』
「・・・やっぱり、青藍は何処までも青藍だよね。」
『ふふ。蓮も阿近さんに貸し一つ、だね。』
「いや、僕はいいよ・・・。阿近さんも苦労しますね・・・。」


「本当に、こいつ、抜け目がねぇんだよ・・・。だから俺がわざわざここに来たってのに・・・。」
阿近はそう言って深いため息を吐く。
『あはは。そういう訳なので、何かあったらお願いしますね、阿近さん。』
「・・・はぁ。はいはい。じゃ、俺は戻る。あ、そのうちまた睦月と師走借りるぞ。」
『はぁい。解りました。』
頷いた青藍を見て、阿近は病室を出ていく。


「やぁ、青藍。」
「何だ。意外と元気そうだな。」
阿近と入れ替わるようにそんな声が聞こえてくる。
『春水殿。十四郎殿。』


「いやぁ、怪我したって聞いて驚いたよ。」
「そうだぞ。漣も朽木も深冬もキリトも心配していたのだから。」
『あはは。ご心配をおかけしました。』
青藍は苦笑する。


「ほら、果物を持ってきてやったぞ。もう食べても平気だと聞いたから。」
浮竹はそう言って果物の詰め合わせを差し出す。
『ふふ。ありがとうございます。・・・ねぇ、蓮。りんご剥いて。』
「まだ食べるの!?さっきたらふくご飯食べていたじゃない・・・。その体のどこに入って行ったの・・・。」
蓮は化け物をみるように青藍を見た。


『デザートは別腹?』
「・・・青藍、本当に化け物じゃないよね?青藍を切り開いたら、違うものが出てきたりしないよね?」
蓮は訝しげに青藍を見る。
『そうじゃないから僕は今ベッドの上なんじゃないか。いいから剥いてよー。』


「はいはい。・・・大体、なんで僕かな。」
『だって、この中で一番包丁が使えそう!ウサギがいいなぁ。』
「青藍時々本当に子どもだよね。」
「「あはは!!」」
呆れたように言った蓮に浮竹と京楽は笑う。


『いいからりんご!』
「はいはい。」
そういうと蓮は器用にナイフを使ってりんごを剥く。
「へぇ。器用だねぇ。」
「そうだなぁ。俺たちではこういう細かい作業は出来ない。」
『お二人ともこういう面は不器用そうですもんね。』
言いながら三人は蓮の手元をじっと見つめる。


「ははは。青藍は包丁を握ったことすらなさそうだが。」
『ある訳ないじゃないですか。それは僕の仕事じゃありません。』
「あはは。威張ることじゃないでしょ。」
『そういう春水殿だってないくせに。』
「僕は一回ぐらいあるさ。すぐに取り上げられたけど。」
そうこうしている間にウサギりんごが出来上がっていく。

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