色彩
■ 43.気持ち悪い

翌日。
「・・・ねぇ、青藍。」
『うん?何、蓮?』
「いい加減、気持ち悪いよ。」


『何が?』
「いや、何がって、青藍の胃袋は一体どうなっているの?」
青藍の目の前に広がっている料理を眺めながら、蓮は怖いものを見ているように言う。
蓮が来てから、青藍はずっと目の前の料理に箸を伸ばしている。
料理がなくなりそうになると、何処からともなく運ばれてくるのだった。


「見ているこっちがお腹いっぱいだよ・・・。」
どう考えてもその体に、それだけの料理が入るとは思えない。
その上、彼は数日前に臓器をやられているのだ。
絶対におかしい。
蓮はそう思いながら、いまだ箸を止めることがない青藍を見つめる。


『そうかなぁ。でも、お腹が空くんだもの。体が栄養を欲しているんだよ。仕方がない。』
青藍はけろりとそう答える。
「いや、まぁ、それはそうだろうけれども。・・・て、いうか、この病室、何でこんなに物が多いの・・・。」


言いながら蓮は病室を見回す。
壁一面が、何やら色取り取りに包まれた箱で埋まっている。
その他、花や、菓子類、謎の宝石、これまた謎の時計等々・・・色々なものが病室に散乱していた。


『なんだろうねぇ。面会謝絶にしたはずなのだけれども。窓やら天井やらから投げ入れられたり降ってきたりするのさ。僕に当たったらどうしてくれるのだか。』
青藍は迷惑そうに言う。
「・・・うん。青藍はそういう奴だったよね。」
そんな青藍を蓮は呆れたように見つめる。


『・・・ふう。ごちそうさまでした。』
それを気にすることなく、青藍はそう言って箸をおく。
「青藍が攫われそうになったから、この部屋の警護も厳しくなっているはずなのだけれど。かくいう僕もそのためにここに居るわけで。」


そう言った時、窓から何かが投げ入れられる。
蓮はそれを反射的に捕えた。
『あはは。ナイスキャッチ。』
「またなんか、宝石っぽいものが来たけど、これ、どうするの?」
『とりあえず邸に持ち帰って、使用人に配る。』


「・・・なるほど。自分で使う気はない訳ね。」
『あはは。何が入っているか、解らないからね。もちろん、検査をしてから使用人に配るけど。怪しいものは送り主に返却するし。』
「あぁ、そうなんだ・・・。こんな送られ方でも、送り主解るんだ・・・。」


『もちろん。朽木家の情報網を見縊らないでよ。』
朽木家の情報網って一体どうなっているのだろうか・・・。
疑問に思いつつも、聞かない方が身のためだと、蓮は苦笑する。


「ま、それはいいとして。青藍、何でそんなに元気なわけ?目が覚めたの、昨日だよね?」
『あはは。そうだよ?でも、目が覚めてから三回ぐらい死にかけたお蔭で、元気になったよね。見てよ、傷がこんなに治っている。』
そう言って青藍は病衣をはだけさせる。


「うわぁ。吃驚するほど治ってる・・・。数日前に貫かれたとは思えない。」
その綺麗な肌の上には痛々しい傷跡があるが、傷は塞がっており、傷口の腫れもない。
あとは抜糸を待つだけという状態だ。


『あはは。睦月と師走による拷問みたいな治療のお蔭だね。』
それを聞いて蓮は納得する。
「なるほど。あの二人の薬はよく効くからね。苦いのと痛いのとで、あんまり四番隊では使われないけど。二人の薬を両方使われて、よく生き延びたね、青藍。」


『うん・・・。僕は死ぬかと思ったよ。皆で僕の体を押さえつけて来るんだ。痛くて涙が出た・・・。もう僕、怪我しない。』
病衣を直しながら、青藍は遠い目をする。
「あはは。そうやって青藍の無茶を治そうという訳だ。」
『笑わないでよ・・・。本当に苦いし、痛かったんだから。』

[ prev / next ]
top
×
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -