色彩
■ 41.治療

「・・・さて、青藍。まずはこれを飲め。」
睦月はそう言って何色ともいえない液体を差し出す。
『これ、飲み物の色、してないよ・・・。』
その色に、青藍は既に血の気のない顔をさらに青くする。


「いいから飲め。これを飲まないと、師走の薬を塗られたとき、痛みで死ぬことになるぞ。」
それを聞いて青藍は軽く悲鳴を上げる。
「さぁ、青藍兄様、口をあけて。」
「そうそう。そのままにしていてくださいね。」


『うあ!?』
茶羅は遠慮なく青藍の口を開けさせた。
「はいはい。兄様、暴れないでください。」
橙晴は、それから逃げようとする青藍の頭を固定する。
「よし。行くぞ青藍。覚悟して飲めよ。」
それを見た睦月は容赦なく青藍の口の中に、その液体を流し込んだのだった。


『・・・・・・に、にが。ね、むつき、舌がへん、だよ。』
ジタバタともがきつつも何とか飲み込んだ青藍は涙目になりがらいう。
「そうか?まぁ、大丈夫だろ。苦くしただけだから。」
『むつき、これ、じぶんで、あじみした?』
「そんなことする必要ないだろ。苦いの解ってんだから。」
睦月は青藍に馬鹿を見るような視線を向けて、言い捨てる。


『ひ、酷い・・・。』
「ちなみに一日三回、きっちりと飲んでもらうからな。」
『それ、ぼく、それだけで死にそう・・・。』
「五月蝿い。いくら言っても無茶するお前が悪い。」
『そんなぁ・・・。』


「さぁ、青藍。こっちも出来たぞ。」
そんな師走の声が聞こえてきて青藍は震える。
「青藍、大人しくしているのだぞ。」
咲夜は青藍の体をがっちりと固定する。


『は、母上・・・。』
「そうですよ、兄様。暴れると傷口が開いてしまいますからね。」
「そうですわ。大人しく、薬を塗られることです。」
橙晴と茶羅もまた、青藍を固定する。


『雪乃・・・。』
涙目になりながら、青藍は雪乃に助けを求める。
「無理ね。貴方のためだもの。さぁ、師走さん。お願いします。」
「はいよ。覚悟しろよ。死ぬほど痛いはずだから。」
そういいながら、師走は遠慮なく傷口に薬を塗りこむ。


『!!!!!』
その痛みに青藍は声も出ない様子である。
もがこうとするも、押さえつけられて動くことも出来ない。
「こら、青藍、暴れるな。」
「そうですわ。」
「・・・よし。これで肩の方は終わった。」
それを聞いた青藍は、ぐったりと力を抜く。


「次は腹だ。気を抜くな。」
そういうや否や、師走は腹部に薬を塗りこみ始める。
『!!!!』
青藍は再び逃げようともがくが、皆に押さえつけられてそれを受け入れるしかなかったのだった。


「・・・ルキアさん。」
それを見ていた深冬は恐る恐る口を開く。
「何だ?」
「朽木家では、怪我をすると、いつもああなのですか?」
言いながら深冬は泣きながら治療を受けている青藍に目をやる。


「・・・まぁ、そうだな。」
深冬の問いにルキアは遠い目をしながら答えた。
「そう、ですか・・・。」
「いや、まぁ、今日のは、特別、ですよね、兄様?」
言われて白哉は青藍をチラリと見やる。


「・・・そうだな。深冬も気を付けることだ。あれは多分、私でも辛い。」
「はい。気を付けます。」
遠い目をする白哉に、深冬は、怪我にだけは気を付けようと、固く誓ったのだった。


・・・死ぬかと思った。
薬を塗り終え、漸く解放された青藍は、ぐったりとする。
何あれ。
あれを一日三回とか、僕、死ねる・・・。
一仕事終えたように、楽しげに茶を啜っている皆を見ながら、青藍は内心で呟く。
恨めしい視線を送っていることに気付いているのかいないのか、一同は楽しげだ。


あー、疲れた。
睦月も師走も後で仕返ししてやる・・・。
そう考えながら、青藍は一つ大きく息を吐く。
すると、満腹感からか、それとも薬のせいなのか、青藍は眠りに誘われる。
内心愚痴りつつも、周りに皆が居ることに安心して、睡魔に襲われるまま、青藍は深い眠りについたのだった。

[ prev / next ]
top
×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -