色彩
■ 40.最大の敵

「青藍。」
「あら、兄様。・・・大丈夫そうね。」
「そうみたいだ。」
「青藍・・・。」
青藍が朽木家から運ばれてきた粥を食べていると、そんな声とともに、白哉、茶羅、橙晴、ルキアが姿を見せる。


『父上。茶羅。橙晴。ルキア姉さまも。』
「もう起きあがって食べているなんて。」
「兄様、本当に化け物なんじゃないですか?」
粥を食べている青藍を見て、茶羅と橙晴は呆れたように言う。


『だって、おなかが空いたんだもの。』
そんな二人に青藍は拗ねたように言う。
「全く、青藍らしいな・・・。」
それを見たルキアは苦笑した。
「・・・まだ、顔が青いな。」
青藍の顔を見つめて白哉が言う。
そういいながらもほっとしたような表情なのだが。


『流石に血を流しすぎました。』
「そうだな。今はよく休め。」
『はい。』
「それから、あまり深冬に心配をかけるな。見ているこっちまで心配になる。」
白哉は苦笑しつつ言う。
『あはは。はい。気を付けます。』


「深冬もよく堪えたな。青藍の父として、礼を言おう。」
そう言って白哉は深冬に笑みを向ける。
「いえ。それは、白哉様が私のやるべきことを示してくださったからです。自分のやるべきことが分かった気がします。」
真っ直ぐそう言った深冬に白哉は眩しそうに目を細めて、満足げな顔をする。
「そうか。ならばよい。」


『・・・なんか、父上と深冬、仲良くなっていませんか?』
青藍はそれを見て不満げに呟く。
「あはは!そのようだな。」
「兄様、油断していると、深冬を父上に取られてしまいますよ。」
『えぇ・・・。父上が敵になるのは嫌だなぁ・・・。』
からかうように言われて、青藍は情けない声を出す。


「駄目だぞ、深冬。白哉は私のものだ。」
咲夜は言いながら白哉に抱き着く。
『そうそう。それで、深冬は僕のものです。』
青藍はそう言って深冬を抱き寄せる。
「うわ!?青藍!?」


「・・・そなたら、何を張り合っておるのだ。」
呆れたように言いつつも、白哉は咲夜に腕を回す。
「そういう父上だって、張り合っていますよ。ちゃっかり母上のこと抱きしめているじゃないですか。」
「いつまでたっても母上が一番なのだから、仕方ないわ。」


『それなのに、深冬も雪乃も手に入れようなんて、父上は狡いです。』
「手に入れるのはそなたらであろう・・・。まぁ、そなたらが手に入れずとも私の手の中も同然だが。」
『「だから父上は狡いんです!」』


「あはは!!!なるほどな。そういうことか。だから雪乃まで朽木家から離れられないわけだな?」
咲夜は楽しげに言う。
「さぁな。」


「青藍はともかく、橙晴は大変だな。」
「橙晴の最大の敵は、白哉兄様という訳か。」
『ふふ。その通りです。』
「橙晴も苦労するわね。」
「・・・父上、僕で遊んでいるのですね。別にいいですよ。それでも雪乃を手に入れてやります。」
楽しげな白哉を睨みつつ、橙晴はそんなことを言う。
そんな橙晴に、皆が笑ったのだった。


『・・・ねぇ、雪乃。』
「何かしら?」
『睦月も師走も僕を死なせたいのかな・・・。』
「あら、あの二人の腕を信用していない貴方じゃないでしょ?」
『それは、そうだけど・・・。というか、雪乃もちゃっかり僕の病衣をはだけさせるのやめない?他の皆も僕の体を押さえつけるのは止めて欲しいなぁ、と思うのだけれど。』


食事を終えた青藍は、楽しげに薬を作る睦月と師走に顔色を悪くする。
睦月が作っているのは飲み薬であり、師走が作っているのは傷口に塗りこむための塗り薬である。
・・・僕、これから拷問でも受ける気分だ。
この後に何が起こるか予想した青藍は、内心で震える。
ちなみに、白哉と深冬とルキアは青藍を気の毒そうにチラ見しつつも、三人でのんびりと茶を啜っているのだった。

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