色彩
■ 36.赤と白と金色

『深冬!!!!』
そんな声が聞こえた刹那。
深冬の瞳は血しぶきを捉える。
目の前には金色の髪。
白い装束。
その左肩と左脇腹から、虚の爪が突き出ている。


「せい、らん・・・なのか?」
『深、冬・・・無事?』
そう言って振り向いた顔は、瞳の色は違えど、間違いなく青藍である。
「青藍!!!」
流れ出る血が青藍の装束を赤く染めていく。


『大丈夫だから、僕から、離れないでね。』
そう言って青藍は虚に向き直る。
『降れ、雷雨!!!!』
青藍の声とともに、文字通り雷の雨が一帯に降り注ぐ。
周りに居た虚、大虚、問わずにその雷に引き裂かれていく。


青藍を貫いていた虚もまた、その雷に打たれて、昇華されていった。
それによって動けるようになった青藍は、雷から守るように、深冬を装束の中に引きこむ。
死覇装が酷く濡れていることに気が付いて、深冬は小さく震える。


血が、こんなに・・・。
早く止血をしないと。
そう思って深冬は青藍の脇腹を押さえる。
青藍は小さく呻き声をあげるが、そのまま虚に攻撃を続けた。


「青藍!!それ以上は無茶だ!!!」
深冬は泣きそうになりながら、青藍に叫ぶ。
『大丈夫、もう少しで、応援が、来るはずだから・・・。』
「でも!!!」


『それまで、持たせなければ、ならないんだ。そうでないと、あの穴から、また虚が出てきてしまう・・・。そうしたら、みんなが・・・。』
そういう青藍の顔色がどんどん悪くなっていく。
「青藍!!」


『隊長たちが、こっちに来ている。あと、少し・・・。』
青藍は言いながら深冬の方へと傾いてくる。
「誰か!!!早く来てくれ!!!」
青藍を支えながら、深冬はそんな叫びをあげたのだった。


「破道の三十三、蒼火墜!!!・・・青藍!!!深冬!!!」
その叫びに応えるように、咲夜が姿を現す。
「咲夜様!青藍が!!私を、庇って・・・。」
涙を流しながら、深冬は青藍を支える。


「青藍。応援が来た。もう休め。」
『はは、うえ・・・。』
その言葉を聞いて、青藍は力が抜けたように倒れる。
卍解が解けて、いつもの青藍の色彩が戻ってきた。
「青藍!!!」


「白刃!!すぐに青藍を治療する!!手伝え!!黒刃は隊長たちの手伝いをしろ。」
咲夜に呼ばれて白刃がすぐにやってくる。
「白刃、すぐに浄気結界を張れ。」
「はい。」


「咲夜様。青藍は・・・。」
「深冬。大丈夫だ。死なせはしない。そのために私が来たのだからな。さぁ、青藍を寝かせるぞ。手伝ってくれ。」
咲夜に言われて、深冬はしゃくりあげながら、咲夜が用意した担架の上に青藍を寝かせる。


「腹部の出血が多いな・・・。このままではまずい。止血のため、すぐに傷口の縫合を開始する。白刃は青藍の霊圧を回復してやれ。」
「お任せを。」
「青藍・・・。」
深冬は青藍の名を呼びながら、治療されていく彼の手を握る。


「咲夜。」
十数分後、白哉が姿を現した。
「白哉か。」
「あぁ。こちらは片付いた。あとは既に出てきている虚の始末だけだ。」
「そうか。こちらも、何とかなりそうだ。烈さんは?」
「卯ノ花隊長は総合救護詰所にて待機している。連絡を入れた故、青藍を連れていけばすぐに手当てが出来るよう、準備がされている。」


「よし。これでいい。後は、連れて帰るしかないな。」
咲夜はそう言って一息つく。
「他に怪我人は?」
「重傷者は睦月と師走が手当てをしてくれている。他は救護班を待ってからでも大丈夫だそうだ。」


「そうか。・・・はぁ。全く青藍も無茶をする。霊妃も人が悪い・・・。どこへでも助けに行くと言いながら、青藍が呼ばねば来ないのか。霊妃の尺度は解らんな・・・。」
咲夜はそう言って青藍の頭を撫でる。
「だが、よく持ちこたえた。これだけの被害で済んだのは青藍のお蔭だ。」


「咲夜様・・・。」
「深冬。もう大丈夫だ。君もよく頑張った。だから、君はここに残って、君のやるべき仕事をするのだぞ。」
咲夜に言われて、深冬は涙を拭いながら頷く。


「よし。では、青藍は私が連れて帰る。白刃、行くぞ。」
「はい。」
「白哉、深冬を頼む。」
「あぁ。」

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