色彩
■ 34.割れた空

『・・・まぁ、そういうことになりましたよ。数日前に。』
「・・・は?」
青藍の言葉に、恋次は目を丸くする。
「え・・・。嘘だろ!?じゃあ、なんでお前婚約とかしてんだよ!?つか、あれで付き合ってなかっただと!?そっちにも吃驚だわ。」


『・・・それは、まぁ、あれですよ。色々とあったんです。僕だって色々とアレだったんです。仕方ないじゃないですか。』
驚きを隠せない様子の恋次に、青藍はいじけたように言う。
「だ、ってお前、婚約したときには彼奴のこと好きだっただろ!?」
『う・・・。何故バレているのか・・・。』


「そんなん見てりゃ解んだろ。じゃあ、お前、勝手に婚約したわけ?」
『・・・まぁ、そうなりますね。それだけが理由で婚約したわけではないというのも事実ですけど。・・・・・・だって、欲しかったんですもん。』
「お前・・・。」
青藍の呟きに、恋次は怖いものを見たような顔をする。


『・・・みなまで言わないでください。自覚はありますから。』
「・・・その強引さは、隊長に似たよな。咲夜さんなんて、付き合った次の日に婚約が発表されてんだから。」
『まぁ、そうですね。橙晴だって似たようなものですけど。』
「あぁ、彼奴、最近隠さなくなったよな・・・。雪乃の奴も可哀そうに・・・。」
恋次は気の毒そうに言う。


「あそこもまだ進展なしなのか?」
『そうみたいですね。ま、雪乃の覚悟待ちって所ですけど。朽木家の者になるのはそれなりに覚悟が必要ですからね。それに、橙晴が色々と隠さないので、それに戸惑っても居るのでしょう。まぁ、雪乃は違う所で既に僕と父上に捕まっているわけですが。』


「え、隊長まで彼奴になんかしてんのか?お前は友人として捕まえているが。」
『何かした、というか、父上は雪乃を僕の友人として認めているので。いつでも朽木家に来いと、近く、邸に雪乃の部屋が出来ます。』
「なるほどな・・・。彼奴はもう、朽木家から離れられないってわけか。」


『はい。橙晴とどうなろうと、雪乃は朽木家の一員となるでしょう。ま、父上は雪乃の義父になる気があるようですが。』
「!?」
軽く言った青藍に恋次は再び目を丸くする。


「え、まじで・・・?」
『えぇ。この間、雪乃に直接聞いていましたし。楽しそうに笑っているものだから、雪乃はたじたじでした。朽木家で一番狡いのは父上です。橙晴も遊ばれて可哀そうに。』
言いながらも青藍は楽しげである。


「・・・まじか。あの隊長が。」
唖然としたように恋次は呟く。
『ふふ。僕もあれには驚きましたけど。父上には、まだまだ敵わないなぁ。』
「まぁ、それは俺もだ。」


『あはは。お互いに超えられるといいですねぇ。』
「そうだな・・・。まだまだあの背中は遠いが。」
『はい。・・・でも、僕は超えて見せます。とりあえず、僕は来春当主となることが決まったので、父上をこき使ってやろうと思います。』
青藍は悪戯に笑う。


「あぁ、決まったのか。まぁ、あの隊長が簡単にこき使われるとは思えねぇけど。」
『ふふ。それが出来るようになったら一人前ということでしょう。』
「なるほど。俺も、精進しなくちゃなぁ。」


『ところで、恋次さん。』
「あ?何だ?」
『さっきから、空が歪み始めているのですが。』
青藍は世間話でもするように言う。


「へぇ、そうか・・・はぁ!?」
聞き流しかけた恋次はそんな声をあげて空を見上げる。
『あれは・・・なんかこう、何か起こる気配が、しませんか・・・?』
「いや、お前、気付いてたなら早く言えよ!!!」
『いやぁ、だって、さっき気付いたもので。』


「それで何でそんな冷静だよ!?」
『あはは。焦っても仕方ないじゃないですか。僕はルキア姉さまたちの所に行きます。気が付いていない様子なので。恋次さんは歪みの方へ向かってください。』
青藍の言葉に二人は斬魄刀を片手にすぐにそちらへと向かう。


『ルキア姉さま!虎徹三席!空を見てください!』
「青藍?空・・・。」
突然現れた青藍に驚きながらも、ルキアは空に視線を移す。
「な、なんだあれは!?」
「空が・・・歪んでいる・・・。」


『あれは、何かが、出てくる気がしません・・・?』
「あ、あぁ。何か、嫌な予感がするな・・・。」
みるみる歪んでいく空に、一同は息を呑む。
そして、ついに、空が割れたのだった。

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