色彩
■ 33.合同演習

数日後。
今日は六番隊、十三番隊の合同演習である。
流魂街のはずれにおいて、偽虚を使って各班の動きを確認するというものである。
班は隊に関係なくくじ引きで無作為に決定されている。


いつもと違う面子での演習によって、緊急時、隊が入り乱れた場合でもその場にいる隊士たちで連携できるようにするという目的だ。
また、各隊の交流のため、という理由もある。


引率は六番隊からは恋次と青藍、十三番隊からは清音とルキアである。
隊士たちの中には、キリトと深冬の姿もあった。
ちなみに咲夜はルキアたちの通常業務を請け負ったために、隊舎に残っている。


『・・・恋次さーん。』
演習を観察しながら、青藍は詰まらなさそうに恋次の名を呼ぶ。
「何だ?」
『どうして僕らは観察なんですかー。僕だってあそこに入りたいです。』
青藍は不満げだ。


「仕方ねぇだろ。俺たちは席官なんだからよ。隊士がどういう動きをするのか知って、隊士の動かし方を考える。指揮をする俺たちの仕事はそれだ。」
『それは解っていますけどね・・・。』
拗ねたように青藍は言う。


『せめて、ルキア姉さまたちみたいに、下で指揮を執りたかった・・・。』
「籤なんだから仕方ねぇだろ。俺だってそっちの方が良かったつーの。俺はこういう作業が嫌いなんだよ・・・。」
恋次は面倒臭そうに答える。


「・・・大体、お前が気に入らないのは、深冬が笑っているからだろ。彼奴、最近お前以外の奴にも笑うもんな。」
図星を突かれて青藍は唇を尖らす。
『だって、僕の前でしか笑わなかったのに。』
言いながら青藍は深冬をちらりと見る。
順番待ちをしている間、同じ班の者たちと談笑しているのだ。
時折笑みを零しているようだった。


『・・・あんなに可愛く笑ったら、敵が増えちゃうじゃないですか。』
演習中の班に目線を戻しながら、青藍は呟く。
「お前、意外と余裕ないのな・・・。」
恋次は意外そうにそう返す。
目線は隊士たちに向けたままなのだが。


『深冬に関して余裕があったことなんてありませんよ。』
「へぇ。いつも余裕な顔して彼奴が告白されに行く姿を見送っている奴が?」
恋次はチラリと青藍を見る。
『五月蝿いですね。そうでもしていないと、格好がつかないじゃないですか。僕、婚約者ですよ?それなのに、不安な顔をしていたら、余裕がないと言っているも同然なのですから。』


「何だ。要するに格好つけたいだけか。」
『仕方ないでしょう。余裕のない狭量な男だと思われるのは心外です。』
「今そうやって愚痴ってるだけで、それ、俺にバレてんぞ。男としてその気持ちも解らなくはないが。」


『恋次さんにばれたところで構いませんよ。今更じゃないですか。恋次さんは僕が優しくないことも容赦がないことも、知っているでしょう。もちろん、周りが思うほど、僕が大人じゃないことだって。』
「ま、そうだな。お前の成長を見ているからな。」


『だからいいんです。・・・はぁ。』
青藍は深いため息を吐く。
「お前・・・。隣でそんな辛気臭いため息つくなよ・・・。」
そんな青藍に恋次は呆れたように言う。


『だって、深冬、可愛いじゃないですか。恋次さんだってそう思うでしょ?』
「そうだな。」
『ですよねぇ・・・。最近特に可愛いんですよ。』
「何だ、惚気か。」
『えぇ。否定はしません。だって、可愛いですもん。』
「いや、そこは否定しようぜ・・・。つか、お前ら付き合ってんだろ?じゃあ、余裕持てよ。」

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