色彩
■ 32.好きな子ほど

「あらら。雪乃まで泣いちゃって。可愛いなぁ。」
「・・・五月蝿いわね。だって、解ったんだもの。青藍が、何故、家族が好きなのか。これじゃ、逃げる気すらなくなるわよ。」
『あれ?それは、僕のこと?それとも、雪乃のこと?』
ルキアを宥めながら青藍は楽しげに聞く。


「そ、れは・・・青藍のことに決まっているじゃない。」
雪乃はそっぽを向きながら答える。
「ふぅん?」
そんな雪乃を橙晴は楽しげに見つめる。
「な、なによ?」
「何でもないよ?ただ、ちょっと、期待してもいいのかなぁ、と。」
「な!?期待なんかしなくていいわよ!貴方なんか、一生待っていなさい!」


『あはは!!雪乃、それは酷だよ。僕としてはそれでも面白いけれど。』
「そうね。私もそれはそれで面白いと思うわ。橙晴ってば可愛そう。」
「兄様も茶羅も酷いなぁ。」
楽しげな二人に、橙晴は唇を尖らせる。


『まぁ、君たちがどうなろうと、雪乃は朽木家から離れられないようだから、覚悟しておいてね。』
「それは・・・解ったわよ。」
『ふふ。じゃあ、朽木家に雪乃の部屋をすぐに用意しよう。ね、父上?』
「そうだな。」


「何です?二人とも、そうやって隠し事ですか?それとも何かの悪だくみですか?」
二人の共犯者めいた雰囲気に、橙晴は怪訝な目を向ける。
『ふふ。それは秘密です。橙晴も煩悩と戦えばいいと思う。』
「それは、僕への嫌がらせですか・・・。」


『まぁ、そういうことじゃない?雪乃を苛めたら、僕が橙晴を苛めるから覚悟しておくことだよ。』
「うわぁ・・・。えげつないですね、それは。」
『ふふふ。君も僕と同じ苦悩を味わえばいい。・・・と、いう訳だから、雪乃、朽木家に引っ越してきていいからね。』


「な!?」
「ふふ。私は歓迎するぞ。」
「私もだ。」
「雪乃がうちに来るなんて、楽しみだわ。」


「・・・本当に私、朽木家からは逃げられないのね。」
微笑む朽木家の面々を見て、雪乃は諦めたように言う。
「どうやらそのようだから、すぐに僕を選んでくれると嬉しいんだけどなぁ。」
そんな雪乃を横目でチラリと見つつ、橙晴は言う。
「貴方なんか、苦しめばいいのよ。この間苛められたこと、私忘れていないんだから。」


「ほう?橙晴は雪乃を苛めたのか?」
「えぇ。現世でちょっと。」
『あはは。八つ当たりですけどね。』
「何!?それは駄目だぞ、橙晴。」
「僕は苛めてなどいませんよ。」


『僕が止めなかったら、雪乃を泣かしていたくせに。』
「五月蝿いですよ、兄様。」
「全く、我が家は白哉を筆頭にいじめっ子が多くて困る。」
咲夜が呆れたように言う。


「筆頭は咲夜であろう。」
「何!?いつも苛められているのは私の方だ!」
『ふふ。お二人はお互い様ですよね。好きな子ほど苛めるタイプです。』
「「それは咲夜(白哉)の方だ!」」


「その反応が兄様の言葉を肯定していますよ。」
「そうね。父上と母上は似ているわ。正反対に見えるけど、実はそうでもないのよね。」
「そうだな。だが、兄様と姉さまはそれだからいいのだろう。」
「・・・私、この中に入って大丈夫かしら。」
雪乃のそんな呟きは誰の耳にも入ることなく消えていったのだった。

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