色彩
■ 31.成長

「・・・びゃ、びゃくやぁ!!」
涙を溢れさせた咲夜は子どもの様に泣きだして、今度は白哉に抱き着いた。
「そのように泣くな。」
白哉は困ったように微笑み、あやすように抱きしめる。


「う、せいらんが、わたしたちの、こどもが、おおきく、なったのだな。」
「あぁ。」
「つ、つよいこだ。」
「そうだな。」
「わ、わたし、は、こんなに、しあわせで、いいの、だろうか。」


「当たり前だ。そうでなくては私が困る。」
「だ、だって、わたしは、ずっと・・・。」
「あぁ。解っている。ずっと、子どもたちに重荷を背負わせたと、考えていたのだろう?」


「うん。だって、わたしは、漣の、巫女だから。じぶんと、同じ、思いをさせるのは、嫌だった・・・。」
「私も、私が朽木家の当主であるために、子どもたちに色々なものを背負わせてしまうことを考えると、苦しかった。青藍の立場を考えると、逃げて欲しいとすら思った。」
「わたしも、そうおもって、いた・・・。」


「本音を言うと、青藍は逃げると思っていた。」
白哉は言いながら苦笑する。
『本音すぎますよ、父上。』
青藍もまた苦笑する。


「許せ。そなたは咲夜に似ているからな。咲夜のように突然姿を消すのではないかと思っていたのだ。だが、それは間違いだったようだな。」
「あぁ。私たちが、思う以上に、青藍は、大きく、強い。」
「青藍だけではない。橙晴も茶羅も、私たちが思う以上に大きくなっているのだろう。全く、気付かぬうちにこれほど大きくなるとは、子どもとは恐ろしいものだ。」


『ふふ。当然です。僕は父上を超えるのですから。』
「じゃあ、僕らはそんな兄様をこえてやりましょう。ね、茶羅?」
「そうね。私たち二人なら、兄様に勝つぐらい訳ないわ。」
そんなことを言う三人に白哉は笑みを零す。


『父上を超える僕に、僕を超える橙晴と茶羅。これだけ揃っていれば、父上と母上の分を背負うことだって出来るでしょう。もちろん、お二人の子どもとして生まれたことで苦しい思いも、辛い思いもするでしょうが、それだけではありません。ね、二人とも?』


「はい。僕は父上と母上の子どもとして生まれて良かったと思います。苦労することもありますけどね。」
「そうですわ。苦しいことや辛いことばかりじゃないわ。嬉しいこと、楽しいこともある。だから、私たちはそれを乗り越えていけるのです。私たちはお二人の子どもとして生まれたことを誇りに思っているのですから。」


『そうそう。・・・あぁ、もう、ルキア姉さまも何泣いているのですか。』
言いながら、青藍はルキアの頭を撫でる。
ルキアはさらにボロボロと涙を零した。


「だ、だって、私は、こんな、家族に恵まれると、思って、いなかったのだ・・・。血の繋がりの無い私を、これほど、受け入れてもらえるなど・・・。それだけでなく、こんな、成長に立ち会えるなど・・・。」
泣きながら、ルキアは言葉を零す。
『ルキア姉さまは、僕らの大切な姉さまです。血の繋がりなど、関係ありません。ずっとずっと、僕らは家族です。』


「青藍!」
ルキアは感極まったように青藍に抱き着く。
それに驚きつつも、青藍はルキアを抱きしめ返す。
『ふふ。姉さまってば、可愛いですねぇ。』
そういいながら、ルキアを宥めるように彼女の背中を軽くたたく。


『僕は、ルキア姉さまにも感謝しているのですよ。幼い頃から姉さまは僕の傍に居てくれました。父上や母上が居ない時でも、僕は一人ではありませんでした。ルキア姉さまが僕らにどれ程の愛情を注いでくれたか、それが、どんなに幸せなことなのか、僕は解っているつもりです。』
青藍はそう言って微笑む。


『ルキア姉さまが歩んできた道も、決して楽なものではなかったことも知っています。さまざまな苦悩を乗り越えて、それでも凛と前を見ている姉さまが、僕らは誇らしい。父上と母上だって、そう思っています。ルキア姉さまは、僕の自慢の姉さまです。この先何があろうとも、僕らの大好きな姉さまですよ。』
青藍の言葉に、ルキアはさらに泣き出す。

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