色彩
■ 28.男は皆狼

「兄様は何もしていなくても、何か忘れておりません?」
「そうね。この間、何かあったわよね?」
茶羅と雪乃がニヤニヤという。
「何かあったのか?」
ルキアはそんな二人に首を傾げた。
「兄様、この前現世で深冬に唇を奪われていたのですよ?」


『だ、茶羅!?それは・・・。』
「そうそう。それもみんなの前で。」
『うわぁ!雪乃!!もう、やめて。それは本当にやめて。あの時のこと、深冬、酔っていたから覚えていないんだよ・・・。』
青藍は焦ったように言う。
「あら、でも事実じゃない。」
「周りの目があったから、冷静に見せていたけど、内心はそうでもなかったんでしょ?」


『五月蝿いな。そんなの当たり前でしょう。大体あれは、母上のせいなんですからね!?深冬に変なことを吹き込むのは止めてください!』
思い出したのか、青藍の顔が若干赤くなる。
そして、咲夜を睨みつけた。


「私は何もしていないぞ?」
『嘘です!深冬が母上から教えられたと言っていました。そもそも、深冬から僕に抱き着いてくるようになったのも、母上のせいでしょう!?』
「まぁ、それは、そうだな。」
咲夜はけろりと答える。


『僕が、どれだけ・・・。』
そこまで言って青藍は頭を抱える。
「ほう。あれは無駄ではなかったようだ。」
そんな青藍の姿に、咲夜は楽しげに言う。
『もう、僕で遊ぶのは止めてください・・・。僕だって、普通の男なんですよ・・・。』


「一体何を教え込んだのだ・・・。」
青藍を憐れむように白哉が問う。
「頬を両手で挟んで、唇を奪えとでも。深冬はあの時そうしていましたわ。」
「それは・・・大変だな。」
白哉は苦笑する。


『酷い・・・。母上ったら酷いです。母上の言うとおり、僕は父上の子どもなんですからね!?色々とあるんですよ。』
「青藍、煩悩が見え隠れしているわよ。」
『仕方ないじゃないか!これは男にしかわからないやつだよ。父上だってそう思いません?』
「まぁ、そうだな。」
白哉は苦笑するように頷く。


『だって、膝の上に乗ってきて、唇を奪われるんですよ!?母上にそんなことをされたら、父上だって駄目でしょう。』
「・・・場所によるが。」
『ですよね・・・。僕だってあの場でなければ危なかった・・・。どれだけ必死に抑えたか、君たちには解らないんだ・・・。』


「・・・君たち、やっぱり親子だな。」
「兄様も父上も、先ほどから色々と駄々漏れですわよ。」
「青藍も男なのだな。」
「男の人ってそんなことばかり考えているの?」


『別にそういう訳じゃないけど、体が勝手に動きそうになるんだよ。それを止められなかったらどうなるか、母上は身を持って知っているはずです。』
「な!?いや、それは、だな・・・。」
咲夜はしどろもどろになる。
その様子を見て、再び女性陣の視線が白哉に集まった。


「愛しい者を愛して何が悪い。」
しかし今度は楽しげに咲夜を見ながらそんなことをいう。
『うわ、父上、開き直った!』
「五月蝿いぞ。敵の攻撃を反射的に避ける体を押しとどめるのは難しいだろう。それと同じだ。」


「朽木隊長がそんなことを言うなんて・・・。もっと理性的な方だと思っていたわ。どんなに女性が近づいて来ても何一つ反応しないのだもの。」
「咲夜が相手では別だ。他の者には興味がない。それに、あの浮竹でさえ、そういう欲があるのだぞ。」
「「「えぇ!?」」」
白哉の言葉に、咲夜以外の女性三人は目を丸くする。


「そう言えば、浮竹にそんなことを聞いたな・・・。私が。」
『母上・・・。本当に酷い人ですよね。そういうこと、本人に聞きます?』
「だって、気になったのだから仕方ないだろう。あれだけ臥せっていたらそういう欲もなくなるのかと思ったのだ。だからずっと独り身なのかと・・・。」
咲夜が拗ねたように言う。
『母上って無意識に酷いですよね・・・。十四郎殿も可哀そうに・・・。』


「やっぱり、男は皆狼なのね。」
『そうそう。茶羅も雪乃もルキア姉さまもその内食べられちゃうんだから。』
「・・・私も?」
青藍の言葉にルキアは首を傾げる。


『そうです。・・・いや、ルキア姉さまは、暫くは大丈夫かと。相手が誰にしろ、父上という最大の壁があるので。』
「なんだそれは?」
「ふふ。そのうち解りますわ。私も父上や兄様たちが居るからそう簡単に手を出す殿方は居ないわ。問題は雪乃よね。」


『そうだね。可哀そうに。橙晴は父上に似ているから、スイッチ入ると大変だと思うよ。迷いなく食べられちゃうね。』
「雪乃・・・。それは大変だな・・・。」
咲夜は雪乃に憐れむような視線を送った。

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