色彩
■ 27.淡泊か否か

「深冬と何があったのだ?」
咲夜は楽しげに口火を切る。
『あはは・・・。』
「先ほど白哉には伝えたと言っていたな?何を伝えたのだ?」


『・・・。』
「青藍が話さなくても白哉に聞けば解ることなのだ。早く話せ。」
「そうですわ。」
言われて青藍は白哉に視線を向けるが、白哉は楽しげに微笑むだけである。


『・・・深冬と・・・。』
「「「「深冬と?」」」」
『・・・もう一度、婚約の話をしました。』
「と、いうと?」


『・・・・・・深冬に全部伝えました。』
「全部って?」
『婚約を決めたときには深冬を想っていることを自覚していたこと。多分最初から特別だったこと。・・・深冬を守るためといいながら、本当は自分のために婚約を進めたこと。』
そういいながら青藍は目を伏せる。


「何それ。青藍ってば最低。」
『うん。雪乃の言うとおりだよ。でも、それでも、深冬が欲しいと思ったこと。そうして深冬を縛ったことでずっと苦しかったこと。それを知られるのが怖かったこと。深冬が離れていくかもしれないと思ったら、何も出来なかったこと。』


「兄様ったらへたれですものね。」
茶羅は呆れたように言う。
『それを全部話しました。』
そこで青藍はふと笑みを零す。


『全部話したら、深冬は、自分は今、自分で選んでこの状況なのだと。だから、苦しんだり、怖がったりする必要などないと。僕のそばに居るのは、自分がそばに居たいからだと、真っ直ぐに言うんです。僕の大好きなあの瞳を真っ直ぐに僕に向けて。あの子の方がずっと覚悟が出来ていた。』


「覚悟?」
『はい。僕の傍に居る覚悟です。あの子は、僕が歩む道がどれほど険しいものか、よく解っていました。それを解った上で、それでも、僕の傍に居ると。眩しいくらいに強い。』
青藍は愛しげに言う。


「そうだな。あの子は強い。私もあの瞳が好きだ。」
咲夜の言葉に青藍は頷く。
『それを話して、それからもう一度婚約を申し込みました。今度はちゃんと僕の気持ちを伝えて。』
「それで、深冬は?」


『僕の傍に、居てくれるそうです。』
青藍は幸せそうに微笑む。
「・・・そうか。それは良かったな、青藍。」
咲夜はそんな青藍の頭を撫でる。
『ふふ。はい。』


「全く、兄様ったらいつ伝えるのかと、私はずっともやもやしていたのよ?」
「本当よ。事情を知らない人たちは、すでに付き合っていると思っていたのよ?」
『あはは。うん。』
「私も深冬がいつ自覚するのかと、ずっと見守っていたのだぞ?」


『ふふ。ルキア姉さまは、最初から僕が深冬に惹かれていたことを見抜いていたらしいじゃありませんか。睦月と一緒にずっと面白がっていたと聞きましたよ。』
「ふふん。生まれたときから青藍を見ているのだ。そのくらいすぐに解る。」
ルキアは得意げに言う。


『そういうことなので、僕と深冬は本物の婚約者になりました。以上です。』
青藍はそう言って立ち上がろうとする。
それを咲夜が止めた。
『何ですか、母上?』
青藍は首を傾げる。


「それだけか?」
『え?』
「想いを伝えただけなのか?」
『そうですよ?それだけです。』
咲夜の言葉の意味することを解っていながら、青藍はそんなことをいう。


「この数年、ずっと待っていたのに?」
『まぁ、そうですね。』
「だって君、男だろう。」
『女に生まれた覚えはありませんから、そうでしょうね。』
「もっとこう、色々とあるだろう。」
『色々って何ですか?』
青藍は惚ける。


「それは・・・色々だ。だって、白哉の子だぞ?なぁ、白哉?」
「さぁ、私は何も知らぬ。」
妖しい方向に話が進むことを察知して、白哉は知らぬふりをする。
「ここ数年で急激に育ったあの深冬に、青藍は何もしていないというのか!あり得ない。だって、女性不信とはいえ、この白哉の子だぞ?私は、すぐに手を出された!」


『・・・母上。色々と危険な言葉があります。』
「だって、白哉は決して淡泊ではないのだぞ!?私は身を持ってそれを知っている。」
咲夜の言葉に女性陣の目線が白哉に向く。
白哉はその視線から逃れるようにあらぬ方向を向いた。
『あはは。まぁ、そうですけどね。母上と深冬では状況が違います。』


「本当に何もしていないのか?」
笑う青藍に、咲夜は疑いの目を向ける。
『いつものように膝の上で抱きかかえることはしましたけど。』
「ほう?それだけか?」
『あはは。信用ないですねぇ。』
青藍はにこにこという。


「まさか、深冬が相手でも駄目だということはないよな・・・?」
『たぶん、それは大丈夫です。』
「それなのに何もしていないだと!?それは男としてどうなんだ!?なぁ、白哉!?」
咲夜は頭を抱えながら騒ぐ。


「・・・私に聞くな。」
「だって、君の子どもだぞ!?」
「そなたは私を何だと思っておるのだ・・・。」
「鬼!悪魔!鬼畜!」


「・・・ほう。そうか。そんなに仕置きをして欲しいか。」
白哉は咲夜に色を含んだ視線を向ける。
「い、いや、嫌だ。ほら、君はそういう奴だろう。だから、そんな君の子が淡泊なはずがない!!!」
白哉の視線に弱腰になりながらも、咲夜は言う。

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