色彩
■ 25.匿う

『十四郎殿、失礼しますよ。』
雨乾堂にやってきた青藍はそう言うなり勝手に部屋に入る。
「青藍?」
そんな青藍の姿に浮竹は目を丸くした。


『どうも。』
「さっき、朽木たちがお前を探しに来たぞ?」
『あはは。今、鬼ごっこ中なのです。でも、深冬を巻き込むのは可哀そうなので、深冬を返しに来ました。』
「そうか。」


『深冬を頼みますね。』
「あぁ。解った。」
『では、僕はこれで。仕事が終わったら迎えに来るからね。』
青藍はそう言って深冬を撫でると姿を消す。


「ははは。お前も大変だな。」
突然やってきてあっという間に居なくなった青藍に、浮竹は苦笑する。
「はい。でも、青藍なので仕方がありません。」
深冬もまた困ったように微笑む。


「そうか。それにしても・・・。」
浮竹はそう言って深冬を見つめる。
「何ですか?」
そんな浮竹に深冬は首を傾げた。


「表情が柔らかくなったな。俺は、そうやって笑ってくれるのが嬉しいよ。」
「それは・・・青藍のお蔭です。」
深冬はそう言って柔らかく微笑んだ。
それを見て浮竹は気付く。


・・・どうやら自覚したらしい。
そして、どうやら青藍と進展があったらしい。
だから漣たちが青藍を追っているのか。
彼奴らにも困ったものだ。
暫くはそっとしておいてもいいだろうに。
浮竹は内心苦笑する。


「・・・そうか。これからも青藍を頼んだぞ、深冬。彼奴は、漣に似ているから、一人にしてはいけないぞ。」
「はい。解っています。」
浮竹が言いながら頭をなでると、深冬はしっかりと頷く。


「よし。それならいい。・・・さて、深冬、仕事を頼んでもいいか?」
「はい、隊長。」
そうして二人は仕事に戻ったのだった。


深冬を雨乾堂に置いてきた青藍は、六番隊の隊主室へと向かう。
『お邪魔します・・・って、雪乃!?』
青藍が窓から滑り込むように入ると、雪乃が長椅子に座って何やら書類を処理していた。
「青藍じゃない。」
『どうしてここに?』


「私が入れたのだ。」
目を丸くした青藍に、白哉が静かに言う。
『父上が?』
「そうよ。橙晴から逃げるためにダメもとで頼んだら匿ってくださるって。」
「その代わり仕事を手伝ってもらっているが。」


『へぇ。じゃあ、父上、僕のことも匿ってください。僕、今追われているのです。』
青藍は悪戯に笑いながら言う。
「仕事を手伝うのなら、匿ってやろう。」
そんな青藍に白哉もまた悪戯っぽく言う。
『ふふ。もちろん。お手伝いいたしますよ。』
「よかろう。匿ってやる。」
白哉は楽しげに頷く。


『あはは。ありがとうございます。・・・どれをやればいいですか?』
「・・・では、これを頼む。」
『はい。』
差しだされた書類を持って、青藍は長椅子に座る。
そして書類を捌き始めた。


『それにしても、父上が雪乃を匿うとは意外ですねぇ。』
筆を動かしつつ青藍は問う。
「私は未来の娘のお願いを聞いただけだ。何も問題あるまい?」
『「!?」』
しれっといった白哉に二人は顔をあげて白哉を見る。
そんな二人に、白哉は悪戯な微笑みを向けた。
その瞳が柔らかくて、雪乃は思わず赤面する。


「な、何を・・・。」
「私が義父となるのは不満か?」
なおも楽しげに微笑む白哉に雪乃は恥ずかしそうに目をそらす。


「な、だ、不満・・・では・・・ない・・・です。」
呟くように言った雪乃に、白哉は、ふ、とおかしそうに笑みを零す。
「ならばよい。」
満足そうにそう言って、白哉は再び書類に視線を落とした。


「・・・ちょっと、青藍。」
その姿をチラリと見つつ、雪乃は小声で未だポカンとしている青藍に話しかける。
『・・・な、なに、雪乃?』
「貴方も大概ずるい人だけど、貴方のお父上も、大概ね・・・。あぁ、吃驚したわ・・・。」
顔を真っ赤にしながら、雪乃はいう。


『いや、あの、うん。僕もちょっとびっくりした・・・。雪乃、顔が真っ赤だよ。』
青藍はそう言って小さく笑う。
「だって、あんな微笑みを向けられたら、誰だって、赤くなるわよ・・・。あんなの心臓に悪いわ・・・。」
胸を押さえながら雪乃は小さく呟く。

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