色彩
■ 22.逃亡

「ついでに、私たち兄弟の目付け役兼護衛の睦月と師走。睦月のことはみんな知っているわね。霊術院の講師もやっているから。」
「俺たちはついでですか、御嬢さん。」
「俺は紹介すら必要ないと思うけどな。」


「ふふ。いいじゃない。これでも彼らは兄弟よ。優れた医師であり研究者だわ。残念ながら死神ではないのだけれど。」
茶羅は意味ありげな視線を二人に送る。
「「絶対にならないからな?」」
「あら。それは残念。まぁその方が使い勝手がいいのだけれど。」


「あはは。御嬢さん、俺たちを容赦なく使ってくれますもんね。」
「はは。俺はいい加減慣れたけどな。朽木家の皆さんはご当主を始めとして人使いが荒い。」
睦月は疲れたようにいう。


「・・・何か文句があるのなら聞いてやるが?」
そんな二人に白哉が冷ややかな視線を送る。
「「いえ、なにも。」」
『あはは!二人とも、父上には従順だよね。確かに父上は容赦がないけど。』


「いや、最近はお前からの命令の方がきついぞ・・・。俺は毎回寿命が縮んでいる気がする・・・。」
『そうかな。でも睦月、その割にはきちんと仕事をしてくれるよね。』
「当たり前だ。ご当主よりお前の方が容赦ないことを、俺は知っているからな。全く、恐ろしい奴だ。優しいのは笑顔だけかっての。」


『ふふ。そうかなぁ。僕、とっても優しいじゃない。』
「・・・それは嘘だろう。」
「嘘だな。」
「青藍、それは、嘘になるぞ・・・。」


『深冬も母上もルキア姉さまも酷いなぁ。』
言いながらも青藍は笑顔だ。
「これが朽木家の者たちです。副隊長の恋次さんを始め、六番隊の皆様にはご迷惑をお掛けすることもありますが、よろしくお願いいたします。」


『そうそう。父上と母上の喧嘩には挟まれないように注意してね。』
「兄様と母上の悪戯に巻き込まれると大変ですわよ。」
「橙晴と青藍がたまに白哉を怒らせるしな。」
『それは母上が一番多いです。』
「確かにそうだな。咲夜さんは悪戯好きだ。」


「ご当主は大変ですねぇ。朽木家、問題児ばかりで。」
「そうだな。私もルキアもいつも振り回される。」
「あはは・・・。」


『ふふ。父上もルキア姉さまも、それはそれで楽しんでいるじゃありませんか。一番楽しんでいるのは茶羅だけど。』
言いながら青藍は茶羅をチラリとみる。
「あら、私はいいのよ。巻き込まれないところでみんなを見守っているのですから。」


『それ、高みの見物っていうんだよ・・・。』
「君子危うきに近寄らず、という言葉もありますわ。」
『・・・。』
「ふふ。青藍を黙らせるとは、茶羅はなかなかやるなぁ。」
「そうですね。朽木家で一番強いのは茶羅かもしれません。」
「そのようだ。」


『そういう訳で、入隊式がぐだぐだになってしまったけれど、僕らは君たちの入隊を歓迎するよ。騒がしいけど、それは勘弁してね。困ったことがあったら、恋次さんに相談するといいよ。』
青藍は楽しげに言う。
「俺かよ・・・。いつもそうだよな、お前・・・。」


『ふふ。それだけ信頼しているってことですよ、阿散井副隊長。』
「お前がそう呼ぶときは碌なことが起きないんだよ・・・。」
「ははは。苦労するな、副隊長殿。」
「頑張れよ、阿散井副隊長。」
「ルキアも咲夜さんも楽しんでるだろ・・・。」
恋次は大きなため息を吐く。


「任せたぞ、恋次。」
「隊長まで・・・。」
『あはは。大変ですねぇ、恋次さん。・・・さて、深冬。こちらにおいで。』
「何だ?」
青藍に言われて深冬は彼に近付く。


『うん。よしよし。いい子だ。だからちょっと大人しくしていてね。』
「うわ!?な、なんだ!?」
青藍は言いながら深冬を抱え上げる。
『よし。と、いう訳で、僕はちょっとお散歩に行ってきます。父上、後はよろしくお願いしますね。』
そういい残して、青藍は姿を消す。


「兄様、逃げたわ。私たちの追求から逃れるつもりね。」
「そうだな。深冬まで連れて行くとは。」
「ふふふ。この私から逃げられると思うなよ。行くぞ、ルキア、茶羅。」
「「はい。」」
そうして三人は楽しげに姿を消す。


「あーあ。咲夜さんが相手じゃ、逃げるだけ無駄だろうに。」
「確かにそうだ。ついでにルキアさんと御嬢さんも居るしな。」
彼らが消えていった方を見ながら睦月と師走は呆れたように言う。
「咲夜のせいで、私の仕事が増えたではないか・・・。」
白哉は面倒そうに言ってため息を吐く。


「睦月、師走。」
「「はい?」」
「護衛はいい。その代り、青藍と橙晴の仕事をやれ。」
「「嫌ですよ、面倒臭い。」」
白哉の言葉に二人は面倒そうな顔をする。
「良いな?」
「「・・・はい。」」
しかし、白哉に睨まれて渋々頷いたのだった。


「では、これにて入隊式を終わる。席官の指示に従って動くように。」
白哉はそう言うと、恋次を伴って退室する。
それを見送って、睦月と師走はため息を吐いた。
「・・・あいつら、次風邪ひいたら特別苦い薬にしてやる。」
「そうだな。次怪我でもしたら、特別痛く治療してやる。」
物騒なことを呟いて、彼らは諦めたように歩き出す。


「・・・まぁ、これはこれで、面白い。」
「だな。俺も、もうここから離れることはない気がするわ。」
「死ぬほど大変だが、死ぬまで飽きないだろ?」
「はは。確かにそうだ。」
そう言って二人は仕事に向かったのだった。

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