■ 20.追われ、追う者
首を垂れる青藍を見て、白哉は内心苦笑する。
そなたはその道を選ぶのだな。
私が逃げて欲しいと思っても、逃げず、投げずにすべてを受け止めて、背負って立つのだな。
真っ直ぐに前を見つめて、未来を見つめて。
・・・思えば昔からそうだった。
私のようになりたいと、青藍はいつも私を追いかけてきた。
強く、賢く、美しい。
しかし、愚かで、弱く、醜さを知る。
それでも凛と前を見つめるのだ・・・。
そなたは私の自慢の息子だ。
白哉はそれを言葉にする代わりに、青藍の頭を撫でる。
『うわ!?父上!?』
「ははは。私も撫でてやろう。」
それを見て安曇も青藍の頭を撫で始める。
『安曇様!?』
戸惑った声を出す青藍を白哉と安曇は楽しげに撫でる。
「よい子だ。そして、そなたは良い男だな。」
『そう、でしょうか・・・。』
「ふふふ。自信を持て。この年寄りがそう言っているのだから。それに深冬を選ぶとは中々趣味がいい。なぁ、白哉。」
「そうだな。だが、まだまだだ。それでは私を超えることなどできぬぞ。」
『えぇ・・・。父上ったら手厳しい・・・。』
楽しげに言う白哉に、青藍は拗ねたように言う。
「当然だ。簡単に越えられると思うなよ。」
『はぁい。頑張ります。・・・いつか絶対超えてやりますからね。』
白哉を恨めしげに見ながらそう言った青藍に、二人は笑みを零す。
「白哉も追われるばかりで辛いのう。」
安曇はからかうように白哉を見る。
「そんなことはない。私もまだ追う者だ。」
「ほう?そなたは誰を追っているのだ?」
「歴代の朽木家当主。」
「なるほどな。」
「それから・・・咲夜だ。」
白哉はそう言って微笑む。
「ふむ。そなたはまだ咲夜を捕まえていないと?」
「そうだな。咲夜は、私が幼い頃からずっと私の前を歩いている。私の道標なのだ。見えるところに居れば良いが、あれはたまに見えなくなるからな。追いかけるのも大変なのだ。見失うと私まで迷子になる。」
白哉は苦笑する。
「ははは。そなたもまだまだ若いのう。」
「爺には解らぬのだろうな。」
白哉は莫迦にしたように言い捨てる。
「何!?確かに私は年寄りだが、爺と言われるのは何か嫌だぞ。」
「爺を爺と呼んで何が悪い。」
「そなたはもう少し年上を敬う態度を取った方がいいと思う。青藍を見習え。」
「態度だけで本心は莫迦にしていてもいいのならそうしてやるが。」
「・・・はぁ。そなたはそういう奴だったな。」
「そなたこそ、十五夜を呼び捨てにしているではないか。あれは一応そなたの上司だろう。」
「十五夜はいいのだ。十五夜は莫迦だからな。あれは糞爺というのだ。毎度毎度顔を合わせる度に鬱陶しくて仕方がない。」
安曇は忌々しげに言い捨てる。
「・・・それには同意する。」
『ふふふ。お二人は仲が良いですねぇ。』
二人のやり取りに青藍はくすくすと笑う。
「「仲良くなどない。」」
『息ピッタリじゃないですか。』
「「・・・。」」
青藍に笑われて二人は不満げに黙り込む。
『ふふ。類は友を呼ぶとはこのことですね。』
そんな二人に青藍はふわりと微笑む。
「・・・白哉のせいで青藍に笑われたではないか。」
「それはそなたのせいだろう。」
そう言って横目で睨みあう二人に青藍はさらに笑ったのだった。
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