色彩
■ 10.朽木家の護衛

「貴方のその手の発言は嘘くさいのよ。」
『あはは。これが嘘じゃないのは君がよく解っているんじゃない?』
「・・・はぁ。その微笑にどれだけの人が騙されているのやら。考えるだけでも恐ろしいわ。」


『騙してなんかいないさ。・・・と、いうよりむしろ、彼女らを振ったのは橙晴じゃないの?』
「まさか。僕がいつ振ったというのですか。」
『惚けないの。君が父上と同じことをしているという時点で、君が何を思っているのかは彼女らにも理解できたと思うけど。』


「でも、彼女らがお見合い写真を送ったのは、兄様ですよ?」
『え、そうなの?僕、お見合い写真とか、まともに見たの雪乃のやつだけなんだよね。面白そうだったから。橙晴も見る?雪乃、すごくおめかししていて、迫力満点だったよ?あと秋良様がおまけをつけてくれていたからとってあるよ。』
青藍は楽しげに言う。


「何してんのよ!そんなもの、早く燃やしてしまいなさい!っていうか、おまけって何!?お父様は一体何を貴方に送ったわけ!?」
青藍の言葉に雪乃は青藍に迫る。
『あはは。秘密。橙晴には見せてあげよう。』
そんな雪乃を躱して、青藍はなおも楽しげだ。


「それは面白そうなので後で見せてもらいますけど。・・・やっぱり、兄様は悪魔です。見合い写真をろくに見ていないとか、本人の前で言うのやめましょうよ。というか、清家に散々目を通しておけと言われたじゃありませんか。」


『だって、父上もほとんど見なかったって言っていたもの。つまり、特に見る必要がないってことでしょ?僕、必要ないことをするほど暇じゃないし。』
呆れたように言う橙晴に、青藍はけろりと答える。


「な、んですかそれは・・・。それならそうと僕にも言ってくださいよ・・・。」
『ふふふ。聞かれなかったから。ていうか、橙晴、ちゃんと目を通していたんだ。』
「当たり前です。大体、父上も父上です。何ですか。なんで兄様と父上だけでそんな話をするのですか。」
橙晴は不満げに言う。


『僕、父上と仲良しだもの。共犯者とも言うけれど。あ、このこと、清家には言わないでね。父上と一緒に怒られてしまうから。まぁ、そんなことをすれば、僕も橙晴も父上の八つ当たりを受けるわけだけれど。』


「・・・橙晴。」
「どうかした?」
「あの人、笑顔で言えば何でも許されると思っているわよね・・・?私はあの人を殴ってもいいかしら?」
拳を握りながら雪乃は言う。
「もちろん。僕も参加するよ。いつもいつも兄様はああやって、にこにこと・・・。」
雪乃の言葉に橙晴はすぐさま頷く。


「本当に腹立たしい人だわ。何故私はあんなのと友人をやっているのかしら。それで毎回毎回振り回されているのよ?逃げることすら出来ないってどういうことよ・・・。」
青藍を睨みつけながら、雪乃は低い声で言う。
「そうだね。痛い目を見ればいいんだ。兄様なんか、深冬に振られてしまえ。」
二人はそう呟きながら青藍に近付くと拳を振り上げる。


『あはは。酷いなぁ。・・・睦月、師走。』
そんな二人を見て笑うと、青藍は彼らの名を呼んだ。
彼等は飛んできて二人の拳を受け止める。
「「な!?」」
拳を受け止められたことに、と、いうより、彼らが動いたことに二人は目を見開く。
『ふふ。』


「二人とも、退いてくれるかな。」
橙晴は二人を見つめながら冷たく言う。
「それは・・・。」
「出来ないよな・・・。」
二人は気まずげに目を合わせる。


「何故かしら?」
「これから宴会の季節なのに・・・。」
「「禁酒期間が延びる。それは駄目だ。」」
二人はそう言い放つ。


『ふふ。二人とも僕のことよく解っているよねぇ。』
青藍は満足げに微笑む。
「何よそれ。ずるいわ!」
「そうです!兄様、それは権力の濫用というのですよ?」


『実際、僕の方が君たちよりも偉いからね。それに、彼らはうちの護衛だ。僕を守ることに何の不思議もないだろう?』
「お前の方が強いけどな。」
「そうそう。なんて言ったって化け物だからな。」
微笑む青藍に、二人は呆れたように言う。


『あはは。それでも守ってくれるなんて、君たちは勤勉だなぁ。仕方がないから、禁酒期間は一週間にしてあげるよ。』
「「よし。」」
「貴方たち、どんだけ酒好きなのよ・・・。」

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