色彩
■ 4.デート

うーん・・・。
やっぱり目立つよねぇ。
歩き出して青藍はすぐに気が付く。
深冬の姿に様々な人が振り返るのだった。
毛色が他と違うということもあるが、その美しさに目を奪われるのである。


ついでに袴を着ているということも、目立つ一因であった。
かくいう青藍も着物姿で目立っているのだが。
二人とも目立つ容姿であるため、相乗効果でさらに目立っているのだ。
やっぱり着替えた方がいいかな・・・。
そう考えて青藍は口を開いた。


『ねぇ、深冬。洋服、着てみない?』
「洋服?」
『うん。着物だと目立つからね。他の姫たちも何やら着替えているようだし、深冬も洋服着てみようよ。』
青藍は楽しげに言う。


「青藍も?」
深冬はそんな青藍を見上げる。
『もちろん。』
「・・・それなら、いい。」
『ふふ。可愛いなぁ。じゃ、どこかお店に入ろうか。』


お店に入った青藍は待ちぼうけとなっていた。
店に入ると深冬と別れて別々に連れて行かれたのである。
青藍は早々にグレーのジャケットを選び、それに合わせてコーディネートをしてもらったのだ。


まだかなぁ。
青藍は店内に用意されたソファに座って伝令神機で姫たちの居場所を確認しながら深冬を待っていた。
その姿に多くの女性が注目しているが、それに気付いているのかいないのか、青藍はただ伝令神機を眺めるだけであった。


「お待たせいたしました。」
そんな声がして、青藍は顔を上げる。
すると、目の前に着替えた深冬の姿があった。
白のレースのついたワンピース。
その上に淡い水色のカーディガンを羽織っている。
足元は白くヒールのあるものだ。
レースのついた白い靴下が可愛らしい。
青藍は思わず深冬に見とれる。


「青藍?」
何も言わない青藍に深冬は首を傾げた。
『・・・あは。よく似合うなぁ。』
青藍は見惚れていたのを誤魔化すように笑って言った。
「・・・そうか。」
言われて深冬はほっとしたように微笑む。


『じゃ、これで。二人分。』
青藍はそう言ってカードを取り出す。
それがブラックカードであることは言うまでもない。
店員はそれを受け取って会計に行く。
「私は自分で払える。」
それを見て深冬は不満げに言う。


『だーめ。』
「何故だ?」
『ふふふ。僕の気分?』
「何だそれは・・・。」
微笑む青藍に、深冬は呆れた顔をした。


『まぁまぁ、何なら邸だって買ってあげるよ?』
「・・・。」
悪戯っぽく言った青藍に、深冬は胡散臭げな視線を向ける。
『あ、ちゃんと自分で稼いだお金だから大丈夫だよ?家のお金は使いません。』
「・・・そういう問題ではないと思う。」
『え、そう?別にいいのに。』


「青藍は時々頭が悪い。」
『えぇ?酷くない?』
「何故この流れで邸を買うということになるのだ・・・。」
『深冬が欲しいと言えば買ってあげるのに。』
「・・・やっぱり頭が悪い。」
そんなやり取りにカードを持って戻ってきた店員は苦笑したのだった。


そんなこんなで二人は再びぶらぶらとする。
どうやら姫たちは睦月と師走をあちこちに連れまわしているようだった。
可哀そうに。
そんなことを思いながらも、青藍は彼女らと遭遇しないように深冬を連れて歩く。


『深冬、大分晴れているけれど、大丈夫?』
「あぁ。まだ大丈夫だ。」
そういいながらも深冬は少々疲れたようだった。
『まぁ、ちょっと休憩しようか。』
そう言って、日の光に弱い深冬のために青藍はカフェに入った。


窓際の席に通されそうになったのだが、理由を話してやめてもらい、日陰になる席に通される。
二人ともケーキセットを頼み、青藍はガトーショコラ、深冬は苺のタルトを選んだ。
運ばれてきたケーキを幸せそうに食べる深冬を、青藍は微笑みながら見つめる。


此処でも二人は目立っているのだが、今青藍は深冬に注目しているため、気が付いていない。
深冬もまた、ケーキを食べるのに忙しく、気付いていないのだった。
この世の者とは思えない(これはある意味で正しい)美男美女が幸せそうにしている姿に、皆が見惚れているのにも関わらず。
二人の様子に店内には幸せな空気が広がっていた。


『ふふ。美味し?』
青藍が問うと、深冬はこくりと頷く。
『僕のも食べる?こっちも美味しいよ。』
「・・・一口欲しい。」
ガトーショコラを見つめて深冬は言う。


『うん。はい、口を開けて。』
青藍はフォークに一口分のせると、深冬の口元に差し出した。
深冬が躊躇いなく口を開けると、青藍は笑みを零してガトーショコラを彼女の口に入れたのだった。
「・・・美味しい。」
『それは良かった。』


「青藍。」
『ん?』
「青藍も。」
深冬はそう言ってタルトを一口差し出す。
・・・うわ、可愛い。
ていうか、間接キス、とか考えてしまうあたり、僕はもう駄目かもしれない。
色々と余裕がなさすぎる・・・。
青藍はそんなことを思いつつも、口を開けた。


『・・・うん。美味しい。』
青藍がそう言って微笑むと、深冬も嬉しそうに微笑んだ。
当然のように食べさせ合った二人に周りの方が恥ずかしくなっているが、二人は咲夜と白哉を見ているので、それほど羞恥心はないのだった。

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