色彩
■ 1.困りごと

青藍と深冬が婚約してから数年。
『はぁ・・・。』
そんな盛大なため息が出るほど、青藍は困っていた。


・・・深冬が、美しくなっていく。
長くなった髪がさらにそれを際立たせている。
毎日のお昼寝の効果か、はたまた夜きちんと眠っているせいか、深冬の身長が急激に伸びたのだ。


今ではルキアを追い越し、もう少しで150センチに達しようとしている。
勿論それに伴って、顔つきも幼いものから大人へと変わろうとしていた。
その上、以前よりも表情が豊かになったため、青藍は新しい表情を見る度に、彼女の成長を認めざるを得なかったのである。


もう、僕は駄目かもしれない・・・。
六番隊に来て、橙晴と話をしている深冬を眺めて、青藍は内心で呟く。
あんなに綺麗なのに、自覚がないのだ。
だから、あんな簡単に、僕に抱き着いたりするんだ。
ていうか最近、深冬から抱き着いてくるんだよ・・・。


色々とまずいでしょう。
いや、僕相手にしか、そうしないけど。
嬉しくないわけじゃあないけれど。
何それ。
可愛すぎる。
僕だって、そんなに理性が強い訳じゃあないんだよ・・・。
そもそも僕が男だということを忘れているのではないだろうか。
・・・それはそれで悲しすぎる。


実を言えば、深冬が青藍にだけ抱き着くのは、咲夜がこっそり婚約者はそうするものだ、と、教え込んだからなのだが。
色々と間違っているが、咲夜と白哉に見慣れた深冬はそれに気が付かないらしい。
勿論、青藍はまだそれを知らない。

そんな二人の様子に、橙晴に茶羅、ルキア、その他色々と事情を知る者たちは、やきもきしていた。


ついでに青藍の気持ちに気付く者がちらほらと現れており、青藍はことあるごとに遊ばれている。
主に隊長格たちから。
雪乃たちもいい加減青藍が深冬への気持ちを自覚していることに気が付いていた。
それを面と向かって指摘することがないのは彼らなりの優しさである。


一番問題なのは、最近深冬に思いを告げるものが後を絶たないということだ・・・。
青藍は内心で盛大に溜め息を吐く。
僕という婚約者がいることを知りながら、それでも、と、思いを告げる男たちに対する感情は、快くないものだ。


あぁ、こんなことでは、いつか、深冬を誰かに取られてしまう・・・。
情けない、と自分で思う。
それでも青藍は未だ行動に移せないでいた。
想いを伝えることなく婚約した狡い自分を知られたくないのだ。
深冬に嫌われたくない。
そんなことを思ってしまう自分が女々しくて嫌になるのだが、深冬に本当のことを話すのは、やっぱり怖かった。


心だけでなく体まで深冬を欲しがっていることに、もう、泣きたい・・・。
深冬を好きになってから、知らない感情ばかりが溢れてくる。
それも、深冬には知られたくない感情がほとんどで。
今まで必死に隠してきたものの、それにも限界を感じ始めていた。


・・・深冬は、僕を嫌ってはいない。
それは青藍自身よく解っている。
しかし、これまで完璧に隠し続けてきた分、深冬が自分をそういう目で見ているとは考えられないのである。


良くて、いいお兄さん、ぐらいにしか、思われていないのだろう。
だからあんな簡単に僕に抱き着いたり、僕の前で安心しきった顔で眠ったりするのだ。
自分が成長していることをよく解ってほしい・・・。
成長しているのは、身長だけではないのだから。


一方、深冬は深冬で自覚していないのだった。
青藍と一緒に居たいとは思う。
彼が他の女性隊士と話していると何かもやもやとした気分になるし、彼が抱きしめてくれると酷く安心する。
名も知らぬ相手に思いを告げられてもいまいちピンとこないし、青藍の方がいいと思ってしまう。


勿論、大概の男は青藍と比べれば劣ることなどすでに理解しているのだが。
実力も人望も地位も容姿もその辺の男では比べることすら出来ないのだから。
ただ、最近の青藍にため息が多いことが気になっていた。
深冬と居る時、青藍は無意識なのか、すぐに溜め息を吐くのだ。
実際は、彼は煩悩と戦っているだけなのだが。


そんな両者に、周りは早くくっつけ、と思っているのだが、なかなか進展しないのである。
いや、事情を知らない者たちは既に二人が恋仲だと思っている。
故に、結婚の話もちらほらと振られるようになり、青藍は困っていた。
深冬はその辺の話はそれとなく躱しているらしい。
もちろん青藍もそうしているのだが、清家などは早く思いを伝えなければ私が死んでしまいます、などと急かしてくるのだ。


まぁ、それも解る。
清家はともかく、青藍は死神で、いつ死ぬか解らないのだから。
早く結婚して子を作るということも、朽木家を継ぐ身として重要な役割なのだ。
しかし、それを無理やり深冬に押し付けることは、青藍には出来ない。
かといって突然態度を変えて、深冬に怖がられたりすることを考えると、それも出来ないのだった。

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