色彩
■ 33.恋をする人たち

「青藍、さっきから何の話なのだ?私にはまったく解らない。」
深冬は膝の上から青藍を見上げる。
『んー?皆鋭くて困るよねぇ、と、言う話だよ。』
そんな深冬を抱きしめながら青藍は微笑む。


「・・・やっぱり青藍は嘘つきだ。」
深冬は不満げに言う。
『えぇ!?そんなぁ。』
「話を聞く限り、青藍は何かを隠して誰かを騙そうとしている。」
『あはは・・・。否定は出来ない。』


「それにまた雪乃様に隠し事だ。青藍なんか、また雪乃様にげんこつされてしまえばいいんだ。」
深冬はそう言ってそっぽを向く。
『えぇ・・・。それは痛いから嫌だなぁ。』
青藍は情けない声を出す。


「「「あはは!」」」
それを見て三人は吹き出す。
豪紀も口元を押さえた。
『・・・なんですか、皆して。加賀美君もこっそり笑うぐらいなら普通に笑ってくれた方がいいんですけど。』
青藍は唇を尖らせる。


「はは。いや、青藍は深冬に敵わないんだなぁ。」
「そうみたいだねぇ。」
「お前も大変だよな。ま、橙晴も同じようなものか。」
「あはは。確かにそうだね。あちらの方が手強いだろうし。」
『別にいいですよ。何とでも言えばいいんです。僕には既に安曇様という味方が居ますからね。』


「えぇ!?何それ!?」
青藍の言葉に京楽は目を丸くする。
「お前・・・流石だな。」
「あの方もなかなか手強いだろう・・・。」
『ふふふ。僕、安曇様と仲良しですから。この話をしたら、漸く気が付いたのか、と笑われてしまいました。』
呆れたように言う二人に青藍は楽しげに笑う。


「・・・お前は敵すら味方にしてしまう奴だよな。」
『あはは。例えば加賀美君とか?』
「俺がいつお前の味方になったんだ!」
『えぇ?違うの?あ、そうか。君は深冬の味方だったね。』


「お前なぁ・・・自分が不利になったからって俺に話を向けるな。」
豪紀は鬱陶しそうに言う。
『あはは。ばれた?』


「当たり前だ!・・・はぁ。俺はもう行く。まだ挨拶が残っているからな。お前も遊んでいないで早く戻ったらどうだ?さっきから朽木隊長とお前の弟がこっちを睨んでいるぞ。」
『あ、やっぱり?じゃあ、僕もそろそろお仕事しましょうかね。僕、この後舞を舞わなくちゃならないんだ。睦月、深冬を頼んだよ。』
青藍が深冬を離すと、深冬は彼の膝の上から降りる。


「あぁ。解っている。面倒になったらこの隊長たちに押し付けて深冬と逃げるから安心しろ。」
『あはは。うん。よろしく。・・・では、皆様、どうぞ、ごゆるりと、お楽しみください。』
そんな笑みを張り付けて、青藍は豪紀と共に一礼すると、各々やるべきことをするのだった。


「・・・なぁ、白哉。あれ、どう思う?」
舞う青藍を見て、咲夜は呆れたように言った。
「あぁ。どうやら青藍は、舞に感情が乗ってしまうようだな。」
白哉も青藍を見つめながら苦笑する。


「あれでは気づく人には気付かれてしまうぞ。自ら恋をしています、と言っているようなものだ。」
「それはそれでいいのではないか?深冬と婚約しても尚、あれへの見合い話が絶えぬ。」
「ふふ。それは大変だな。まぁ、君もそうだったが。」
咲夜は思い出すように微笑む。


「前途多難だな。」
「確かに。早く深冬も自覚するといいのだがなぁ。」
咲夜は困ったようにいう。
「それは私たちが手を出していいことではあるまい。」
言いながら白哉は咲夜の手を取って指を絡める。
咲夜はそれに応えるように白哉に凭れ掛かった。


「それはそうだが・・・。」
「私たちの役目は見守ることだ。青藍も橙晴も茶羅も、いつの間にやら大人になっている。」
白哉は苦笑するように言う。
「ふふふ。大きくなったな。あの子たちは私の自慢だ。君と私の大切な子どもたちだ。」
「あぁ。まだまだ若いがな。」


「そうだな。だが、大切な者を見つけたのだ。あの子らはもっと大きくなるだろう。私がそうだったように。」
懐かしむように咲夜は言った。


「私は君が居るから強くあろうと思えるのだ。・・・ありがとう、白哉。愛しているよ。」
「私もだ。私も、咲夜を愛している。」
青藍の舞を見ながら、二人は柔らかく微笑む。


青藍は舞いながらそんな二人を見ていた。
父上と母上はいつまでも互いに恋をしているのだ。
目が合うたび、触れ合うたび、何度でも。
たまに喧嘩をすることもあるけれど、それでも彼らの絆は深く、愛は大きい。
そんな両親の元に生まれたことに感謝しているし、羨ましいと思う。


朽木家に生まれた重圧もないとは言わない。
だが、それでも、ただの一度も、両親を恨んだことなどないのだ。
僕は愛されて育った。
僕もあの二人のようになることが出来るといい。
そんな願いを込めて、青藍は舞を続けたのだった。



2016.09.15 婚約編 完
〜告白編に続く〜
狡いと解っていながらも、深冬を捕まえてしまう青藍。
そんな青藍に反感を持つ方もいらっしゃるでしょうが、今後彼は痛い目に遭うことが多いので、それで許してあげてください。
次の告白編では橙晴も色々と悩んでいます。
似たもの兄弟。
そして似た者親子です。


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