色彩
■ 32.器用すぎる

『だって本当のことだし。酒宴でも深冬に目を配っていたのを僕は知っている。』
「あはは。そうだったんだ。いいお兄さんじゃないの。」
「そうだな。良かったな、深冬。」
「へぇ。あの加賀美がそんなことをするとはねぇ。」
楽しげな四人から豪紀は気まずげに目をそらす。


『ふふ。深冬だってそれに気が付いていたでしょう?』
問われて深冬は気まずげに豪紀を見る。
彼もまた気まずげに深冬をチラリと見た。
一瞬目があって、互いに気まずげに逸らす。


「・・・確信は、なかったが、よく私を連れ出すのは、八重様と私を離すためなのだろうとは思っていた。」
深冬は小さく言う。


『ふふふ。ほら、加賀美君。そろそろ認めたら?深冬は、君にとって可愛い妹なんでしょ?それを守るために、深冬を朽木家に預けてくれたのでしょう?深冬が攫われたと聞けば、僕と一緒に助けに行ってしまうぐらいなのでしょう?あの時の加賀美君、必死だったもんね。深冬を返せと、相手に言っていたんだよ?』
楽しげに言いながら、青藍は深冬を見た。


「そう、なのか?」
『そうだよ。加賀美君ったら、珍しく怒っていたんだから。いつも感情を表に出さない加賀美君が。あれは少し面白かったなぁ。』
尚も青藍は楽しげだ。
『今日のことだって、加賀美君が知らせてくれたんだよ。加賀美君はいつも、君にとって、一番いい方法を、考えてくれているんだ。』


「・・・解った。解ったから、もう、やめてくれ・・・。お前、本当に黙れ。頼むから、これ以上話すな。」
そんな青藍に、疲れたように豪紀は言った。
『あはは!やっと認めた。全く、君は器用なくせに不器用だよねぇ。』


「いや、青藍が器用すぎるだけともいえるだろ。」
楽しげな青藍に、睦月は呆れたように言う。
『え?そう?』
「まぁ、お前は器用すぎて相手に気付かれないけどな。可哀そうな奴だ。」
睦月は言いながらやれやれと首を振る。


『・・・ん?』
睦月に言われて、青藍は固まる。
「この俺を騙せると思ったか?」
そんな青藍を見て、睦月は勝ち誇ったように言う。
『それは・・・何のこと、かな・・・?』
「それをここで言ってもいいなら言ってやるが?」
睦月はチラリと深冬に視線を向けて青藍に視線を戻す。


『・・・うん。ちょっと、睦月、それはやめて。』
「ははは。俺は最初からこうなると思ったぞ。」
『最初から・・・?』
「あの時、俺とルキアは今後の相談をしていただろうが。」
言われて青藍は目を丸くする。


『・・・えぇ!?えー。何それ。なんで?え?だって、あの時は・・・。あれはそういうことか!!というか、ルキア姉さままで最初から?』
「当たり前だ。俺とルキアはいつ気が付くのかと楽しく見ていたわけだが。」


『・・・・・・うわぁー!!!何それ!だ、駄目だよそんなの。何なの!?睦月は莫迦なの!?予言者とかなの!?ルキア姉さまも何なのさ!?全く知らない顔をしていたじゃないか!!!』
焦ったように青藍は言う。


「はは。青藍、取り乱しているなぁ。」
「まぁ、でも、咲ちゃんよりは自覚が早かったね。」
『・・・お二人とも知っておいでで?』


「あぁ。知った時は驚いたけどな。」
「僕は気付いただけだけど。全く、青藍ったら、手強くて困るよねぇ。僕相手に全く本音を話さないんだから。睦月君の言うとおり、器用すぎるよ。」
二人はそう言って笑う。


『僕、自覚していることは気付かれていないと思っていたのに・・・。』
青藍はそう言って顔を隠す。
「あのなぁ、俺はお前が生まれたときからお前を見ているんだぞ?それに俺は、仕事上、いろんな奴を見てきているんだ。お前のことを読み取るのは朝飯前だっての。咲夜さんの方がよっぽど難解だ。」
睦月が呆れたように言った。


「ははは。俺は言われるまで自覚していることは勿論、その前のことも気付かなかったけどな。」
「それは浮竹さんがこの方面に関して鈍いだけです。」
「あはは。確かに。」
『あーあ。雪乃たちにはそれで通すことが出来たのになぁ。父上と母上、橙晴に茶羅には見抜かれているとは思っていましたけど。僕、そんなに解りやすくはないはずなのに。』
青藍はため息を吐く。

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