色彩
■ 27.女の戦い

青藍たちが浮竹たちの元へ避難している頃。
咲夜は面倒になっていた。
相談は何かと聞けば、やはり深冬の婚約についてで、青藍は深冬に騙されているとか、誑かされているとか、そんな話しかしないのである。
とりあえず頷きながら聞いているものの、いい加減飽きてきた。


「・・・それで、私は思うのですよ。深冬は青藍様には相応しくないのではないかと。青藍様はとてもご立派な方ですわ。それなのに、深冬と婚約などしてしまっては、青藍様に傷がつくのではございませんか?」
そういわれて、咲夜はいい加減、反撃してもいいだろうと、心を決めた。
何かあれば、白哉がすぐに来てくれるのだ。
それに、そばに千本桜も居る。
そう考えて、咲夜は笑みを消したのだった。


「・・・それは、結婚相手のせいで青藍に傷がつくと言っておられるのでしょうか?」
笑みを消した咲夜に、八重はびくりとする。
「え、えぇ。だって、そうでございましょう?朽木家次期当主たる青藍様が、素性の知れない娘と婚約するなど、咲夜様も不本意なのではありませんか?」


「まさか。私はこの婚約を大変うれしく思っておりますよ。娘がもう一人出来るのですから。深冬はとてもいい子ですし。」
「え?」
咲夜の言葉に八重の表情が変わる。


「それに、婚約相手が誰であろうと、そのせいで青藍に傷がつくなどあり得ません。あの子にはそれだけの力量があります。たとえ結婚相手が流魂街の者であろうと、私は反対などしません。あの子を信頼しております故。あの子が選ぶのですから、間違いはないのです。その程度のことで傷がつくような青藍ではございません。」


「でも・・・あの子は白哉様まで誑かしているご様子。それでは咲夜様もご不満でしょう?」
「ふふ。それもございません。白哉様は私に大きな愛をいつもくださいます。確かに深冬を可愛がっては居りますが、だからといって白哉様のお心が私から離れていくなどあり得ません。」
咲夜はそう言って柔らかく微笑む。


「私と白哉様は、心が通じ合ったために夫婦となったのですから。」
微笑みながら幸せそうにそう言った咲夜に、八重は目を丸くした。
どうやら私と白哉の結婚は未だに政略結婚だと認識されているらしい。
咲夜は内心苦笑する。


「・・・では、咲夜様と白哉様のご結婚は政略的なものではないと?」
「えぇ。私は白哉様からの愛にお応えいたしました。それは、私が白哉様を愛しているからでございます。私たちの結婚に、政略的な意図は全くございません。」
咲夜の言葉に八重は言葉を失ったようだった。
それを見て、咲夜はくすりと笑う。


「ですから、私は子どもたちの結婚について、口を出すつもりはありません。相手が誰であろうと、朽木家としての誇りを穢されることなどあり得ないからです。あの子たちにはそれだけの力があります。私は、あの子たちのお蔭でここに居られるようなものですから。」


「それは・・・どういう・・・?」
「一年ほど前、でしょうか。私は謀反の疑いにより、四十六室によって拘束されました。もちろん、私にその意思は全くありませんが。八重様もご存じでしょう?」
「えぇ・・・。」
「あの時、私は勿論のこと、白哉様も一切手出しはしておりません。」
「え・・・?では、青藍様たちが咲夜様のために四十六室を相手取って・・・?」


「はい。あの子たちはそれぞれに自らのやるべきことを考え、そして、私を救う術を見出してくれたのです。だから、私は今、ここに居ることが出来るのですよ。」
咲夜はにっこりと微笑む。


「四十六室を相手取るなど、朽木家といえども、そうできることではありません。相手は尸魂界の法の番人で、掟そのもの。下手をすれば朽木家全てが謀反とみなされたことでしょう。それでも、それを掻い潜って、何とか私を助けてくれたのです。時には体を張って。それだけのことが出来る子たちです。それなのに、どんな相手を選ぶかであの子たちに傷がつくなど、だれが言えましょうか。」


その言葉に八重は少し震えたようだった。
貴族社会だけで生きてきた八重にとって、四十六室を相手取るなど、考えることすらできなかったのである。
それを、相手にして、彼らを黙らせたという事実が、八重には恐ろしかったのだ。

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