色彩
■ 24.朽木家の茶会

茶会当日。
青藍は朝から休む間もなく邸を動き回っていた。
茶を点てるのは白哉と橙晴の役割となったが、それで白哉が動きにくい分、青藍があちらこちらへ動いているのである。
ちなみに咲夜と茶羅は次々とやってくる貴族を、ルキアは死神を相手にしていた。


深冬は始めだけ顔を出して、それからは別室で待機している。
護衛として睦月が傍に控えていた。
影から黒刃も護衛についている。
青藍が客人の前に出る時だけ彼と共に客人の相手をするのである。


茶羅には師走さんが居るし、ルキア姉さまには袖白雪が居る。
鳴神は邸の中を見回ってくれているし、母上には千本桜が付いている。
白刃は斬魄刀たちの間を行き来して連絡係となっている。
その他にも氷輪丸、花天狂骨、双魚理、侘助に持ち主ともども協力してもらっているのだった。


そろそろ加賀美家が来る時刻だ・・・。
青藍は時間を見てため息を吐く。
嫌だなぁ。
母上がノリノリすぎて着物から化粧から気合が入っているのだ。
茶羅と共に楽しげに念入りに確認をしていた。


・・・あれは怖い。
化粧などせずともその美しい顔のお蔭で十分迫力があるというのに。
紅を塗った母上は迫力がありすぎる。
その上、貴族らしく振舞っているのだから、余計だ。
いや、いつもの振る舞いがが貴族としては普通じゃないのだけれども。
その辺は僕も人のことは言えないけれども。


今はにこやかにしているが、あれが無表情になったりしたら、夢に出そうだ・・・。
父上すら、美しいが魔女のようだと、何となく目をそらしていた。
本当に、何かある気がしてならない・・・。
そう思いながら、楽しげな咲夜を見て、青藍と白哉はため息を吐いたのだった。


それでも客人からはそんな母上の姿が大好評なのだ。
まぁそれは、母上が表に姿を見せることがほとんどないからなのだけれど。
そんなことを考えつつ、深冬と共に加賀美家を出迎えるために、青藍は彼女の元へ向かう。


『深冬。』
「青藍?」
青藍が深冬のいる部屋に顔を出すと、深冬は睦月とお菓子をつまんでいた。
『そろそろ加賀美家の方がいらっしゃる。』


「・・・そうか。」
青藍の言葉に、深冬は目を伏せる。
そんな深冬を見て、青藍は彼女の頬に手を添えた。
『大丈夫だ。母上が上手くやってくれる。朽木家の皆が君を守っているから。睦月だって、君の味方だ。他にも十四郎殿や春水殿たちが、何があっても大丈夫なように、手伝ってくれている。加賀美君だって手を貸してくれる。だから、大丈夫だ。』


「・・・あぁ。そうだな。とりあえず私の仕事は、自分の身を守ることだ。」
青藍の言葉に頷いて、深冬はしっかりと青藍の瞳を見返す。
『うん。それでいい。』
それに青藍は微笑んで、深冬の頭を撫でる。
『・・・よし。睦月、君は何があっても深冬を一人にしないように。』
「あぁ。解っている。」


『黒刃。』
呼ばれて黒刃は姿を見せる。
『睦月の言うことをちゃんと聞くこと。それから、深冬を守ってね。』
「うん!」
『よし。では、それまでは隠れていてくれ。・・・じゃあ、行こうか。』


「あら、青藍じゃない。」
深冬の手を引いて廊下を歩いていると、雪乃と秋良が姿を見せる。
『雪乃。秋良様もご一緒でしたか。』
「お久しぶりです。」
秋良は楽しげに微笑む。


『本日は足を運んでいただき、誠にありがとうございます。どうぞ、ごゆるりとお楽しみくださいませ。』
「・・・青藍。そういう挨拶はどうでもいいのよ。今日は八重様がいらっしゃるのでしょう?」
にっこりと微笑む青藍に胡散臭げな顔を向けながら、雪乃は言う。


『あはは。これからお出迎えに行くところだよ。』
「・・・そう。深冬、何かあったら私も協力するわ。もちろんお父様もね。だから、大丈夫よ。」
雪乃はそう言って深冬の頭を撫でる。
「はい。いつもありがとうございます。」
雪乃の言葉に深冬は瞳を柔らかくする。


「構わないわ。・・・それで、青藍?咲夜さん、一体どうしちゃったの?」
雪乃はチラリと遠くにいる咲夜の姿を見ながら言った。
『あはは。気合が入っているのさ。八重殿は美人で迫力があるっていう話を聞いて、迫力負けしたら駄目だ、とかいって、あぁなったよね。』
青藍は苦笑する。


「ほう。確かに迫力がありますね。咲夜様は元がお綺麗ですから。」
秋良は咲夜を見て微笑む。
『あの顔から、微笑みが消えないといいのですが。』
「ふふ。それはそれで、私としては面白いですねぇ。」


『面白がらないでくださいよ・・・。そんなものを見たら、僕は怖くて眠れなくなってしまいます。母上の気合が入りすぎて、僕も父上も、大変なのですから。』
青藍はそう言って肩を竦める。
「それは申し訳ありません。ですが、何かあればお手伝いいたします。何なりとお申し付けください。」
『えぇ。頼りにしておりますよ、秋良様。では、僕らはこれで。』

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