色彩
■ 21.若者は悩めばいい

『でも、僕は、朽木家の次期当主で、霊妃様の愛し子で、この先、きっと、深冬を苦しめる。この重荷を、深冬に分けるのは辛いです。辛い思いをさせることが解っているのに、僕はすでに深冬を縛ってしまった。僕から離れた方が、深冬はきっと幸せです。』
青藍は再び俯く。


「それは深冬が決めることであって、そなたが決めることではない。少なくとも、この婚約を受け入れたのは、深冬の意思だ。それでどうなろうと、それはそなたの責任ではない。深冬が、自分でそう決めたのだ。」
安曇ははっきりとそう言い切る。
その言葉に、青藍は目を丸くして、顔を上げた。


「深冬は、強い子だ。あの子は、自分のことは自分で決める子なのだ。あの瞳で真っ直ぐに相手を見て、自分で見て、決めるのだ。」
青藍を真っ直ぐ見つめて、安曇は静かに言った。


『・・・ふふ。深冬と同じことを言うのですね。』
青藍は泣きそうに笑いながら言う。
『深冬もそんなことを言っていました。やっぱり、安曇様は深冬の父親なのですね。』
「今さら何を言っているのだ・・・。」
情けない顔をしている青藍に、安曇は呆れたように言った。


『あはは。そうですね。深冬は、本当に強いんです。僕は、あの強い瞳が好きです。最初から、あの瞳に惹かれたのです。強くて、凛とした、あの美しい瞳に。』
そういう青藍の瞳を見て、安曇は微笑む。
この若者は、本当に深冬を大切に思っているのだと。


だから、そなたには任せてもいいと、思うのだ・・・。
深冬も自覚はしていないようだが、そなたと共にありたいと思っているのだぞ。
私と出かけるときは、青藍の話ばかりなのだ。
あの瞳を輝かせて、そなたの話をしているのだぞ。


「まぁ、そなたはもう少し自信を持て。そうでなければ、深冬を手に入れることは出来ぬぞ。」
安曇はそう言って青藍の頭を撫でる。
『うわ!?安曇様!?』
目を丸くした青藍をみて、安曇は笑う。
「若者など、悩めばいいのだ。」
『えぇ・・・。そんなぁ・・・。』
意地悪するように言った安曇に、青藍は情けない声を出す。


「一番大切なものが何なのか、それが分かればおのずと答えも見えてくる。それに従えばいい。そなたの立場がそれを難しくさせるだろうが、大きなものを抱えているそなただからこそ、幸せがあってもいいのだ。だから、それくらいのことはしてもいい。大切な者は無茶をしてでも手に入れて、無茶をしてでも守るのだ。それで、いい。だから、それまでは、存分に悩め。」
『・・・はい。』


「だが、気持ちを伝えずに手に入れるのは卑怯者のやることだ。深冬が欲しいのならば、深冬に気持ちを伝えるのだぞ。それだけは約束しろ。」
『ふふ。父上にも言われましたよ、それ。・・・はい。お約束します。いつになるかは、解りませんが。』
青藍はそう言って微笑む。


「それなら良い。まぁ、深冬の答えがどうであろうと、そなたは深冬を放さぬだろうから、それに意味があるのかは解らぬが。」
『ふふふ。そこまで見抜いておられるのですね。本当に、そんな僕に預けていいのですか?』


「よい。深冬が選んだことに、口出しするつもりはない。私は、見守るのが仕事だ。深冬を助けるのは、そなたらに任せる。どうやら、それは私の仕事ではないようだからな。」
『はい。それはお任せを。』
「では、私は部屋に行って眠るとしよう。深冬が帰ってきたら起こしてくれ。」
『えぇ。解りました。』

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