色彩
■ 18.無自覚なふり

「それで、加賀美の妹とお前が婚約することで、お前はどんな得をするんだ?話を聞いた限りではお前がそこまでする必要があるとは思えないんだが。わざわざ朽木家で預からなくても漣家に預けるなりする方法もあるだろ?」
「確かにそうだね。漣家に預ければ、漣家は他の貴族との関わりがほとんどないから、手を出すことは難しくなる。そうしない理由があるはずだよ。」
侑李と京はそう言って青藍に疑いの目を向ける。


『あはは。僕、疑われている?』
「まぁな。まだ何か隠しているのは事実だろ?」
「だって青藍、政略結婚みたいなのは嫌だってずっと言っていたじゃないの。」
『僕に婚約者が居れば、政略結婚を申し込むことすら出来ないでしょ?』
青藍はにっこりという。


「それはつまり・・・。」
「見合い話から逃げたいからってこと?」
『うん。そうだよ。深冬はまだ小さいからすぐに結婚、という話にもならない。だから、僕は婚約という方法を取ったわけだ。これで少なくとも深冬が大きくなるまでは逃げられるからね。』
そういいつつも青藍は内心で苦笑する。


これも本音だけれど、これは本音の一部でしかない。
でも、僕の気持ちを彼らに話すのは、もう少し待ってほしいのだ。
父上と加賀美君に話したのは、僕の本気を示すためだ。
母上や茶羅や橙晴もたぶんルキア姉さまも、僕の気持ちには気が付いているだろう。
それでも何も聞いてこないのは、僕が話さないのを解っているからだ。
いや、まぁ、面白がっていると言った方がいいのかもしれないのだけれど。


「本当にそれだけ?」
キリトは疑わしげに青藍を見る。
『それだけだよ。僕自身にとってはそれがとてもありがたいし、その上深冬を守るという役目も果たすことが出来るからね。』
青藍はそう言って微笑む。


その微笑を見て、五人は思う。
あれだけ深冬を特別扱いしておきながら、青藍にはまだ自覚がないのか、と。
五人からすれば、それだけの理由で青藍が婚約までするとは思えないのだ。
しかし、その微笑で青藍が自分の気持ちを隠していることに気付いていないのだった。
まぁ、それほどこれまでの青藍が無自覚だったということもあるのだが。


「・・・青藍は、本当に青藍だよね。」
「そうだな・・・。俺は吃驚だよ・・・。」
「僕も。ここまでだとは思わなかったよ・・・。」
京、侑李、キリトは呆れたように呟く。
「まぁ、いいと思うわよ。今自覚されても困るもの。」
「確かに。青藍、面倒そうだものね。」
雪乃と蓮はそう言ってため息を吐く。


『え?どうしたの?』
それを見て、青藍は首を傾げる。
無自覚な振りをして。
少しだけ、心を隠して。


「何でもないわよ。とりあえず事情は分かったわ。」
「そうだね。青藍が加賀美と仲が良いこともよく解ったよ。」
「あはは。あの噂、本当になっちゃったみたいだね。」
「だな。まぁ、加賀美の奴、なんか雰囲気変わったけどな。」
「そうみたいだね。玲奈さんは加賀美君を結構評価しているようだし。」
五人は口々に言う。


「女性隊士の間でも、なんでもそつなくやるってそこそこ人気があるのよ?ちょっと近寄りがたいところもあるけれど。」
『僕は相変わらず嫌われているけれどね。』
青藍はそう言って苦笑する。
「それは青藍のせいだわ。貴方がふざけて加賀美君に絡むからいけないの。」
『あはは。・・・まぁ、そういうことで、何かあったら頼むよ。何もないのが一番だけれどね。』

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