色彩
■ 16.婚約の発表

一か月ほど後。
「「「「「えぇー!!??」」」」」
瀞霊廷に、そんな叫び声があちらこちらから上がる。
青藍と深冬の婚約が発表されたのだ。
そして、それからすぐに、六番隊の執務室に駆け込んできた者たちが居た。


「「「「「青藍!?一体、どういうことなの!!!???」」」」」
その面子を見て、青藍は苦笑する。
『あはは・・・。来ると思っていたよ。』
「ちゃんと説明してくれるんだよね?」
「もちろん、説明するよね?」
「俺たちは聞く権利があるよな?」
「当たり前よ。とことん追求してやるわ。」
「僕も詳しく説明して欲しいな。」
キリト、京、侑李、雪乃、蓮の五人に詰め寄られて青藍は苦笑する。


『もちろん、説明するよ?僕は皆が来るのを待っていたのだから。』
「相手は深冬なんだよ!?」
「そうよ!貴方正気なの!?」
『酷いなぁ。僕は正気だよ。それに、父上も、母上も、朽木家の家臣も皆が認めた正当な婚約だ。あ、ちなみに橙晴に茶羅もルキア姉さまも異論はないって。ね、橙晴?』


「そうですね。僕は別に構いませんよ。まぁ、暫くは青藍兄様が幼女趣味だった、とかいう噂も流れるでしょうけどね。」
問われて橙晴は淡々と答える。
『あはは。それは嫌だなぁ。別に、小さな女の子が好きとかじゃあないもの。』
「そうだとしてもこれまでそういう噂がほとんどない兄様ですからね。色々と疑われるのは仕方ないでしょう。あぁ、雪乃との噂はありましたね。」


『それはまぁ、ねぇ?仕方ないよね。雪乃は僕の近くにいることが多いから。良かったね、雪乃。これで僕のせいで絡まれたりしなくなるよ。』
青藍はそう言って笑う。
「・・・そういうことじゃないのよ。その噂も煩わしいものではあったけれど、少しは私の役に立っていたの。」


『え?そうなの?』
青藍は意外そうな顔をする。
「その噂があるから私は今までお見合いしなくても良かったんじゃないの!どうしてくれるのよ!これから何を理由に断ればいいのよ!?」
雪乃はそう言って叫ぶ。


『あはは。それはほら、うちにはもう一人男の子が居るじゃない。そのうち隊長になる予定のお得物件が。ね、橙晴?』
青藍は楽しげに言う。
そんな青藍を、橙晴は睨みつけた。


『まぁ、そう睨まないでよ。雪乃のためなら橙晴もそのくらいやってくれるでしょ?』
青藍はなおも楽しげに言う。
「兄様・・・。」
じろりと青藍を見る橙晴だが、見られた本人は全く意に介さない。


『あ、それとも加賀美君にする?彼は結構モテるらしいよ。参ったよねぇ。加賀美君が酒宴の席で僕の隣に居るのは、僕に姫の相手をさせて自分が楽をするためだっていうのだから。この僕を利用するとは、中々見込みがあると思うよ。』
青藍は言いながら橙晴を横目でチラリとみる。


『雪乃、明日から大変だろうなぁ。お見合い話がわんさか舞い込んでくるのだから。』
「気が重いわ・・・。って、違うのよ!私の話をしてどうするの!今は青藍の話の方が先よ!」
『あれ、気が付いた?』


「馬鹿にしないで!貴方って人は本当に腹立たしいわね!いいからさっさと場所を変えるわよ。」
「そうそう。俺たちはお前の話を聞きに来たんだ。」
「全く、青藍は、本当に隠し事が好きだよね。」
そういいながら、侑李と京が青藍を左右から捕まえて立たせる。


『あはは。吃驚した?まぁ、黙っていればこうなると解っていたから、黙っていたのだけれど。皆忙しいからわざわざ集めるの面倒だったんだよね。』
「青藍。そんな理由で、僕らを吃驚させないでよ・・・。」
青藍の言葉に蓮が呆れたように言う。


『ふふふ。まぁ、ちゃんと、説明するし、逃げないから、僕の腕、放してくれるとありがたいのだけれど。今ね、僕は身の危険を感じているよ。見てよ、蓮。雪乃が拳を振り上げているよ・・・。』
言いながら青藍の表情が青ざめていく。


「それは無理。」
「無理だね。」
「青藍のせいだもの。」
「あはは。そうだね。」
「・・・私だって、やめる気はないわよ!」
そう言って雪乃は拳を振り上げた。


ゴツン。
そんな重い音がして、青藍の頭に衝撃が走る。
「・・・兄様、本当に学習しませんよねぇ。」
それを冷めた目で見て、橙晴はざまあみろというように言った。
『・・・痛いよ、雪乃。最近、暴力的すぎない・・・?』
青藍は涙目で訴える。


「言葉でいくら言っても解らないのだから仕方ないと思うわ。」
「そうだね。何なら僕らも一発ずつ殴ってあげるけど。」
蓮は楽しげにそんなことを言う。
「それはいいっすね。」
「そうでもしないと学習しないみたいだし。」
「わざとやっているのかと思うくらいだものね。」


『いや、あの、本当に、ごめんなさい。謝るし、ちゃんと説明もするから、皆、その手を降ろしてくれないかな・・・。』
青藍は涙目で言う。
「・・・はぁ。まぁいいか。ここで青藍をぼこぼこにするのは簡単だけど、僕らはそう暇じゃないからね。とりあえず、話を聞いてから考えるよ。」
それを見て蓮が呆れたように言う。


「そうですね。青藍、行くよ。」
「ほらほら、さっさと歩け。俺たちは暇じゃない。」
「そうそう。僕は午後から任務があるの。」
「私も暇じゃないわ。そうね・・・青藍、この前の場所、使ってもいいわよね?」
『あはは。うん。もちろん。』
「じゃ、行きましょう。」
そう言った雪乃を先頭に、青藍は連行されていったのだった。

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